夏の最後の試合で...。

志戸瀬 輝

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一章 春季地区大会

1−2 墨汁教

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この一週間で何ができるか、それは技術を磨く事と、チーム全体に本気のプレーをしてもらう事。

試合の一週間前で、チームは全体的に真面目に練習に取り組んでいる。これを利用して、シュート精度を上げたり、パス精度をあげる練習などをしてもらいたいと思っている。

それをどう誘導するか、先生に相談もありだが、ここは自分たちで気持ちを作ってもらいたい。

だから俺は、一か八かの賭けで、練習中にシュートを止めまくり、パスワークを完璧にこなしていき、周りに本気を伝えるように頑張ってみることにした。

前にもやったが、成功はしなかった。

しかし、今の彼らは闘志が少し芽生えている。この状況でやればできないこともない気はする。

今日の練習で俺は彼らを本気にする。


放課後のチャイムが鳴り、いざ部活へ!という気持ちで席から立ち上がると、光里 深夜と日生 未来が近寄って来た。

「僕たち、明日から部活へ参加するんです。家の方も落ち着いてきてやっと部活へ参加できます。」

「私ら舐めてかからないでよね。すぐにレギュラー取ってあげるから。」

光里達はそう言い、「明日からよろしく」と言い、去っていった。

自分の喋るタイミングが無く、何とも言えない感じだった。

…気を取り直し、俺は部活へ向かうべく、部室へと足を運んだ。


部室へ入る前、俺はまず中から聞こえる叫び声に嫌な予感を感じた。

…墨汁教の戦争だ。

墨汁教は、東丘ハンドボール部の中の伝統である。歴代の選手がこの部室で戦争を起こす。その名を俺は墨汁戦争と呼んでいる。

定期的に行われていて、毎回俺は被害に会うので、落ち着いてから部室に入ることにした。


…長い。

明らかに長すぎる、後輩達が俺のあとから来て入っていったが、速攻で出てきた。その後も何度か挑戦したが、収まる気配がなかった。

準備が遅いので、先生が様子を見に来た。何をしているのか先生に聞かれると、急に部室が静かになった。

先生は墨汁教の活動を知っており、俺達が部室へ入れない理由も、何となく分かったのだろう。

先生は中に入り、中で暴れていた人達(主に先輩)が、怒られているのが聞こえた。すぐに部室から出てきて、準備を大急ぎで始めていた。

その後部室へ入ると、床が墨汁だらけだった。掃除をさせられるのに、めんどくさいことするなぁ。って、俺と後輩組は、着替えをしながらそう思ったのだった。
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