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第四章:自分にだって意地がある

最後の戦い

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女子ふたりの激しい戦いが終わったガード下。向こう側に沙紀、こちら側に紗耶香、それぞれ手当を受けている。
全てを出し切って、傷だらけのふたり。沙紀の周りには直美と数人、紗耶香の方にはユイナや樹莉などがいる。興奮と感動の余韻が、未だ残っている。

純一は...、ずっと黙ってふたりを見ていた。そのまま、紗耶香の方に、目をやった。
汗だくなうえ、鮮血もあり、顔まで腫れあがった姿。蓄えてきた力をすべて出し切り、燃え尽くしたような表情。
しかし、最後の望みは潰えたものの、悲壮感はいっさい見られない。むしろ眩しいものであった。

見ていた純一の表情が、急に険しくなった。
目を沙紀の方、いや、その横の直美の方に向けた。そして、急に目の先に向けて、走り始めたのであった。
何事か?
沙紀の手当てをしている直美の正面までやって来た。そして、その場に土下座し、直美に対して懇願を始めた。
「総長、総長、おねがいします!わたしと、戦わせてくださいっ!」
...あまりの急展開に、そこにいる全員、訳がまったくわからなかった。

直美の前で、ひたすら頭を下げ続けて懇願する、純一。唐突な出来事に、だれもなにも言葉が出て来ない。
しばしの沈黙のあと、沙紀が傷口を押さえ、座りながら、口を開いた。
「純一、お前、なに考えてるんだ?冷静に考えろ。お前が直美に勝てるわけなんか、ねぇじゃん!」
三軍が、こともあろうに総長に対して直訴するといった無礼さに、怒るどころか、呆れ過ぎて相手にできないといった口調。
「いったい、どういうことなんだよ。説明しろ!」
それを無視して、懇願をつづける純一。
「どうか、総長、おねがいします!」
直美は黙って、純一を見つづけている。
沙紀が、未だ呆れ顔で、つづける。
「おいよぉ、お前は三軍なんだっての。立場をわかってんのかよ?」
それでも直訴をガンとしてつづけている純一に、そのうち諦めはじめた。
「仕方ねぇなぁ。ユイナ、お前が純一の相手してやれっ。」
しかしその言葉は、直美から、遮られた。
「いや、いいよ、沙紀。こいつはわたしが、やってやるよ。」
直美は純一の決心を、聞かなくとも汲み取ったようであった。
その瞬間から、直美の口調が変わった。
「純一、おらぁ、立てっ!いまから潰してやっからよぉっ、おらっ!」
大声で叫んだ。表情に殺気が漲ってきた。無造作に脱ぎすてた特攻服の上着の下から、あのすさまじい上腕筋が、あらわになった。
ギラギラした目で、足元の純一を睨んでいる。
顔を上げた純一、あの、男4人をまとめて葬り去ったときの、本気モードの直美が、そこにいた。
純一は立ち上がって、口を開いた。
「直美、おらぁ!おまえのその口、引き裂いてやっからよぉ!ついでにこの、鬼女の女ども、俺が全員潰してやるよ、おらぁぁ!」
心の底からの精いっぱいの大声で叫んでいる純一。
総長・直美と、三軍・純一、ふたりが真正面から睨み合い出した。
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