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カーナの願いは叶わない
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「ありがとうカーナ。カーナに育ててもらって本当に幸せだったよ」
そう言って微笑む男、アイル。年齢25歳、身長188cm、短く刈り上げた焦げ茶の髪に黒い瞳、日焼けした顔には笑い皺が刻まれている。彼は昨日Aランク冒険者となった。つまり超優良物件。
「これからはコイツと一緒に家庭を持って頑張っていくよ。応援してくれるよな?」
そう言われて、ほんのりと頬を染めてアイルと見つめ合っている男、そう男だ、オ・ト・コ。彼の名はライナス、19歳、身長180cm、黒髪に緑色の瞳、たれ目気味のおかげで優しい雰囲気に見えている。Cランク冒険者だ。
「カーナさん、今までアイルを育ててくれてありがとうございます。それと、オレたちのことをずーっと応援してくれてありがとう。これからはアイルの隣にいて恥ずかしくないように、もっともっと頑張るつもりです。本当に、本当にありがとう」
おまえのことはオレが守るからムリすんな、とか言いながらイチャこらするふたりの前には小柄な女性、カーナだ。作り笑いとわかる笑顔はかなりひきつっている。
「ふ、ふたりとも元気で、幸せに暮らすのよ」
「ありがとうカーナ……、カーナママ」
ふわっとカーナを抱きしめて、そしてふたりは出て行った。
今日からふたりは新居で新婚生活。そう、この世界は同性同士の婚姻が認められているのだ。
ひとりになった部屋で力なく椅子に座り考える。おかしい……、どうしてこうなった?
彼女の名前はカーナ、本名を阿藤海菜と言う。49歳11ヶ月でこの世界に落っこちてから130年ほどになる。異世界から落ちて来た人をこの世界では『渡り人』と言うそうだ。そして、たまたま魔力を持っていた彼女は通常の人とは違う長さを生きることとなった。
魔力持ちは色素が薄く、長寿だ。寿命は魔力量によって異なるが、最低でも150年は生きると言われている。渡り人の場合はこちらの世界に来てから魔力が増え、それに従って容姿が変化していく。以前のカーナは黒髪黒目のおばさんだったが、現在は銀髪銀目、見た目16歳の少女だ。ある意味地球の女性にケンカを売っているほどの変化だった。
バックボーンの無い渡り人で、かつ、魔法士(魔力持ちの総称)のカーナは、長い人生をひとりで生きるのは寂しいからと共に生きるパートナーを探した。が、残念ながら同じ魔法士は変人揃いで一般の男性は粗暴な人が多かった。
ならば将来の優良物件を自分で育てれば良いんじゃね?
そんな動機で始まったのが、超優良物件育成計画だった。気の長い計画である。
一番最初の養い子オルガはカーナに淡い恋心を持ってくれた。ところがそれをじっくり育てようとした矢先に遊びに来た魔法士に食われてしまい彼女の元を去って行った。
二番目の養い子カルンは可愛い女の子にプロポーズして今は夫婦で宿屋を営んでいる。
三番目の養い子アイルはついさっき、ライナスと手を繋ぎながら家を出ていった。
「あ~あ、優良物件育成計画もふりだしかぁ……」
誰もいない家でポツリと呟くカーナ。出だしは良いが何故か皆、超優良物件に育った後にカーナの元を巣立って行くのだった。
翌日の夕方、カーナの姿は孤児院の食堂にあった。四度目の正直だ。今度こそ……の思いを胸に青田買いである。
「皆さん、今日は冒険者のカーナさんから差し入れをいただきました。今日の食べ物に感謝していただきましょう」
その合図とともに晩御飯を食べる子供たち。孤児院の経営はラクでは無いが、有力者からの寄付や孤児院を巣立った子らのカンパとかで何とかやりくりは出来ていた。
