まほカン

jukaito

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第126話 体験! 少女は魔法少女への道を歩む! (Dパート)

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 そうして、バスで二人が向かった先は廃墟になった病院だった。
「うわあ、いかにも出そうな雰囲気……」
 梢恵は中に入って、思わず呟く。
「で、出るって何が!?」
 かなみは身体をビクッとさせて、不安げに訊く。
「何が? 怪人ってこういうところに出るんじゃないかなって、怪人が出るからここに来たんでしょ?」
「え、ああ! そうね! そうだったわね!! 怪人が根城にしてるからここに来たのよね!!」
 かなみはごまかすように言う。
「かなみ……もしかして、まだ……」
「え、そんなことないわよ! おばけなんて出るわけ無いわよね!? ささ、行きましょ!!」
 かなみは張り切って奥へ進む。
「やっぱり、まだおばけが苦手なのね」
 梢恵はさすがに付き合いが長いせいで、かなみが苦手なものを知っているようだった。
「それで、かなみ、どうなの?」
 ある程度、奥へ進んだところで、梢恵は訊く。
「どうって?」
「怪人に決まってるじゃない。 気配とかわからないの?」
「そ、それは……」
「かなみはそういう探知は苦手だからね。わかってないと思うよ」
「マニィ!」
 かなみは余計なことを言うマニィをカバンからはたき落とそうかと思った。
「そうなんだ、かなみにも苦手なことあるんだ……」
「う、うん、まあね……そこは、みあちゃんや翠華さんに頼ってることが多いのよ」
 かなみは恥ずかしそうに告白する。
 梢恵にいいところを見せたいと思っていたのに、出鼻をくじかれた気分だからだ。
「そうだったんだ……」
「うーん、そうなのよ。だから、あんまり私から離れないでね。いつどこから怪人が出てくるかわからないから……頼りなくてごめんね……」
「ううん、そんなことないよ。かなみを頼りにするってなんだか変な気分だけど、動画みたいにかっこよく戦うカナミだったらすごく頼りになるからね」
「あはは、私そんなにかっこよく戦ってた?」
 かなみは照れながら訊く。
「うん、昔よく見てたアニメの魔法少女みたいだった。ううん、それよりもずっとかっこよかった」
「……そ、そうかしら……」
「だから、今日は怖いけど、生でかなみが戦うところ観られるのが楽しみなんだ」
「あんまり、そんなにいいものじゃないと思うんだけどね」
 かなみは照れ隠しに言う。
「それに、いつも必死なだけだし……借金、返すために……」
「あぁ……」
 梢恵は納得しつつ苦笑いする。
「でも、それでも……たとえ借金を返すための戦いでも、かなみはかっこいい魔法少女だよ」
「あ、ありがとう、梢恵」
 かなみは照れる。
「梢恵もきっとかっこいい魔法少女になれるわよ」
「うん、なれるといいけど……」
 かなみと梢恵は廊下を進んでいく。
 相変わらず怪人の気配は感じられない。
「ねえ、本当に怪人がいるの?」
 梢恵はあまりにも怪人が出ないものだから、だんだん怪人の存在を疑わしく思えてきた。
「情報だとここで間違いないんだけどね」
 マニィがカバンから声を出す。
「その情報が間違いなんじゃないの?」
 梢恵が疑問を口にする。
 声色に、どこかしら、そうだったらいいのにな、という希望が混じっている。
「間違いないと思うよ、絵里奈からの情報だからね」
「絵里奈?」
「情報をくれる人よ。そのうち会うと思うけど」
「そのうちね」
 なんだかピンとこない、と梢恵は言いたげだった。
「あ!」
 かなみは廊下の奥を見やる。
「どうしたの?」
「怪人が!」
「いたの!?」
 梢恵は驚いて、かなみが見た廊下の奥を見る。
「幽霊とかじゃないの?」
 梢恵がそう言うと、かなみはビクッと震える。
「じょ、冗談言わないでよ」
「私からしてみれば、怪人の方が幽霊より冗談に聞こえるけど」
「そ、そんなこと……梢恵、下がって!」
 かなみは会話の途中で、唐突に叫んで、梢恵の足を止める。
 目の前に針が飛んでくる。
 かなみはコインを飛ばす。
「マジカルワーク! 愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミ参上!!」
 即座に変身して、針を魔法弾で撃ち落とす。
「な、何!?」
「怪人よ! それも一人や二人じゃないわ!!」
 カナミがそう言うと、梢恵はすくみ上がる。
 すると廊下の奥から鉄の棒に手足が生えた細長い怪人の集団がワラワラとやってくる。
「魔法少女だ!」
「ついにここまでやってきたか!!」
「俺達はやられねえぞ!!」
「返り討ちだ!!」
 鉄の棒の怪人は一斉にカナミへ襲いかかる。
「こんなの!!」
 カナミは魔法弾を一斉発射する。

