フェアリーゲート

護國鬼

文字の大きさ
5 / 56
第2章 門

妖精の舞台

しおりを挟む
 広瀬巡査の無線が途切れた後、緊急配備で集結し、現場の山道口公園に到着した応援が見たものは、両手、両足が無くなり、対刃防護衣でかろうじて守られた胴体と頭のみの広瀬巡査の遺体と少し離れた場所から見つかった佐藤巡査部長と思われる遺体であった。
 報告にあった獣は見つからなかったが、報告を疑う者は誰もいなかった。
 直ぐに付近一帯は警察により封鎖され、地元の猟友会の会員が集まり、罠を仕掛けることとなった。まだ誰も事態の本当の恐ろしさを理解していなかった。人を襲った熊や猪を捕獲するつもりぐらいの感じであった。
 翌朝山に入るのは罠を仕掛けたり、猟銃を持った猟師数人と機動隊員数人の合わせて10人ほどが二組で山道の入り口付近は20人ほどの機動隊が封鎖をしていた。


 猟友会と共に山道に入った柊誠(ひいらぎまこと)巡査は緊張し、出動服の青い生地を汗に濡らし帯革の拳銃サックをしきりに触っていた。
 柊巡査は機動隊員と言っても普段は交番勤務を行い、有事の際は出動する県によって名称は違うが山口県警察では、第二機動隊員と呼ばれる存在であった。警戒の範囲が広すぎる為に出動を命じられたがよりによって最前線の罠を仕掛ける猟友会員の警護に就くとは思ってもみなかったのである。

 檻型の罠を仕掛け始めて20分ほどが経った頃だろう
か、「パキリ」と木の枝が折れる音を聴いた気がした。音のした方を見ると何かが飛んで来たのが見えた。
「危ない!」咄嗟に出た言葉はそれだけだった。飛んで来た何かは罠を仕掛け中の猟友会員の老人の背中に突き刺さった。そう、飛んで来たのは矢だったのだ。
「ゴヴ一ッ」矢が当たったことに対する歓喜の声だったのか耳障りな叫び声を上げて全身薄汚れた緑一色の小柄な生き物が草むらから次々と飛び出して来た。
「ゴブリン?」柊巡査は子供の頃からの本好きから最近のファンタジ一系の本も多く読んでいた。そこから導き出された答えが異世界の怪物の定番ゴブリンだった。
「負傷者を連れて退避!」その場を仕切っていた警部補が指示を出す。気の早い者は拳銃を取り出していたが止める者は居なかった。
「パン、パン、パン」3発の銃声が鳴った。飛び出して来た3匹に対して腕に覚えのある機動隊員が1発ずつ発砲したのだ。警告は良いのかと思うがすでに1人生死に関わる傷を負っている。これ以上の犠牲者を出さない為にも妥当と判断されるだろうと何処か冷静に考える自分(柊巡査)がいた。だからこそ見えた、薄い黒い膜のようなものを貫いて弾丸がゴブリンに当たり傷付くのを、しかし、膜のせいで威力が落ちたのか致命傷には至っていないようで更に向かって来ているが足取りは先程より遅い。その頃には皆逃げ出す準備は出来ており、走り出していた。怪我人の老人も体格の良い機動隊員が担いでいた。自分も走り出していたこの訳の分からない場所から一刻も早く逃げ出したかった。その時、ブンという風切り音がしたかと思うと足下に矢が刺さっていた。すると驚いた拍子に足をもつれさしてしまい、山道から転げ落ちてしまいゴロゴロと勢いよく転がり落ちて行った。
「柊一!」同僚の叫び声も遠くなっていった。

 どれだけ落ちたか分からないが漸く平地で止まることが出来た。そこは山の中にあって木が生えておらず広間のようになっており、秘密の場所のように感じた。やっと起き上がり歩き出すと広間の真ん中に石や茸、草花で出来たマンホールほどの輪があった。これもまた、本の知識から答えらしきものを考えた出した「フェアリ一リング?」それは妖精達が踊り、舞った場所とされるおとぎ話だった。「うわぁ!」それと認識した途端熱い何かが身体中を駆け巡る感覚がして柊巡査は意識を失った



少し長くなりました。やっと主人公と題名のものが出せて一安心ですよ。お気に入りお願いします!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

処理中です...