ここにいる子たちは皆成人(15歳)を迎えると自立しなければいけない。一部は商家とかに奉公人として雇われたりもするが、ほとんどは新米冒険者となる。それ以外に道は無いからだ。そして新米冒険者の生存率はかなり低い。厳しいがこの世界ではこれが現実だ。
「一番奥の左から3番目の子は何て名前ですか?」
「ああ、彼はザイードです。去年親が死んでウチに来た子で8歳になります」
「彼と……、少し話しても良いですか?」
院長に許可を貰ったカーナは真っ直ぐザイードの所へ歩いて行った。
「こんばんはザイード。君は冒険者になりたいかい?」
「えっ? ボ、ボクが?」
「そう。君が望むなら、私が君を立派な冒険者にしてあげる」
素質はありそう、もちろん顔も悪くない、大人になれば惚れ惚れするくらいのイイ男になること確定だ。内心舌なめずりしながらもそれを表には出さずニッコリとザイードに微笑みかけた。
「それって、ボクもアイルみたいになれる?」
「アイルを知ってるの?」
「Aランク冒険者を知らない人はいないよ、皆の憧れだもん」
「君も頑張ればアイルみたいになれるかもよ」
「ホント? じゃあボク頑張る!」
目を輝かせたザイードを、しかるべき手続きを取って引き取ったカーナは、その翌日ふたりで魔法塔に向かった。ここは全ての魔法士を管理する機関で、子供を引き取った場合それを届け出なければいけないのだ。ついでにアイルがカーナから巣立った件も……。
「おや、カーナじゃないですか。久しぶりですね」
「ナジェス様、ご無沙汰しております」
チッ、ヤなヤツに会った。そう思いつつも笑顔で頭を下げるカーナ。彼女の一番最初の養い子に手を出したのはナジェスである。以降ナジェスはカーナにとっての要注意人物であった。
ツヤのある白髪に銀の瞳、肌のキメも細かく見た目だけなら20歳ハタチの若造に見えるが、この男は魔法塔で一番偉い筆頭宮廷魔法士である。年齢もウワサでは450歳を超えていると言われているが、今現在彼より長生きしてる人はいない為誰もその真偽を確かめる術は無い。
「飽きもせず子育てですか? 新しい子がいるってことは、前の子は君から巣立ったんですね」
「そうですね……、アイルでしたら昨日から新婚生活を始めましたよ」
「それはそれは、おめでとうございます」
その言葉にまた思い出す。どうして私が育てた優良物件は私以外を選んでしまうんだろうか? 目の前にこんなイイ女がいるハズなのに、何故私じゃなく他所でトキメクのだ?
ナジェスは穏やかな表情を保ちつつカーナを観察している。実を言うとナジェスにはカーナの気持ちが手に取るように分かっていたりするのだ。
「こんにちは、君の名前は何て言うのかな?」
「ザイード」
「ザイード君か、良い名前だね。魔法塔は初めてでしょう? 少し案内してあげましょうか?」
「いいの?」
「たまたま時間が空いたので、カーナの手続きが終わるまでくらいなら大丈夫ですよ」
期待した目でカーナを見るザイード。魔法塔は魔力がある人以外は基本的には立入禁止なので、彼にしてみればこのチャンスは逃したくないのだ。その気持ちも理解できるカーナは仕方なくナジェスにザイードを任せて届けを出す部屋へ向かった。本当はナジェスにお願いするのは嫌なのだ。ナジェスは男も女もイケる口なので油断禁物だ。ロリコン趣味は無いと言うのを以前確認しておいたのが救いだった。
「じゃあザイード、私の部屋へ行きましょうか? 小さな魔法くらいなら見せてあげれますよ」
そう言ってナジェスはザイードの手を引いて歩いて行った。
「うわぁ……」
ナジェスの部屋で、彼がザイードに見せたのは明かりの魔法だった。それぞれの指に、色とりどりの明かりを灯して見せたのだ。初めて見る魔法にザイードは興奮が隠せない様子だった。