ババババァン!!

 棒の怪人が魔法弾を受けてたじろぐ。
 しかし、鉄のような見た目らしく頑丈らしい。一人も倒れるどころか怯むことなく、こちらを睨んでいる。
「くそ! 手強いぞ!!」
「構うことはねえ!!」
「やってやろうじゃねえか!!」
 懲りずに突撃してくる。

ババババァン!!

 再び鉄の棒の怪人達は受けてたじろぐ。
「まったくバカの一つ覚えみたいに!」
 カナミは文句を言う。
「だったら!」
 鉄の棒の怪人達は長い針を手に持つ。
「そりゃそりゃそりゃそりゃ!!」
 怪人達は一斉に長い針をどんどん投げ込んでいく。
 数十もの針が飛んでくる。
 これが当たったらまずい、と、カナミのカンが告げていた。
「梢恵、伏せて!!」
「えぇ!?」
 梢恵はカナミの警告を聞くやいなや、反射的に床に伏せる。
 投げ込まれた針は壁に刺さっていく。
「ひぃぃぃッ!」
 梢恵はその壁に刺さった針をみて、悲鳴を上げて、縮こまる。
「危ないじゃないの!!」
 カナミは魔法弾を撃ちつくす。
 鉄の棒の怪人達が怯んでいる隙に、梢恵の手を引く。
「梢恵、こっちよ! ついてきて!」
「え、えぇッ!!」
 梢恵は言われるまま、カナミと一緒に走る。
「待ちやがれ!」
「逃げられると思うな!」
「お前達はもう包囲されている!!」
 怪人達が口々に叫んでいる。
「あぁ!」
 カナミが向かう先にワラワラと怪人がやってくる。
 ガラスのビンのような円柱の体型をした怪人だった。
「俺達ビーカー団から逃げられるとおうもうなよ! それ、一斉発射!!」
 ビーカー達は、身体を振って、頭から液体が飛び出してくる。
「わあ!?」
 カナミはいきなり液体を浴びせられて、悲鳴を上げる。
 身体は濡れたものの、無味無臭だったので、濡れた不快感だけで済んだ。
「あ、れ……?」
 途端に視界が歪む。
 それに身体が急に重たく感じるようになる。
「ガハハハ、ビーカー団ご自慢の睡眠薬の威力はどうだ!?」
「睡眠薬……? それで眠たく……」
 瞼が重たくなる。
 油断しているとこのまま意識が落ちて眠りについてしまいそうだ。
「それ! もう一服してみるか!?」
 ビーカー達は再び頭を振って、液体を飛ばしてくる。
 あの液体をこれ以上浴びると、本当に眠ってしまうかもしれない。
「しないわよ!」
 カナミは気合の一声を上げて、魔法弾を液体にぶつける。

バァァァァン!!

