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8話『狂気襲来』
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巨漢ことブラジュエルは、ゆったりとした足取りで自らの小屋へと戻った。
先ほどの重力を操る同族は空間に閉じ込めて正解だったようだ。純粋な戦闘となれば、いづれ瞬間移動のトリックはバレる。空間生成以外で自分に許された能力は存在しない。あるのは、戦闘時のトリック技術と元々鍛えていた筋力のみ。
正直自分に向いているのは、一方的な破壊だけ。例えるなら、幼気で無抵抗な女をちぎるとか……。
正面切っての戦闘は向いていないのは間違いない。
そんなことを考えながら小屋の地下に降りた巨漢は、これからちぎる女達を思い、興奮に身震いした。
しかし、
「そんなっ! ……どうして!?」
声をあげた巨漢は、ショックのあまり両膝をつきその場にうなだれた。
周囲に広がるのは、切り刻まれ内臓を無差別に引きずり出された女達の死骸。
部屋にはまだ新しい鮮血が飛び散っており、生臭い香りを放っている。
その時だった。
「……あぁ。帰ってきたのかぁ?」
突然の声に顔を上げたブラジュエル。
刹那。その右腕が消し飛び、ブラジュエルは驚愕と苦しみの表情をとる。
「おぉあぁぁぁぁああああああああああ!?」
絶叫した彼に、部屋の奥の暗闇から現れた人物は嬉しそうな笑い声をあげる。
「ウヒャヒャヒャヒャァア!! いいね! いい声だぁ。もっと俺をゾクゾクさせてくれよぉ?」
現れたのは、金色じみた白髪の青年。金のアクセサリーを各所に纏い、引き締まった肉体に直接上着を身につけており、犬歯を剥き出し笑っている。
ブラジュエルは、困惑と苦しみに身震いする。
青年は、その紅の瞳でギロリとブラジュエルを睨むと、左手に握る太刀を地面に突き刺す。
「太刀もそろそろ飽きたなぁ。やっぱり、こっちの方がいいかぁ」
言うなり青年は、ブラジュエルの顔面を掴むと持ち上げる。
「うおぉあぁぁぁぁああああああああああ!?」
青年の凄まじい腕力に苦しむブラジュエルは、残された左手で抵抗しようとする。
しかし、その左手も青年の右手であっさりと捻り捥がれてしまう。
およそその肉体からは想像もできない青年の膂力に、ブラジュエルは驚くことしかできない。
激しく吹き出す赤黒い血液が青年を濡らす。
青年は、心底嬉しそうな顔になると小さく言った。
「じゃぁな」
次の瞬間、ブラジュエルの意識はプツリと消えた。
×××××××××××××××××××××××
「うぉ!?」
気がつくと俺は、もといた森の中に一人佇んでいた。
『残り20となった。戦え』
不意に聞こえたいつも声と消えた気配から、俺は先ほどの奴が何らかの方法で殺されたことを理解した。
そして、代わりに微かだが奴を初めて感知した場所から別の同族の残り香のようなものを感じ取る。
俺は、すぐさま駆け出す。
数分しないうちに辿り着いた小屋。
「ここか……」
地下に降りた俺は、粒子となって消えていく巨漢の死骸を見つめた。
そして、そのすぐ目の前に突き刺さる一本の太刀を見た。
「……おいおい。こいつはぁ、相当のレア物じゃねぇか」
俺はそこらに転がる女の死骸を踏み潰しながら、巨漢の死骸に近づく。
そして、そこにある太刀を勢いよく引き抜いた。
「死刀『逸否』。こいつがあるってことは………………」
いや、そんな訳はない。
そう考えた俺は無言でその太刀をすぐ側に落ちている鞘に仕舞うと腰にさした。
残り20。さっさと殺すとしよう。
先ほどの重力を操る同族は空間に閉じ込めて正解だったようだ。純粋な戦闘となれば、いづれ瞬間移動のトリックはバレる。空間生成以外で自分に許された能力は存在しない。あるのは、戦闘時のトリック技術と元々鍛えていた筋力のみ。
正直自分に向いているのは、一方的な破壊だけ。例えるなら、幼気で無抵抗な女をちぎるとか……。
正面切っての戦闘は向いていないのは間違いない。
そんなことを考えながら小屋の地下に降りた巨漢は、これからちぎる女達を思い、興奮に身震いした。
しかし、
「そんなっ! ……どうして!?」
声をあげた巨漢は、ショックのあまり両膝をつきその場にうなだれた。
周囲に広がるのは、切り刻まれ内臓を無差別に引きずり出された女達の死骸。
部屋にはまだ新しい鮮血が飛び散っており、生臭い香りを放っている。
その時だった。
「……あぁ。帰ってきたのかぁ?」
突然の声に顔を上げたブラジュエル。
刹那。その右腕が消し飛び、ブラジュエルは驚愕と苦しみの表情をとる。
「おぉあぁぁぁぁああああああああああ!?」
絶叫した彼に、部屋の奥の暗闇から現れた人物は嬉しそうな笑い声をあげる。
「ウヒャヒャヒャヒャァア!! いいね! いい声だぁ。もっと俺をゾクゾクさせてくれよぉ?」
現れたのは、金色じみた白髪の青年。金のアクセサリーを各所に纏い、引き締まった肉体に直接上着を身につけており、犬歯を剥き出し笑っている。
ブラジュエルは、困惑と苦しみに身震いする。
青年は、その紅の瞳でギロリとブラジュエルを睨むと、左手に握る太刀を地面に突き刺す。
「太刀もそろそろ飽きたなぁ。やっぱり、こっちの方がいいかぁ」
言うなり青年は、ブラジュエルの顔面を掴むと持ち上げる。
「うおぉあぁぁぁぁああああああああああ!?」
青年の凄まじい腕力に苦しむブラジュエルは、残された左手で抵抗しようとする。
しかし、その左手も青年の右手であっさりと捻り捥がれてしまう。
およそその肉体からは想像もできない青年の膂力に、ブラジュエルは驚くことしかできない。
激しく吹き出す赤黒い血液が青年を濡らす。
青年は、心底嬉しそうな顔になると小さく言った。
「じゃぁな」
次の瞬間、ブラジュエルの意識はプツリと消えた。
×××××××××××××××××××××××
「うぉ!?」
気がつくと俺は、もといた森の中に一人佇んでいた。
『残り20となった。戦え』
不意に聞こえたいつも声と消えた気配から、俺は先ほどの奴が何らかの方法で殺されたことを理解した。
そして、代わりに微かだが奴を初めて感知した場所から別の同族の残り香のようなものを感じ取る。
俺は、すぐさま駆け出す。
数分しないうちに辿り着いた小屋。
「ここか……」
地下に降りた俺は、粒子となって消えていく巨漢の死骸を見つめた。
そして、そのすぐ目の前に突き刺さる一本の太刀を見た。
「……おいおい。こいつはぁ、相当のレア物じゃねぇか」
俺はそこらに転がる女の死骸を踏み潰しながら、巨漢の死骸に近づく。
そして、そこにある太刀を勢いよく引き抜いた。
「死刀『逸否』。こいつがあるってことは………………」
いや、そんな訳はない。
そう考えた俺は無言でその太刀をすぐ側に落ちている鞘に仕舞うと腰にさした。
残り20。さっさと殺すとしよう。
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