「ザイード、私の目を見てくれるかな?」
「あ、ハイ……」
明かりの魔法が終わった後、ナジェスはしゃがみこんで目線をザイードと同じ高さにした。ふたりの目線が合ったとき、一瞬ナジェスの目が光ったように見えた。
それから、ザイードの手を取って静かに部屋を後にした。向かうはカーナのいる方向。彼女の魔力パターンを覚えているので探し回る必要は無い。
「あ、カーナ!」
カーナを目にした途端、それまで虚ろな表情をしていたザイードの目に生気が戻った。
「良い子にしてたかい?」
「うん! あのね、手にね、いろんな色の明かりがついたんだよ」
喜びいっぱいの様子で話すザイードに、カーナは優しい目をしながら聞き入った。とりあえず、あの男はヘンなことはしなかったらしい。
「またやったんですか?」
「えっ? 何のことかなぁ…」
カーナが立ち去った後、上機嫌で部屋に戻ったナジェスに声をかける男がいた。
「また暗示をかけたでしょ。あの魔法は近くにいた人にはバレバレなんですから」
「イイロウ、ボクの部屋にいたのかい?」
「奥の部屋で書類整理してましたよ」
「ふ~ん……」
「バレたらカーナに殺されますよ」
「バレてないから、たぶん大丈夫でしょ」
気楽な様子でナジェスは答える。そうバレなきゃ良いのだ。バレなきゃ……。
『カーナはお母さん。お母さんは恋愛対象外』
ナジェスはこの言葉を一瞬の間にザイードの深層心理に埋め込んだのであった。
一番最初の養い子のときは焦った。油断していて気が付いたらカーナに恋心を持っていたからだ。彼の気持ちを逸らすため思わず誘惑してしまったナジェスだが、それ以降カーナが余所余所しくなってしまったのを後悔し続けている。だからそれ以降はカーナにバレないように暗示をかけることにしているのだった。
養い子もザイードで4人目、彼が巣立ったら今度こそ計画を諦めてくれるだろうか? そしたらボクが優しく慰めて傍にいてあげるのに。
「全く面倒くさい人ですねぇ。そんなことしないで素直に告白したら良いじゃないですか」
さすがのイイロウも呆れ顔だ。
魔法士の寿命は長い。だから片想いも大変気が長い。まさか一番最初の養い子を寝取った男の本命がカーナだとは本人も気がつくまい。
そう、だからカーナの願いは叶わない。
そう言って微笑む男、アイル。年齢25歳、身長188cm、短く刈り上げた焦げ茶の髪に黒い瞳、日焼けした顔には笑い皺が刻まれている。彼は昨日Aランク冒険者となった。つまり超優良物件。
「これからはコイツと一緒に家庭を持って頑張っていくよ。応援してくれるよな?」
そう言われて、ほんのりと頬を染めてアイルと見つめ合っている男、そう男だ、オ・ト・コ。彼の名はライナス、19歳、身長180cm、黒髪に緑色の瞳、たれ目気味のおかげで優しい雰囲気に見えている。Cランク冒険者だ。
「カーナさん、今までアイルを育ててくれてありがとうございます。それと、オレたちのことをずーっと応援してくれてありがとう。これからはアイルの隣にいて恥ずかしくないように、もっともっと頑張るつもりです。本当に、本当にありがとう」
おまえのことはオレが守るからムリすんな、とか言いながらイチャこらするふたりの前には小柄な女性、カーナだ。作り笑いとわかる笑顔はかなりひきつっている。
「ふ、ふたりとも元気で、幸せに暮らすのよ」
「ありがとうカーナ……、カーナママ」
ふわっとカーナを抱きしめて、そしてふたりは出て行った。
今日からふたりは新居で新婚生活。そう、この世界は同性同士の婚姻が認められているのだ。
ひとりになった部屋で力なく椅子に座り考える。おかしい……、どうしてこうなった?
