[レディース軍団・鬼女]三軍・高橋純一

kazu106

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第四章:自分にだって意地がある

ぶつかり合い

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*** 2月の中ころ ***

次の集会、全体挨拶が始まる前のこと。
直美を除いた全員、既に特攻服で集合している。純一はいつものとおり、隅に立っている。
全体を見渡してながめていたとき、他のだれよりもいち早く、異変に気付いていた。
---やはり...。
壇上に座る副総長・沙紀と、最前列で立つ紗耶香が、既にバチバチと睨み合っている。
紗耶香が仕掛けはじめたものであることは、間違いない。その迫力が、いつもといざこざのときと、全然異なる。
沙紀が、睨み返しながら椅子から立ち上がり、一歩一歩とじわじわ、紗耶香に近づいている。
紗耶香も少しづつ、歩み寄っている。
息づかいが、ここまで聞こえてくる。周囲の女子たちも、だんだんその雰囲気に、気が付き始めた。
睨み合い、目を決して話さない、二人。
だれもなにもしゃべらず、シーンとする中、睨み合いがヒートアップしてくる。言葉なくとも、殺気が十分過ぎるほど伝わっている。
最後に入ってきた総長・直美、入って来るや、その雰囲気で状況を察知し、黙って二人を見ている。
紗耶香が、低く太い声を出す。
「受けんのか?」
応える沙紀
「あぁ、殺してやるよ、おらっ!」
直美は無言で頷く。ついに、紗耶香が覚悟を決めた最後の闘いがはじまる。

ガード下に移動するふたり。だれもなにもしゃべらない。
ふと、遠くの純一の方に目をやる紗耶香に気付いた純一は、無言で、目で伝えたいことを伝える。
紗耶香も目で頷いている。
「ちゃんと見てろよ、純一!」
そう聞こえた気がした。

いよいよ準備は整った。
正面から睨み合う二人、鬼女の女子全員が囲んで、二人を見守る。
突っかかる紗耶香を、先が真正面から受けている。力と力の取っ組み合いとなっている。
紗耶香のパワーがやや上回ったか、拳を振りながら押し気味で進み始めた。
それを、気合いと蹴りで、沙紀は応戦。それ以上はまったく引かない。
お互いに、組み合っては跳ね返すを、何度となく繰り返す大攻防となった。
周囲の女子たちも息をのんでいる。そうそうは見られない、強い女同士の、意地と意地だけのぶつかり合い。ふたりとも、体力がかなり消耗していることが、目に取れる。
現状打破のためか、沙紀が勢いをつけて突っ込んできた。
そこを紗耶香は、狙いすましたようにすっと交わし、右の裏拳を沙紀のこめかみにぶち込んだ。
かなり強烈な決まり方に、全体がおぉっと声が広がる。
沙紀の癖は、攻め始めたときに、右のガードがときおり甘くなってしまうこと。これを紗耶香は予め読んでおり、そこを狙いすます訓練をつづけてそうなことを、純一は事前の練習での動きから察していた。
ぐらついた沙紀に、紗耶香が連打の猛ラッシュ。最後の力を振り絞っているに違いない。沙紀は防戦一方の展開。このまま倒せるか?
そこにまさかの、沙紀が捨て身の、最後の左ストレートを放つ。これが不運にも、カウンターで紗耶香にまともに当たってしまった。
止まった紗耶香に向けて、こんどは大逆転で沙紀のラッシュか...。
いや、もう沙紀にその力は残っておらず、膝をつきそうになっている。紗耶香も最後にもらった一発が効いた上、既にすべてを出し切っていた状態。ふたりとも、ふらふらになりながら膝をつき、その場で立てなくなった。
直美が近寄る。
「終わりだな。ふたりとも、よくやったよ。」
直美がふたりの肩を叩いて、讃えている。これで勝負はおしまい。戦いは再び勝敗つかずに終わった。
結果として、紗耶香の最後の副総長獲りは、成し得ぬまま終わってしまった。

力尽きてぼろぼろのふたりは、涙で抱き合って称え合った。女子たちからの大拍手につつまれる。感動で泣いている女子もいた。
ふたりは別れ、それぞれの陣に去っていく。
沙紀には、直美が肩を貸して、歩いている。
紗耶香にも、ユイナや樹莉が寄って来て肩を貸そうとした。しかし紗耶香は手で振り払い、そのまま自力で歩きつづけている。
去り際に再び、純一の方に向けた目には、明らかに大粒の涙が流れだしていた。ただそれは、沙紀と抱き合ったときからの涙なのか、ただの汗だったのか、わからなかった。
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