 魔法弾の爆風によって、液体は四散する。
「ぬうッ!?」
「そう、簡単に、好き、にさせ、ない、わよ!」
 睡眠薬が効いてきたのか、カナミは身体と言動をフラつかせる。
「ハハハハハ、よくやったビーカー団!」
 鉄の棒の怪人達が追いついてくる。
「あとは俺達、ハリンジュ団が仕留めてやるぜ!!」
 ハリンジュが鉄の棒を投げ込んでくる。
「危ない!!」
 梢恵の方にも飛んできたのが見えた。
 しかし、半覚醒の今の状態だと魔法弾で撃ち落とすよりも身体を張ることをカナミは選んだ。
「いたたたッ!?」
 頭、手、腹、足に鉄の棒が当たる。
「カナミ、大丈夫?」
「大丈夫! それよりも早く逃げて!」
「ダメ! 囲まれてる!!」
 梢恵が言うように、ビーカー団とハリンジュ団に囲まれて、逃げる隙間が無い。しかも、カナミと梢恵は廊下の壁を背に追い詰められている。
「こんなにたくさんの怪人がいたのは初めてね」
「ノルマが達成できそうじゃないか」
 マニィが言う事に、何を呑気に、と文句を言いたい気持ちであった。
 とはいえ、言ったところでどうにもならないので、確かにこれだけ怪人がいたのならそれだけたくさん倒せるチャンスがあるということだと前向きに考えることにした。
「ジャンバリック・ファミリア!!」
 カナミはステッキの鈴を飛ばして、魔法弾を撃ち放つ。

バァン! バァン! バァン! バァン! バァン!

 魔法弾の凄まじい雨あられが巻き起こる。
「ど、どうよ……」
 カナミはステッキを支えにして、ふらつく身体をなんとか立たせる。
「やるじゃねえか、よくも俺の子分をやってくれたな!」
 爆煙から銀光りする怪人が
「あんたは……!」
「俺はジュメッサー! ここの親分だぜ!!」
 ジュメッサーは銀色の身体を自慢げに、コツンコツンと叩いて名乗りを上げる。
 お前の魔法弾なんて通じないぞ、と挑発しているように見える。
「そう! だったら、あんたを倒せばいいわけね!」
 カナミはジュメッサーに向けて、魔法弾を撃つ。
「フン!」
 ジュメッサーは自分へ向かってくる魔法弾へ腕を振り下ろす。

シュゥッ!!

 ジュメッサーが腕を振るったことで、魔法弾が真っ二つに切り裂かれる。
「俺の腕の切れ味は天下一品だぜ! お前もぶった斬ってやるぜ!」
 ジュメッサーは突撃してくる。
 そして、腕が届くところまでの間合いに入るやいなや、腕を振り下ろす。
「安心しろよ! 斬られても尖すぎて痛みを感じねえからよ!!」

キィィィィィン!!

 甲高い金属音が鳴り響く。
「ぬぅッ!?」
 カナミはステッキの刃を引き抜いて、ジュメッサーの腕の一撃を防いだのであった。
 ジュメッサーはカナミを斬れるものと思っていただけに驚く。
「簡単に斬れないってわけか!」
 ジュメッサーは距離を取る。
「しからば! ビーカー!! ハリンジュ!!」
「「「「おう!!」」」」
 呼びかけられたビーカーとハリンジュの集団は一斉に仕掛けてくる。
 鉄の棒と睡眠薬の液体が一斉に降り掛かってくる。
「ええい、こうなったら!!」
 カナミは壁に向かって魔法弾を撃って、空いた穴に向かって逃げ出す。
「建造物損壊」
 マニィが呟く。
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
 カナミは梢恵を抱えて、その病室の隅へ走る。
「梢恵はここにいて!」
「う、うん!」
 短いやり取りをして、カナミは敵の方を向く。
「待ちやがれ!!」
 ジュメッサー達がワラワラとやってくる。
「神殺砲!!」
 カナミは即座にステッキを砲身へと変化させて、砲弾を放つ。
「うおおおおおおおッ!!」
 ジュメッサーの裂帛の気合を持って、砲弾に向かって腕を一閃する。

スパァァァァァァァン!!

