まほカン

jukaito

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第126話 体験! 少女は魔法少女への道を歩む! (Cパート)

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 翌日、かなみは疲れが抜けきらないまま、登校している。
「しつこい怪人達だったわ……」
「それに魔法弾ばかりで全然倒せなかったしね」
「それを言わないで……」
 昨日のことを思い出すと気が滅入る。
 結局、十人以上怪人倒すというノルマを達成することはできなかった。
 怪人達は思いの外しぶとくて頑丈で、おまけに逃げるのが速かった。
 魔法弾で簡単に倒れないし、かなみが自分たちよりも強いと判断するやいなや、逃げの一手を打つ怪人が多かった。
 追撃したのだけど、こちらは建物を壊してしまう神殺砲の使用を禁じられていて、魔法弾を目一杯撃ち込んでいった。
 それで倒せたのはほんの五体程度。
「ノルマを倒せなかったので、今日も社長からの仕事をやってもらうよ」
「あ~」
 社長からの仕事。
 それは間違いなく難易度の高い仕事で、しかも、ペナルティゆえにボーナスはない。
 それを今日もまたうけたまわるとなると、中々憂鬱な気分だった。
「梢恵はどうだったのかしら……?」
「ずっと動画を見てたようだけど……」
「早く梢恵も変身できるようになって、一緒に戦えるといいんだけど……」
「……それは、厳しいかもしれないね」
 マニィが辛辣なことを言う。
 どうして、そんなことを言われるのか、かなみにはわからなかった。
 梢恵には魔法の才能がない。
 みあはそう言っていたけど、かなみにはどうしてもそう思えなかった。
 だって、魔法少女になった自分の姿を見て、あんなにも嬉しそうな顔をしていたのだから。