彼女の名前はカーナ、本名を阿藤海菜と言う。49歳11ヶ月でこの世界に落っこちてから130年ほどになる。異世界から落ちて来た人をこの世界では『渡り人』と言うそうだ。そして、たまたま魔力を持っていた彼女は通常の人とは違う長さを生きることとなった。
魔力持ちは色素が薄く、長寿だ。寿命は魔力量によって異なるが、最低でも150年は生きると言われている。渡り人の場合はこちらの世界に来てから魔力が増え、それに従って容姿が変化していく。以前のカーナは黒髪黒目のおばさんだったが、現在は銀髪銀目、見た目16歳の少女だ。ある意味地球の女性にケンカを売っているほどの変化だった。
バックボーンの無い渡り人で、かつ、魔法士(魔力持ちの総称)のカーナは、長い人生をひとりで生きるのは寂しいからと共に生きるパートナーを探した。が、残念ながら同じ魔法士は変人揃いで一般の男性は粗暴な人が多かった。
ならば将来の優良物件を自分で育てれば良いんじゃね?
そんな動機で始まったのが、超優良物件育成計画だった。気の長い計画である。
一番最初の養い子オルガはカーナに淡い恋心を持ってくれた。ところがそれをじっくり育てようとした矢先に遊びに来た魔法士に食われてしまい彼女の元を去って行った。
二番目の養い子カルンは可愛い女の子にプロポーズして今は夫婦で宿屋を営んでいる。
三番目の養い子アイルはついさっき、ライナスと手を繋ぎながら家を出ていった。
「あ~あ、優良物件育成計画もふりだしかぁ……」
誰もいない家でポツリと呟くカーナ。出だしは良いが何故か皆、超優良物件に育った後にカーナの元を巣立って行くのだった。
翌日の夕方、カーナの姿は孤児院の食堂にあった。四度目の正直だ。今度こそ……の思いを胸に青田買いである。
「皆さん、今日は冒険者のカーナさんから差し入れをいただきました。今日の食べ物に感謝していただきましょう」
その合図とともに晩御飯を食べる子供たち。孤児院の経営はラクでは無いが、有力者からの寄付や孤児院を巣立った子らのカンパとかで何とかやりくりは出来ていた。
ここにいる子たちは皆成人(15歳)を迎えると自立しなければいけない。一部は商家とかに奉公人として雇われたりもするが、ほとんどは新米冒険者となる。それ以外に道は無いからだ。そして新米冒険者の生存率はかなり低い。厳しいがこの世界ではこれが現実だ。
「一番奥の左から3番目の子は何て名前ですか?」
「ああ、彼はザイードです。去年親が死んでウチに来た子で8歳になります」
「彼と……、少し話しても良いですか?」
院長に許可を貰ったカーナは真っ直ぐザイードの所へ歩いて行った。
「こんばんはザイード。君は冒険者になりたいかい?」
「えっ? ボ、ボクが?」
「そう。君が望むなら、私が君を立派な冒険者にしてあげる」
素質はありそう、もちろん顔も悪くない、大人になれば惚れ惚れするくらいのイイ男になること確定だ。内心舌なめずりしながらもそれを表には出さずニッコリとザイードに微笑みかけた。
「それって、ボクもアイルみたいになれる?」
「アイルを知ってるの?」
「Aランク冒険者を知らない人はいないよ、皆の憧れだもん」
「君も頑張ればアイルみたいになれるかもよ」
「ホント? じゃあボク頑張る!」
目を輝かせたザイードを、しかるべき手続きを取って引き取ったカーナは、その翌日ふたりで魔法塔に向かった。ここは全ての魔法士を管理する機関で、子供を引き取った場合それを届け出なければいけないのだ。ついでにアイルがカーナから巣立った件も……。
「おや、カーナじゃないですか。久しぶりですね」
「ナジェス様、ご無沙汰しております」
チッ、ヤなヤツに会った。そう思いつつも笑顔で頭を下げるカーナ。彼女の一番最初の養い子に手を出したのはナジェスである。以降ナジェスはカーナにとっての要注意人物であった。
ツヤのある白髪に銀の瞳、肌のキメも細かく見た目だけなら20歳ハタチの若造に見えるが、この男は魔法塔で一番偉い筆頭宮廷魔法士である。年齢もウワサでは450歳を超えていると言われているが、今現在彼より長生きしてる人はいない為誰もその真偽を確かめる術は無い。
「飽きもせず子育てですか? 新しい子がいるってことは、前の子は君から巣立ったんですね」
「そうですね……、アイルでしたら昨日から新婚生活を始めましたよ」
「それはそれは、おめでとうございます」
その言葉にまた思い出す。どうして私が育てた優良物件は私以外を選んでしまうんだろうか? 目の前にこんなイイ女がいるハズなのに、何故私じゃなく他所でトキメクのだ?