 砲弾が真っ二つにしてみせる。
「ハハハハ、どうだ!?」
 ジュメッサーは得意顔になる。
 必殺技を破られて、カナミはさぞ悔しがっているだろうとその顔を見てやろうと、ジュメッサーの顔を上げる。
「――ッ!?」
 しかし、ジュメッサーは絶句する。
 二発目の砲弾が既に撃ち放たれていたからだ。
 ジュメッサーは一発目を斬るために全力を注いだため、二発目を防ぐ力は残っていなかった。

バァァァァァァァァン!!

「グギャアアアアアッ!?」
 ジュメッサーは断末魔を上げて、砲弾に飲み込まれてしまう。
 ちなみに、ジュメッサーとともにカナミを追いかけていたビーカー団とハリンジュ団は一発目の斬られた砲弾の流れ弾のようなもので、吹っ飛ぶ。
「か、勝った……」
 カナミはフラつきながらも勝利を確信する。
「か、かなみ、勝ったの……?」
 梢恵は不安に思いながら、カナミに訊く。
「ええ、もう大丈夫、よ……」
 梢恵はそう言われて周囲を伺い、あれだけ怪人達が跡形もなく消えているのを確認する。
 カナミは変身が解ける。
 本当はまだ睡眠薬のせいか、眠気で押し寄せてきて今にも眠ってしまいそうだけど、まだ仕事が終わっていないので眠るわけにはいかなかった。



「――ハァ!?」
 カナミは起き上がる。
 オフィスへ帰りのバスの中で眠ってしまったみたいだ。
 ビーカー団に浴びせられた睡眠薬の液体が随分効いたようだった。
「私、寝てた」
「よく寝てたよ」
 そう言われるとバツが悪い気がする。
 怪人の集団と戦って、もう廃病院に怪人がいないとマニィが判断を下して、バスに乗って撤収していたところだった。それで緊張が解けたようだった。
「ごめん、梢恵」
「どうして謝るの?」
「私が守るって言ったのに、危ない目に合わせて」
「ああ、それ……」
 かなみが何を言いたいのか、梢恵は理解する。
「かなみが謝ること無いじゃない。ちゃんと守ってくれたし」
「ちゃんと……? 私、ちゃんと守れてた?」
「うん、どこにもケガしてないし、大丈夫だったよ……あ、ちょっと膝をすりむいてた、アハハ」
 梢恵は笑いながら言う。
「え、ケガしてたの!? 大丈夫!?」
 かなみは本気になって、梢恵の膝を凝視する。
「大丈夫! 大丈夫だって! ……でも」
「でも?」
 梢恵は徐ろに言い継ぐ。
「私、向いてないんじゃないかって」
「えぇ、どうして!?」
「私はカナミみたいに戦えないって、実際に見てみてわかったから」
「そんな……梢恵だったら、すぐに戦えるようになるって……紫織ちゃんだって、そう言ってたじゃない」
 かなみは食い入るように説得する。
「誘ってくれてありがとう……でも、今日私何も出来なかったから……」
「そんな……」
「オフィスはいつでも開けておくから、いつでも来ていいからね」
 マニィが言う。
「ありがとう。私、カナミみたいになれないと思うけど、変身くらいはできるように頑張ってみる」
「梢恵……」
 ちょうどバスが停車場に止まる。
 二人は揃ってバスを降りる。
「じゃあ、私、今日これで帰るね」
「うん……」
 かなみは残念そうに言う。
 背中を見せて去る梢恵に、かなみは寂しさを覚えた。
「梢恵……いつでも来ていいからね……」
 かなみが言った言葉が梢恵に届いたかどうかまではわからない。
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