「おはようございます」
 かなみはいつものようにオフィスへ入る。
『愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!』
 動画の音声が聞こえてくる。
 自分の名乗り口上を聞くというのは、こそばゆい気持ちになる。。
「梢恵、もう来てたの」
 梢恵がデスクの前に座っていて、動画が見ていた。
「あ、うん、動画いっぱいあるから……」
「ずっと、私達の動画みてたの?」
「みろって言われたし、それに結構面白くて……」
「面白いの?」
 かなみからすると、無我夢中で戦っているだけなので、面白いのかどうかわからない。
 それに、あんまり自分が映っている動画というのはみていて気持ちのいいものではないので、今の梢恵みたいにじっくりみようとしたことはなかった。
「あ、これ、昨日の戦いじゃない」
「え、そうなの!?」
「へえ、こんな風にとれるのね」
 昨日戦ったばかりなので、あの光景は鮮明に覚えている。
 その記憶と動画のように自分が映っている戦いを比べてみるとなんだか新鮮に感じられる。
「うーん、このタイミングで魔法弾をもっと撃てたら、ノルマ達成できてたかも……」
 かなみが言うと、梢恵のかおをじっくり見る。
「な、何?」
「なんていうか、今かなみ、すごくプロっぽかった」
「ぷ、プロ……?」
 かなみにはそんな自覚はなかった。
「私、そんなんじゃないんだけど……」
「でも、かなみさん、いっぱい怪人を倒してますよね」
 紫織が不意に発言する。
「う、うん、それはまあ……」
 昨日は怪人を十体以上倒すノルマを達成できなかった負い目はあった。
 しかし、魔法少女になってから多くの怪人を倒してきたのは確かだった。
「でも、そもそもプロって何のよ?」
「あ、うーん、そうね……」
 梢恵はよく考えてなかったらしく、今からプロについて考える。
「怪人退治?」
 みるからに、思いついた単語を言った感じだった。
「……嬉しくない」
 かなみははにかんだ笑みを浮かべて答える。
「でも、実際さあ、かなみはたくさん怪人倒してきたわね。プロの魔法少女って言っていいんじゃないの?」
 みあがぶっきらぼうに言う。
「プロの魔法少女……そう言われてもね……」
 ピンとこなかった。
「ま、プロっていわれてもよくわからないけど……」
「だいたいプロってなんなの?」
「うーん、……なんかすごい人」
 みあはいい加減な事を言う。
「みあちゃん、いい加減……でも、私もプロって言われると、なんかそんな気がする……」
「あんた、いっぱいボーナスもらってるんじゃない」
「そ、それはそうだけど……あ、でも、結構ピンハネされてるのよ」
「ピンハネ?」
 事情を知らない梢恵は首を傾げる。
「仕事で怪人を倒しても、ボーナスが貰えないの」
「ええ、それってひどい!」
「うんうん、ひどいわよね! わかってくれる、梢恵!」
「うんうん、わかる!」
 かなみは理解者を得て喜ぶ。
「何やってんだか……大体ピンハネされてるのは、あんたが魔法で壊したモノの賠償にかかってるからでしょ」
 みあが指摘する。
「あ、そっか。動画で、カナミは結構壊してたから、そのせいなのね」
 梢恵は納得する。
「それは最初の頃の方の話よ! 最近は気を遣って壊さないようにしてるんだから! 昨日だって神殺砲使わずに頑張ったんだから!!」
 かなみは必死に弁明する。
「……魔法少女も大変でしょ?」
 みあは梢恵に問う。
「あはは、そうだね……」
 梢恵は苦笑して同意する。
 それからしばらく談笑して、梢恵は昨日と同じように魔法少女のこれまでの戦いを動画で観て、かなみは仕事に出る。
 仕事は昨日と同じように怪人の拠点へ赴いて、怪人の集団を倒すことだった。
 今回も怪人を十人以上倒すことで、神殺砲の使用は禁止。
 例によって苦戦して、結局五、六しか倒せなかった。
 そういうわけで、次の日も同じようなノルマを課せられて、怪人の拠点に行っては戦う。梢恵はその間、ずっと動画を観ていた。
 そんな日々が五日くらい続いた。
「ただいま……」
 かなみは夕方一仕事を終えて、オフィスへ戻ってくる。
 この日は学校が休日のため、朝一で怪人の拠点へ出かけて行って、戦いを終えて、報告に出て戻ってくることが出来たのだった。
「おかえり」
 梢恵が、かなみが戻ってきたことに気づいてそう言ってくれる。
「今日も大変そうだったね」
「うん、大変だった。……って、あれ?」
 かなみが、梢恵が観ている画面を覗くと、そこにはさっきの戦いが動画になって映っていた。
「今日はリアルタイム配信だったよ」
 隣にいたラビィが言う。
「それから繰り返し観てるんだよ。カナミの戦いっていつも見応えあるから」
「そ、そう……」
 そう褒められてもこそばゆい。
「うん、動画の評判もすごくいいみたいだし」
「評判いいの?」
 かなみはマニィに訊く。
「まあそれなりに……」
「それだったら出演料ギャラを弾んでくれてもいいのに……」
「かなみ、そういうところシビアになったよね。あ、シビアっていうよりガメついっていうか……」
 梢恵は関心を寄せる。
「まあ、あんな借金してたら、ガメつくもシビアにもなるわよ」
「あんな、借金……?」
 みあの発言に、梢恵はキョトンとする。
「あ、そ、それは!」
「かなみ、借金してたの?」
「そ、それは……うん、まあ……」
「かなみ、借金のことは話してなかったの?」
 みあは呆れたように言う。
「う、うん……タイミングが無くて……」
「借金って、どういうことなの」
「あ、その、借金っていうのは……」
 かなみは何から話していいか、困惑する。
「かなみは借金してるのよ」
 そんなかなみに代わって、みあが代弁する。
「借金!?」
「違う! 違うのよ、私が借金したわけじゃなくて、父さんがしたのよ!」
「あぁ、そういうことね」
 梢恵は納得する。
「かなみもお父さんで苦労してるんだね」
「う、うん、まあね……」
「かなみも?」
 みあはその一言に引っかかりを覚える。
「あ、う、うん……」
「まさか、梢恵も!? 借金してるの!?」
「え、えぇ……」
 かなみの食いつき具合に、梢恵は退く。
「はいはい、借金仲間を見つけたからってはしゃがないの」
 みあが、かなみを制する。
「私は別にはしゃいでたわけじゃ……」
「弁解はいいから。それで、あんたはしてるの?」
 かなみに代わって、みあが問う。
「え、してるって?」
「借金」
「あぁ、借金ね。私はしてないけど、お父さんが……」
「えぇ、お父さん!?」
「うん、お父さんが借金してたの。それがお母さんにバレて……」
「「あぁ……」」
 かなみとみあはお互い顔を見合わせる。
「思ったより重たい話だった……」
「知らなかった……私、梢恵のこと全然知らなかった……」
 かなみはショックを受ける。
「あ、ううん、気にしないで。私も知ったのは、転校した後だから……」
「そう……」
「ふうん、あんたら、似た者同士なのね」
 みあが総括するものの、かなみと梢恵はお互いに「そう?」って首を傾げる。

バタン!