ナジェスは穏やかな表情を保ちつつカーナを観察している。実を言うとナジェスにはカーナの気持ちが手に取るように分かっていたりするのだ。
「こんにちは、君の名前は何て言うのかな?」
「ザイード」
「ザイード君か、良い名前だね。魔法塔は初めてでしょう? 少し案内してあげましょうか?」
「いいの?」
「たまたま時間が空いたので、カーナの手続きが終わるまでくらいなら大丈夫ですよ」
期待した目でカーナを見るザイード。魔法塔は魔力がある人以外は基本的には立入禁止なので、彼にしてみればこのチャンスは逃したくないのだ。その気持ちも理解できるカーナは仕方なくナジェスにザイードを任せて届けを出す部屋へ向かった。本当はナジェスにお願いするのは嫌なのだ。ナジェスは男も女もイケる口なので油断禁物だ。ロリコン趣味は無いと言うのを以前確認しておいたのが救いだった。
「じゃあザイード、私の部屋へ行きましょうか? 小さな魔法くらいなら見せてあげれますよ」
そう言ってナジェスはザイードの手を引いて歩いて行った。
「うわぁ……」
ナジェスの部屋で、彼がザイードに見せたのは明かりの魔法だった。それぞれの指に、色とりどりの明かりを灯して見せたのだ。初めて見る魔法にザイードは興奮が隠せない様子だった。
「ザイード、私の目を見てくれるかな?」
「あ、ハイ……」
明かりの魔法が終わった後、ナジェスはしゃがみこんで目線をザイードと同じ高さにした。ふたりの目線が合ったとき、一瞬ナジェスの目が光ったように見えた。
それから、ザイードの手を取って静かに部屋を後にした。向かうはカーナのいる方向。彼女の魔力パターンを覚えているので探し回る必要は無い。
「あ、カーナ!」
カーナを目にした途端、それまで虚ろな表情をしていたザイードの目に生気が戻った。
「良い子にしてたかい?」
「うん! あのね、手にね、いろんな色の明かりがついたんだよ」
喜びいっぱいの様子で話すザイードに、カーナは優しい目をしながら聞き入った。とりあえず、あの男はヘンなことはしなかったらしい。
「またやったんですか?」
「えっ? 何のことかなぁ…」
カーナが立ち去った後、上機嫌で部屋に戻ったナジェスに声をかける男がいた。
「また暗示をかけたでしょ。あの魔法は近くにいた人にはバレバレなんですから」
「イイロウ、ボクの部屋にいたのかい?」
「奥の部屋で書類整理してましたよ」
「ふ~ん……」
「バレたらカーナに殺されますよ」
「バレてないから、たぶん大丈夫でしょ」
気楽な様子でナジェスは答える。そうバレなきゃ良いのだ。バレなきゃ……。
『カーナはお母さん。お母さんは恋愛対象外』
ナジェスはこの言葉を一瞬の間にザイードの深層心理に埋め込んだのであった。
一番最初の養い子のときは焦った。油断していて気が付いたらカーナに恋心を持っていたからだ。彼の気持ちを逸らすため思わず誘惑してしまったナジェスだが、それ以降カーナが余所余所しくなってしまったのを後悔し続けている。だからそれ以降はカーナにバレないように暗示をかけることにしているのだった。
養い子もザイードで4人目、彼が巣立ったら今度こそ計画を諦めてくれるだろうか? そしたらボクが優しく慰めて傍にいてあげるのに。
「全く面倒くさい人ですねぇ。そんなことしないで素直に告白したら良いじゃないですか」
さすがのイイロウも呆れ顔だ。
魔法士の寿命は長い。だから片想いも大変気が長い。まさか一番最初の養い子を寝取った男の本命がカーナだとは本人も気がつくまい。
そう、だからカーナの願いは叶わない。
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