大好きだよっ!

ふゆの桜

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3.笑ってる方がいいんだよ

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 日曜日。みんなで待ち合わせて亮介の試合を見に行った。体育館の中には思った以上に人がいて、意外と剣道って人気あるんだって驚いた。梨奈ちゃんと愛理ちゃんは剣道着独特の臭いに顔をしかめてたけど、試合は元気いっぱいに応援してた。

 うん……、たしかに独特の臭いがする。汗臭いっつうか。

 団体戦は残念ながら初戦敗退。個人戦の勝ち抜きでは、亮介は三人勝って四人目で負け。後で聞いたら、負けた相手は去年の全国大会の覇者だって。知らなかったけど、意外と亮介は強かったみたい。

 そう言えばオレたち以外にも亮介を応援しに来てる子たちがいた。女の子の集団。あいつやっぱりモテるわ。



 試合後はいったん学校へ戻って反省会とかするって言ってたんで、オレたちはファミレスでダベりながら時間潰しをすることにした。


「オレたち以外にも亮介の応援来てたな」
「井川クン女子に人気あるもん。差し入れとか持ってきた子もいたんじゃないかな」
「モテるヤツはうらやましいねぇ」
「そうゆう香山クンも女子に人気あるんじゃないの?」
「オレには誰も告ってくれねぇ」
「雅人はバカだから、告られても気がつかないんだよ」
「ひでぇ」

 亮介を待つ間、くだらない話で盛り上がる。ファミレスはドリンクバーがあるから、オレらみたいな高校生には丁度良いダベり場所だ。ふと見ると、三つ離れた席に、亮介の応援に来てた女の子たちが座ってた。

「あれって、さっき井川クンの応援に来てた子たちだよね」
「だなー。にしても可愛い子ばっかじゃん」

 みんなも気がついたみたいだった。
 そして話題は亮介のことに……。



「亮介ってさ、モテるけど特定の彼女とか作らないんだろう?」
「あー、それ知ってる。告った子が言ってたけど、好きな子がいるんだって」
「マジ? って、智おまえ知ってる?」
「えっ、オレ知らないよ。てか、好きな子いるってのも知らなかったし」
「でもさ、本命いるのに別の子たちと遊んでるってさ、もしかして亮介の好きな子って叶わぬ相手? うわぁ~、是非オレ聞いてみたい」
「香山クンじゃ教えてくれないんじゃない? でも智クンが聞いたら教えてくれたりして」
「えーっ、別に聞きたいと思わないけど」

 本人のいないところで盛り上がってるけど、まあいっか。でも亮介に好きな子がいるってのは、知らなかったなぁ。誰なんだろう? 興味あるかも。



 暫くして亮介から連絡が来たんで、カラオケに移動して盛り上がった。
 雅人が裏声でフリつけて歌って皆からブーイングを受けたり、信一がアニソン歌って意外と上手くて感心したり、梨奈ちゃんが演歌歌ってウケまくったりいろいろ。オレも結構歌ったと思う。こうやって学校以外でみんなで集まるのって久しぶりで、すげー楽しかった。




 みんなと別れて亮介とふたりで歩いてて、オレはようやっと聞きたかったことを聞けるチャンスが来たと思った。

 余談だけど亮介の家とオレの家はめちゃ近い。亮介一家はオレらが高校に入るときに、そこに引っ越してきたんだ。もともと亮介のお父さんの実家で、じーちゃんが死んでばーちゃんだけになっときに建て替えて引っ越してきたんだって。亮介のばーちゃんはめちゃ元気な人で、老人ホームは自分から言って入ったらしい。老人ホームの方が友達といっしょで楽しいからってのが理由。たまに遊びに行くと、すごく楽しそうにしてるって言ってた。




「なあ亮介、オレちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、いっかな?」

 小さな公園が目についたんで、オレは亮介をそこへ誘ってから、この前から聞きたくてたまらなかったことを聞いてみた。


「このまえさ、亮介オレにキスしたじゃん。あれ何で?」
「あー……、でもあれで泣き止んだだろ?」
「そりゃそうだけど……。でも、もしあれがオレのファーストキスだったらどうすんだよ」
「その前に話し聞いてたし。ちげーだろ」
「まあそうだけど……」

 なんか、はぐらかされてるような気がする。気のせいかもしれないけど。


「智はさ、笑ってる方がいいんだよ」
「えっ?」
「笑ってるときの智ってさ、ホント楽しそうに笑うんだよ。オレその顔見るの好きだよ」

 いったいこいつは何を言ってるんだ?、思わず、呆けた目で亮介のことを見てしまったし。


「だからさ、あんとき智めちゃ泣いてたじゃん。泣き止んで欲しかったの」
「だからってキスする必要ねぇーじゃん」
「イヤだったか?」
「イヤっつーか、ビックリしてワケわかんなかったし」
「そっか」
「もう、すんなよなー」

 亮介はフッと笑って、オレの頭をクシャッと撫でて歩き出した。
 なんか子供扱いされたみたいで、ちょっとムっとした。でも泣き止んだのは事実だし、もうこれ以上このことは気にしない方がいいのかな?
 オレも亮介の隣に並んで歩き出した。


 歩きながら亮介はまた話し出した。

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