 突然、とんでもない扉の開閉音がする。
「わあ、何!?」
 これに慣れてない梢恵は大いに驚く。
「あ~慣れてないと驚くわよね」
「梢恵、いつものことだから大丈夫よ」
「いつものこと?」
 梢恵は音のした方の入口を見る。
「みんな、おはよう!」
 あるみだった。
「社長って、いつもああなの?」
「いつもああなの」
 おどけた梢恵に、かなみは苦笑して答える。
「かなみちゃん、調子はどう?」
「え、うーん、イマイチかもです」
「それじゃ、これから絶好調になりなさい。仕事よ」
 あるみはそう言って、封筒を渡す。
「今日もですか……」
「ノルマを達成するまではね」
 あるみならそういうだろうとわかっていたことだけど、憂鬱な気分になった。
「社長、もっと簡単なノルマにしてくれませんか?」
「それだったら、ペナルティにならないでしょ。文句言ってると倍にするわよ」
「勘弁してください」
 怪人を五人くらい倒すのが精一杯なのに、昨日までの倍の二十人をノルマにされたら何年かかることになるだろうか。その間、ずっとタダ働きになるなんて考えるだけで恐ろしい。
「そのままでお願いします」
「結構。それじゃ今日は梢恵ちゃんも連れていきなさい」
「え、梢恵も!?」
 かなみは驚き、梢恵はキョトンとする。
「そのために、動画見せていたのよ」
「ま、待ってください。梢恵はまだ変身できないんですよ、まだ早いですよ!」
「紫織ちゃんの時もそうだったじゃない」
「そう、でしたね……」
 紫織を引き合いにだされてたじろぐ。
「あの時は、大変だったんですよ……紫織ちゃんが変身できて助かりましたけど……」
「じゃあ、今回も梢恵ちゃんに変身して助けてもらいなさい」
「そんな無茶な……梢恵だって、変身できるようになるとは限らないですし……ねえ、梢恵?」
「え、えぇ……そうね」
「それじゃ、試してみなさい」
 あるみは梢恵へコインを投げ渡す。
「おっとっと!?」
 梢恵はコインを落としかけつつも、なんとかキャッチする。
「ま、マジカル・ワーク」
 梢恵は、かなみ達の真似をして変身の合言葉を唱えて、コインを真上を放り投げる。」

カランカラン

 しかし、何も起きることなく、放り投げたコインは床に落ちて転がっていく。
「………………」
 気まずい沈黙が流れる。
「き、気にしないで、最初のうちはうまくいかないものだから」
 かなみが慌ててフォローを入れる。
「そ、そうかな……?」
 梢恵は上手くいかなくて、弱気になっている。
「魔法はイメージが大事よ。自分がどんな魔法少女になって、どんな魔法が使えるようになるか、もっとはっきりくっきりイメージできるようにならないと変身はできないわ」
 あるみは梢恵へ助言する。
「そういうわけで、間近でかなみちゃんの戦いをみれば、イメージできるようになるんじゃないかしら」
「そ、そうですか……そういうことなら……」
 梢恵は、かなみの方へ向く。
「かなみ……連れてってくれる?」
「梢恵……」
 かなみは、梢恵の意外な提案に驚くものの、その意見を尊重したい
「わかったわ。でも、すごく危ないから気をつけてね」
「え、すごく危ない……?」
 梢恵は不安げな顔を浮かべる。



「かなみって、いつもこうやって移動してるの?」
 電車に乗って、バスへ乗り継いで移動しているところに、梢恵は訊く。
「うん、いつもこんな感じよ」
「大変だね」
「そう言ってくれるとありがたいわ。部長なんか「ご苦労様」としか言わないのよ!」
「それは、苦労してるのね……」
「でも、翠華さんは優しくてアメとかくれたりするのよ」
「翠華さん……素敵なお姉さんって感じだったね」
「そう、そうなのよ。翠華さん、素敵な先輩なのよ」
 本人が聞いていたら泣いて喜ぶだろうね、と、マニィはぼやいたような気がする。
「でも、みあちゃんの方が先輩って意外」
「うん、みあちゃんってすごくしっかりしてるから頼りになるのよ」
「へえ……頼りになる、ねえ……」
 梢恵は、「本当にそう?」と半信半疑のようだった。かなみが疑いなくそう言うものだから、信じる気になってきた状態だった。
「でも、やっぱり、かなみが先輩っていうのも変な感じ」
 梢恵とは同い年で同級生のはずだけど、会社では、かなみの方が先に入ったからかなみが先輩ということになる。
「うーん、確かに梢恵から先輩って呼ばれても変だしね」
「かなみ先輩!」
「やっぱり変だよ!」
 かなみは笑って言う。
「梢恵から先輩って言われると変な感じするけど、紫織ちゃんから言われてみたいわね」
「紫織ちゃんって、あの大人しそうなだっけ?」
「そう? 真面目でいいなのよ」
「あの娘が、かなみの後輩で、私の先輩になるわけか」
「あ、そうなるわね」
「あの娘も変身できるようになってるんだね……」
「うん、最初の方はできなかったみたいだけど」
「今の私みたいに……」
 梢恵はそれが信じられないかのように呟く。
「梢恵だって、すぐに変身できるようになるわよ!」
 かなみは元気づける。
「私、できるようになるかな……?」
 それでも、梢恵の不安は拭えなかった。
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