夏の最後の試合で...。

志戸瀬 輝

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序章

0-2 夢を見続ける少年

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俺は夢を見ていた。チームと共にハンドボールというスポーツをすることを、思っている。

形だけじゃない、自分が持つ本物のハンドボールで皆と戦って行きたい。そう思っていた…。


東丘中学ハンドボール部は、男子21人、女子10人、顧問が2人の小さな学校のチームだ。

3年生が男子5人、女子4人、2年が男子7人、女子が2人、1年は男子9人、女子4人だ。

去年、夏に引退した先輩達(高校一年生)は、男子3人、女子2人で、ここまで人数が増えたのは嬉しかった。

去年の夏、男子のその先輩達は、引退のかかる夏の試合で、初戦敗退の結果を残し、中学校ハンドボールを終えた。

試合中の彼らは輝いていた。その時の今の3年生たちも、俺達も、皆が勝ち一心でプレーしていた。

今と比べ物にならないくらいの差があった。どうしてここまで変わったのかは、誰が知っているわけでもなかった。

その時から俺も努力をするように心がけた。試合後の、引退した先輩たちが抜けた練習は、最初は慣れなかったが、段々と慣れていった。

今でもそうだが、練習試合などで、なにかに挑戦使用としても、できないままで、失敗ばかりしてしまう。

練習して、何度も同じことを繰り返して体に覚えさせようとしても、なかなかうまくいかなかった。

スランプの時期に入ってしまい、心が折れかけた時に、忘れていたものを思い出させてくれたのは、引退した先輩で、エースナンバーを背負っていた人だった。

暇な時に顔を出しに来る人で、その日たまたま調子が良くて、なかなかのプレーをしたと自分でも思う。

部室に帰ろうとした時に、先輩が手を洗っていて、その時に声をかけてきた。

その時の先輩の話に、俺は嬉しく思った。

「やっぱ凄いな、お前。入部した時は、ただ球が早いやつだと思ってたけど、キーパーになってから成長のスピードが異常だったよな。…その力を、今の代の馬鹿達に使ってやってくれ。今後、お前はきっとチームを作り上げる。そんな気がするよ。」

その事を聞きた時に、忘れていたものを思い出した。

褒められること。

最初の方は、良いプレーが出来て、褒められることが多かった。

だけど、成長が早すぎて、自分の体が追いついていなかった。だから失敗ばかりしていたんだと思う。

良いプレーが出来なくなって、怒られることばかり、逃げてたんだろうな。って、その時にすっと出てきた。

気持ちが切り替わった瞬間だった。今でもあの人を尊敬し続けている。どれだけ弱いと言われていても、俺の中では強いと思っていた。

2年になり、俺は、先輩となった。慣れない環境に戸惑いながらも、精一杯を尽くして頑張っていた。

5月にある春の試合、地区の大会だが、その中には全国レベルの中学もいる。地区だからといって、舐めてかかるのは絶対にしないと決めていた。

1年を含めた練習の中、本気でやろうというチームメイトは、一人もいなかった。

あと一ヶ月程度である試合に俺は、チームを変えることに全力を注ぐつもりでいる…。
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