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19.本命は誰?
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「智くん、春休みにお母さんたち旅行に行ってもいいかな?」
春休みも近くなった頃、お母さんがそう聞いてきた。
「来年は智くんの大学の準備とかでいろいろ大変そうだから、旅行行くとしたら今年かなって。どうかな?」
「結婚記念日でしょ? いいよ、行ってきなよ」
ウチの両親の結婚記念日は三月二十七日。毎年その日は夫婦水入らずでごはん食べに行ったりしてる。ここ数年は旅行に行ってるかな。一昨年はオレは大学に通うため一人暮らししてる兄貴のところに遊びに行って、去年は亮介んちに泊まりに行った。
「来年行かない分今年は二泊三日を考えてるんだけど、いいかな?」
「いいよ。今年は亮介に泊まりに来てもらおうと思ってるから」
「亮介くん、大丈夫なの?」
「うん、きっと旅行行くと思って話してあるから。二泊三日ってのは言ってないけど、たぶん大丈夫だと思うよ」
「ありがとう! ちゃんと亮介くんちのお土産も買ってくるからね!」
お母さん、すっごく嬉しそうだ。
でもオレも嬉しい。だって亮介とずっと一緒にいれるから。
春季講習は、亮介と話し合って受けないことにした。だからと言って勉強しないわけじゃなく、お互い得意科目が違うからそれぞれ教え合おうって話してる。まだどこって具体的に決まってないけど、同じ大学に行けたらいいねって話はしてる。学部が違ったとしても、同じ大学なら一緒にいれる時間もあると思うから。
なら春季講習行くべきじゃないか?って思うでしょ。でも、勉強しつつふたりでゆっくり一緒にいられるのはこの春休みが最後かもって、お互い思ってるからなんだ。
勉強もふたりの時間も、なるべく手を抜かず頑張ろうと思ってる。
春休みを直前にして、ちょっとした事件?が起こった。
「井川クン、私井川クンと付き合ってないよね? いろんな人が付き合ってるってウワサしてて、そのうち何人かには『つりあわない』とか『別れて』とか言われたよ」
げんなりした顔で愛理ちゃんが亮介に言ってきた。
オレは知らなかったんだけど、亮介は今まで遊んでた子たちに『本命と向き合いたいから』って言ってお別れしたんだって。それに加えてホワイトデーに手作りクッキーを愛理ちゃんと梨奈ちゃんにプレゼントしたってのが、とどめになったらしい。
梨奈ちゃんも手作りクッキー受け取ってるけど、梨奈ちゃんは信一と付き合ってるから、じゃあ愛理ちゃんだってことになったみたい。
「ゴメン。愛理ちゃんじゃないってちゃんと言っとくから」
「ねぇ、本命の子って誰? 聞かれたら私も答えていい?」
そう聞かれて、亮介は黙ってしまった。ウン……、そうだよな。オレも言えない。男同士なんてヘンな目で見られる方が多いから、やっぱりオレも言えないや。黙ってたけど、愛理ちゃんの言葉にオレもちょっと辛い。
「愛理ちゃん、亮介も話せるんだったらきっと話してると思うよ」
「そうだよ。だからさ、とりあえず知らん振りしとこうよ」
信一と梨奈ちゃんがフォローしてくれた。ふたりともサンキュ。そう思ってたら梨奈ちゃんがオレの方を向いてニコッとしてきた。なんとなく……、なんとなくだけど、もしかして梨奈ちゃんオレたちのこと知ってる?
後日亮介は、本命は愛理ちゃんじゃないってのをちゃんと言ったみたいだ。疑いの目はあるものの、直接愛理ちゃんに言う人はいなくなったんだって。
オレ? オレは最後までノータッチ。だって、今までいろんなコと遊んでた亮介が悪いんじゃないか。オレは知らないよ。時々チロっと意味深に見上げると、亮介の顔が引きつってるのが分かったけど。
ちょっとイジワルかな?
