新しい扉

ふゆの桜

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前編

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※※※
他作品を読んでからこちらへ来た方、申し訳ありません!
ギャグだと思って軽く流していただけたら幸いです。
※※※





 誕生日と言うのは子供の頃は特別な日のような感じがして大好きだったが、大人になった今は平凡な普段と変わらない日常の中の一日だと思う。彼女でもいれば祝ってもらったりするんだろう。でも独り身の現在は、単に年齢が一つ上がったと言う意味しか無い。もちろんプレゼントを貰うなんてことも無いわけで、しかもあと三十年もすれば加速する老化にガックリ項垂れる日になるはずだ。

 数日前、学生時代から十年来の友人からメールが届いた。珍しく、オレに誕生日プレゼントを送ったとのことだった。『贈る』ではなく『送る』なのは、約半年の予定で南米の奥地へ行ってるからなんだとか。直接渡せないから『送った』なんだと。いや、別にそうだとしても『贈る』の文字でも良いと思うのだが、アイツは変なところにこだわりがある奴なんだ。

 そして当日、楽しみにしていたオレのところへ宅配便が届いた。送り主はもちろんアイツだ。はたして中には何が入ってるのか、非常に気になる。それもそうだが、アイツがオレにプレゼントを渡すなんてのは初めてのことだ。知り合ってからの記憶を辿ってみたが、やはりない。逆も然りで、オレもアイツにプレゼントを渡したことは一度も無い。


    お前にはこっちの才能があると思う
    是非これで楽しんで、新しい扉を開けてくれ


 箱を開けた一番上に入ってたのは、アイツからのメッセージカードだった。書いてある内容は意味不明だが、アイツにしては子洒落たことをやってくれる。ニヤリとしながら中身を期待しつつ、カードの下にあった箱の包装紙を破り蓋を開けた。見えたのは色とりどりの紙で出来た緩衝材。期待していただけに一瞬イラっとしたが、かまわずそれをどけて見つけたのは、箱型の黒い缶だった。

「何だよ。過剰包装じゃねーの?」

 箱の中にまた箱って、某国の某人形みたいだ。あっちは人形の中に人形だけど結局は同じだ。などと、くだらないことを考えてしまった。まあいいか。今はこの黒い箱缶の中身だ。

 この箱の蓋の部分には銀色の留め金が付いていて、どうやらここを外して開けるらしい。しかもよくよく見るとこの箱は、贈答用の菓子が入ってる箱缶に比べるとかなり高級感がありそうだ。もしかしてこの箱だけで結構な金額になるんじゃないか?

 箱を持ち上げてしげしげと眺めてみる。……うん、やっぱり高そうだ。中は重いような軽いような、意外と重いかな。と言うか、外側からじゃ中に何が入ってるのか全く分からん。

 とりあえず中を見てみるか。期待に胸と鼻穴を膨らませながらそっと留め金を外す。それから蓋を開けて……。

「何だこれ?」

 中に入ってたのは、淡いパステルカラーの太さや形状が違う棒が五本、それぞれ布と言うかクッション付きの仕切りの中に収められていた。材質はプラスチックだろうか。よく分からん。ふと見ると箱の両端に指を差し込めるくらいの穴があいていた。どうやらこの箱は二重底になっているらしい。棒の意味は分からんが、今は気にせず指を突っ込んで、上のケースを持ち上げた。

「…………」


 何故?


 二段目に入ってたのは、何かの液体入りの縦長のボトルが三本、脱脂綿、取り扱い説明書と思われる小冊子、そして……黒光りしてる立派なサイズの偽チンコ。一段目のファンシーな雰囲気から一転、二段目はこの黒いブツのおかげでグロテスクと言っても良いような様相だった。


 何故?
 どうして?
 何の為に?

 ……わけ分からん。


 何となく分かるような、分かると言うか想像できると言うか。でもそれが正解であってほしくないと言うか……。アイツは何の為にこれをオレに送り付けてきたんだ?
 ちなみにボトルにはそれぞれラベルが付いてあり、ローション、洗浄用、消毒用と記されていた。


 恐る恐る取り扱い説明書と思われる小冊子を手に取ってみる。



  『アナニー入門 ~超初心者から熟練を目指すまで~』



 マジかよ……。顔を引き攣らせながらページをめくってみたところ、カラフルな棒はアナル拡張&アナニー初心者用で、黒いグロテスクなブツは熟練者用特製偽チンコなのだそうだ。全てシリコン製で、細い方の二本は超初心者に優しい設計となっているらしい。

「…………」

 小冊子を閉じた後、再度アイツからのメッセージを読む。こっちの才能ってどっちの才能だ? 何故アイツがそう思ったのかを、アイツの首を絞めながら問い質したい欲求にかられたが、アイツにとってはラッキーなことに日本にいないと言う。いや違うな。アイツが国外にいるときを狙ってこれを送り付けたって表現の方が正しいか。ちくしょう。誕生日プレゼントと言うのはただの方便じゃないか。
 とりあえずアイツが帰国したら真っ先に首絞めの刑をかましてやるとして、それまでこの箱は目に付かないところへしまっておこう。もしかしたら間違ったものを送り付けた可能性もあるからな。メッセージカードがアイツの手書きってことを考えると、その可能性はかなり低いものになりそうだが、でもゼロでは無い。と言うか、オレ自身の願望として間違いであって欲しいと思う。切にそう願う。

 そんなワケで、ワクワク感が困惑に変わってしまった誕生日ではあったが、それ以外は何もない普通の日だった。アイツからのプレゼントの件は頭の片隅にあったものの、今は確認することもできないので棚上げ中だ。一応問い合わせのメールは送ったんだぜ。でも未だ返事は返ってきてない。行先が連絡の取り難い場所だってことだったから、まあ仕方ないだろう。
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