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9話『冒険者と元勇者』
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「何者だテメェ……」
そう呟いた俺は、目の前にいる少年を見る。
そいつは、古びた冒険具を身につけており今にもパタリと倒れそうなほどフラフラとしていた。
黒髪に黒い瞳、色白で痩せ型、子供っぽいあどけなさの残る顔付き。およそ冒険者と呼ぶにはお粗末なその少年は強い眼差しでこちらを睨みつけている。
どう考えてもザコだ。イデアゼムなど使わなくてもパンチを使えばどうにかなりそうだ……そう見えるのに何故だろうか? その真っ直ぐな瞳としっかりとその場に立つ姿からは底知れない凄みのようなものが伝わってくる。
だが、正直問題はそこじゃない。
こいつは先程、俺のイデアゼムを打ち消しやがったのだ。
「今、何をした」
高圧的な口調でそう言った俺に、少年はハッキリとした口調で言い返してくる。
「悪鬼に答える義理は無い」
「俺に勝てるとでも?」
「勝てるかはわからないけど、負けはしないさ」
「ハッ……んなボロいなりで生き残れると思うなよ?」
俺は言うなり死刀逸否を抜き放ち、その切っ先から放たれた斬撃に重力波を乗せる。
重力波によって威力の強化された斬撃が少年に迫る。
「効かない!」
少年は叫び、右手をかざす。
激しい破裂音が周囲に響き、斬撃は跡形もなく消え去った。
「……どうなってんだ」
俺は呟き、ここに至った経緯を思い出す。
その性質故に禁忌遺産に数えられる死刀逸否を手に入れた俺は、試し斬りとエネルギー採取の両方を兼ねて近くにあった村を襲った。
しかしだ。
襲撃直後、俺がまだ十人も殺さないうちにコイツは現れた。
奴は、俺のイデアゼムを打ち消して村人を庇い俺に向かって来たのである。
俺は奴を睨みつけると逸否を握りしめ、地を蹴った。
どういうカラクリかは知らないが、特殊が効かないなら直接斬り刻んでやるまでだ。
見たところ同族では無さそうだ。
俺は一瞬で距離を詰めるとあらん限りの全力で太刀を振り下ろす。
ギィイイイイン!
太刀が弾かれ、激しい金属音を立てる。
目を見開いた俺は、弾かれたことで留守になる懐に少年が飛び込んで来たことに気づく。
「いやぁ!!」
勢いよく突き上げられた拳が、物理接触を受け付けないはずの俺の顎にヒットする。
「うおっ!?…………って、弱っ」
俺は、予想以上に弱かった少年の拳に拍子抜けたような声を漏らす。
そして、すぐさま少年の頬を殴り飛ばす。
「わっ!?」
殴られた少年はあっさりと飛び、地に転がる。
俺は、痛そうに頬をさすりながら立ち上がる彼を冷ややかな目で見下ろす。
「魔的要素のあるものを拒絶できる類の何か……といったところか。体質かあるいは……まぁ、何でもいいか」
言うなり俺は、少年の胸ぐらを掴み上げる。
「わっ! なっ! 何をっ!?」
慌てる少年を肩に担いだ俺は、ゆっくりと歩き出す。
俺は、バタバタと暴れる少年にこんなことを言う。
「お前は使えそうだ。お前を俺の奴隷にする」
俺は、ニタリと笑うとスタスタと村を後にした。
イデアゼムを無効化できる使い魔とでも思えば、使い用はある。殺すのに手間がかかるなら、死ぬまで使い潰せばいい話。
と、その時だった。
「?」
俺は肩に担いでいる少年の肉体から妙な感触を肌に覚えた。
ピタリと動きを止めた俺はその場に勢いよくガキを叩き落とす。
「うっ!」
腰をさすりながら、こちらを睨むガキに俺は言った。
「お前…………女か」
そう呟いた俺は、目の前にいる少年を見る。
そいつは、古びた冒険具を身につけており今にもパタリと倒れそうなほどフラフラとしていた。
黒髪に黒い瞳、色白で痩せ型、子供っぽいあどけなさの残る顔付き。およそ冒険者と呼ぶにはお粗末なその少年は強い眼差しでこちらを睨みつけている。
どう考えてもザコだ。イデアゼムなど使わなくてもパンチを使えばどうにかなりそうだ……そう見えるのに何故だろうか? その真っ直ぐな瞳としっかりとその場に立つ姿からは底知れない凄みのようなものが伝わってくる。
だが、正直問題はそこじゃない。
こいつは先程、俺のイデアゼムを打ち消しやがったのだ。
「今、何をした」
高圧的な口調でそう言った俺に、少年はハッキリとした口調で言い返してくる。
「悪鬼に答える義理は無い」
「俺に勝てるとでも?」
「勝てるかはわからないけど、負けはしないさ」
「ハッ……んなボロいなりで生き残れると思うなよ?」
俺は言うなり死刀逸否を抜き放ち、その切っ先から放たれた斬撃に重力波を乗せる。
重力波によって威力の強化された斬撃が少年に迫る。
「効かない!」
少年は叫び、右手をかざす。
激しい破裂音が周囲に響き、斬撃は跡形もなく消え去った。
「……どうなってんだ」
俺は呟き、ここに至った経緯を思い出す。
その性質故に禁忌遺産に数えられる死刀逸否を手に入れた俺は、試し斬りとエネルギー採取の両方を兼ねて近くにあった村を襲った。
しかしだ。
襲撃直後、俺がまだ十人も殺さないうちにコイツは現れた。
奴は、俺のイデアゼムを打ち消して村人を庇い俺に向かって来たのである。
俺は奴を睨みつけると逸否を握りしめ、地を蹴った。
どういうカラクリかは知らないが、特殊が効かないなら直接斬り刻んでやるまでだ。
見たところ同族では無さそうだ。
俺は一瞬で距離を詰めるとあらん限りの全力で太刀を振り下ろす。
ギィイイイイン!
太刀が弾かれ、激しい金属音を立てる。
目を見開いた俺は、弾かれたことで留守になる懐に少年が飛び込んで来たことに気づく。
「いやぁ!!」
勢いよく突き上げられた拳が、物理接触を受け付けないはずの俺の顎にヒットする。
「うおっ!?…………って、弱っ」
俺は、予想以上に弱かった少年の拳に拍子抜けたような声を漏らす。
そして、すぐさま少年の頬を殴り飛ばす。
「わっ!?」
殴られた少年はあっさりと飛び、地に転がる。
俺は、痛そうに頬をさすりながら立ち上がる彼を冷ややかな目で見下ろす。
「魔的要素のあるものを拒絶できる類の何か……といったところか。体質かあるいは……まぁ、何でもいいか」
言うなり俺は、少年の胸ぐらを掴み上げる。
「わっ! なっ! 何をっ!?」
慌てる少年を肩に担いだ俺は、ゆっくりと歩き出す。
俺は、バタバタと暴れる少年にこんなことを言う。
「お前は使えそうだ。お前を俺の奴隷にする」
俺は、ニタリと笑うとスタスタと村を後にした。
イデアゼムを無効化できる使い魔とでも思えば、使い用はある。殺すのに手間がかかるなら、死ぬまで使い潰せばいい話。
と、その時だった。
「?」
俺は肩に担いでいる少年の肉体から妙な感触を肌に覚えた。
ピタリと動きを止めた俺はその場に勢いよくガキを叩き落とす。
「うっ!」
腰をさすりながら、こちらを睨むガキに俺は言った。
「お前…………女か」
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