自分でもそう思うんだけどね。
「そんなの、私が彼女でぇーっす!って言っとけばいいじゃん。他の子が悔しがるのを見て笑ってればいいのよぉ」
今日は終業式。仲宗根さんが誘いに来て、今みんなでカラオケに来てるとこ。オレと亮介以外はほぼハジメマシテの状態だったけど、彼女のサバサバした性格に、他のみんなが打ち解けるのは早かった。
でもって今のセリフはその仲宗根さんだ。愛理ちゃんのボヤきにそう答えてた。
「仲宗根……、オマエ結構酷い性格してないか?」
「そぉ? そんなことないと思うよぉ」
さすがの雅人も呆れ顔。でもって雅人よ、いつの間に仲宗根さんのこと呼び捨てにしてんだ?
なんか知らんけど、仲宗根さんはオレたちのグループにすんなり入ってきたみたいだ。
「私ねぇ、亮介クンとキスしたことあるんだよっ」
みんなで一通り歌った後、仲宗根さんが突然爆弾発言をしてきた。
「でもそれ以上は無し。亮介クン格好いいんだけどさ、お互い好みじゃなかったんだよなぁ」
仲宗根さん以外の全員が、亮介のことを生暖かい目で見てたよ。オレ? もちろんオレもそう。ふ~ん、そうなんだぁ…って目で見てたよ。亮介、顔がかなり引きつってたし。そしてチラっとこっちを見た……けど、とりあえずオレは知らん振り。場の雰囲気って重要だよね? だからオレは亮介を助けてやらない。
意地悪すぎたかも?
自分でも焼きもちだってわかってるよ。
過去のことだって分かっててもさ、ちょっとくやしいじゃん。
だから、あとでいっぱいキスしようとも思ったけどね。
「じゃあさ、仲宗根さんの好みってどんな人なの?」
興味を持った愛理ちゃんが聞いていた。
「うーん……、強いて言えば智クン!」
えっ、オレ?
あっ、亮介の顔が厳しくなった。
春休みも近くなった頃、お母さんがそう聞いてきた。
「来年は智くんの大学の準備とかでいろいろ大変そうだから、旅行行くとしたら今年かなって。どうかな?」
「結婚記念日でしょ? いいよ、行ってきなよ」
ウチの両親の結婚記念日は三月二十七日。毎年その日は夫婦水入らずでごはん食べに行ったりしてる。ここ数年は旅行に行ってるかな。一昨年はオレは大学に通うため一人暮らししてる兄貴のところに遊びに行って、去年は亮介んちに泊まりに行った。
「来年行かない分今年は二泊三日を考えてるんだけど、いいかな?」
「いいよ。今年は亮介に泊まりに来てもらおうと思ってるから」
「亮介くん、大丈夫なの?」
「うん、きっと旅行行くと思って話してあるから。二泊三日ってのは言ってないけど、たぶん大丈夫だと思うよ」
「ありがとう! ちゃんと亮介くんちのお土産も買ってくるからね!」
お母さん、すっごく嬉しそうだ。
でもオレも嬉しい。だって亮介とずっと一緒にいれるから。
春季講習は、亮介と話し合って受けないことにした。だからと言って勉強しないわけじゃなく、お互い得意科目が違うからそれぞれ教え合おうって話してる。まだどこって具体的に決まってないけど、同じ大学に行けたらいいねって話はしてる。学部が違ったとしても、同じ大学なら一緒にいれる時間もあると思うから。
なら春季講習行くべきじゃないか?って思うでしょ。でも、勉強しつつふたりでゆっくり一緒にいられるのはこの春休みが最後かもって、お互い思ってるからなんだ。
勉強もふたりの時間も、なるべく手を抜かず頑張ろうと思ってる。
春休みを直前にして、ちょっとした事件?が起こった。
「井川クン、私井川クンと付き合ってないよね? いろんな人が付き合ってるってウワサしてて、そのうち何人かには『つりあわない』とか『別れて』とか言われたよ」
げんなりした顔で愛理ちゃんが亮介に言ってきた。
オレは知らなかったんだけど、亮介は今まで遊んでた子たちに『本命と向き合いたいから』って言ってお別れしたんだって。それに加えてホワイトデーに手作りクッキーを愛理ちゃんと梨奈ちゃんにプレゼントしたってのが、とどめになったらしい。
梨奈ちゃんも手作りクッキー受け取ってるけど、梨奈ちゃんは信一と付き合ってるから、じゃあ愛理ちゃんだってことになったみたい。
「ゴメン。愛理ちゃんじゃないってちゃんと言っとくから」
「ねぇ、本命の子って誰? 聞かれたら私も答えていい?」
そう聞かれて、亮介は黙ってしまった。ウン……、そうだよな。オレも言えない。男同士なんてヘンな目で見られる方が多いから、やっぱりオレも言えないや。黙ってたけど、愛理ちゃんの言葉にオレもちょっと辛い。
「愛理ちゃん、亮介も話せるんだったらきっと話してると思うよ」
「そうだよ。だからさ、とりあえず知らん振りしとこうよ」
信一と梨奈ちゃんがフォローしてくれた。ふたりともサンキュ。そう思ってたら梨奈ちゃんがオレの方を向いてニコッとしてきた。なんとなく……、なんとなくだけど、もしかして梨奈ちゃんオレたちのこと知ってる?
後日亮介は、本命は愛理ちゃんじゃないってのをちゃんと言ったみたいだ。疑いの目はあるものの、直接愛理ちゃんに言う人はいなくなったんだって。
オレ? オレは最後までノータッチ。だって、今までいろんなコと遊んでた亮介が悪いんじゃないか。オレは知らないよ。時々チロっと意味深に見上げると、亮介の顔が引きつってるのが分かったけど。
ちょっとイジワルかな?
自分でもそう思うんだけどね。
「そんなの、私が彼女でぇーっす!って言っとけばいいじゃん。他の子が悔しがるのを見て笑ってればいいのよぉ」
今日は終業式。仲宗根さんが誘いに来て、今みんなでカラオケに来てるとこ。オレと亮介以外はほぼハジメマシテの状態だったけど、彼女のサバサバした性格に、他のみんなが打ち解けるのは早かった。
でもって今のセリフはその仲宗根さんだ。愛理ちゃんのボヤきにそう答えてた。
「仲宗根……、オマエ結構酷い性格してないか?」
「そぉ? そんなことないと思うよぉ」
さすがの雅人も呆れ顔。でもって雅人よ、いつの間に仲宗根さんのこと呼び捨てにしてんだ?
なんか知らんけど、仲宗根さんはオレたちのグループにすんなり入ってきたみたいだ。
「私ねぇ、亮介クンとキスしたことあるんだよっ」
みんなで一通り歌った後、仲宗根さんが突然爆弾発言をしてきた。
「でもそれ以上は無し。亮介クン格好いいんだけどさ、お互い好みじゃなかったんだよなぁ」
仲宗根さん以外の全員が、亮介のことを生暖かい目で見てたよ。オレ? もちろんオレもそう。ふ~ん、そうなんだぁ…って目で見てたよ。亮介、顔がかなり引きつってたし。そしてチラっとこっちを見た……けど、とりあえずオレは知らん振り。場の雰囲気って重要だよね? だからオレは亮介を助けてやらない。
意地悪すぎたかも?
自分でも焼きもちだってわかってるよ。
過去のことだって分かっててもさ、ちょっとくやしいじゃん。
だから、あとでいっぱいキスしようとも思ったけどね。
「じゃあさ、仲宗根さんの好みってどんな人なの?」
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あっ、亮介の顔が厳しくなった。
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