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アイザックは、ただ質問の答えがなかなか見つからないのか、姿勢を正したまま視線だけを泳がしている。
もっと問い詰めたい。彼が選んだ女性の名も、身分も、容姿も、馴れ初めも。全部全部知りたい。
その権利が自分にあるとエステルは信じているし、アイザックに拒む権利が無いことも知っている。
でも必死に探す彼の様子に、エステルは声を掛けては駄目だと判断し、じっと待つ。
息苦しい沈黙に、ぬるくなってしまったお茶を一口飲む。先ほどより苦みが増している。
やはり淹れ直そう。自分がこんなにも辛い気持ちになっているのも、アイザックが婚約を破棄したいと願っているのも、全部このお茶のせいだ。
だから美味しいお茶を淹れたら、これは全部無かったことになる。そうきっと……
何の根拠も無いけれど。ただのお茶に縋る自分があまりに滑稽だとしても。それでも、何かをせずにはいられなかった。
衝動的に未だ沈黙を続けるアイザックに断りを入れることなく、エステルは呼び鈴を鳴らそうとした。しかし、その時ーーアイザックが自分を見た。
答えを見付けたのだと、エステルは瞬時に悟った。
身構えた拍子に、ごくりと唾を飲む。細く震える息を落ち着かせる為に、胸に手を当ててゆっくりと深呼吸する。
視線はずっと絡み合ったまま。形の良い彼の唇はいつ動いてもおかしくはない。……なのに、彼はここですっと自分から目を逸らした。
答えは見つかったけれど、言葉にしたくない。そんな意思表示だった。
「答えてはいただけないのですね」
「すまない」
「わたくしが傷付くから、言えないのですか?」
「……」
「それとも、あなたが選んだ女性が傷付くから?」
「……どちらも違う。ただ」
「ただ?」
「……」
肝心なところで沈黙するアイザックに、エステルは強い口調で「お答えください」と訴える。
そうすれば観念したような、それでいて痛みを堪えるような顔でこう言った。
「ただ……自分の中で導き出した答えが答えになっていないから、言えないだけだ」
なんだそれ。
下町の女性のような言葉が思わず胸の中で零れる。声に出さなかったのは、長年の淑女教育の賜物だろう。
だが今は、そんな自分を褒めたくなんかない。
「……あなたは、狡い人ね」
「すまない」
「わたくし世間の笑いものになるのですね」
「そんなことは絶対にさせない。デナムの名に懸けて」
強く宣言するアイザックは、もう未来を見ている。困難を乗り越えて結ばれた恋人との幸せの未来を。
ーーわたくしは、あなたにとって厄介者なのね。
エステルは苦しくて、笑った。
もっと問い詰めたい。彼が選んだ女性の名も、身分も、容姿も、馴れ初めも。全部全部知りたい。
その権利が自分にあるとエステルは信じているし、アイザックに拒む権利が無いことも知っている。
でも必死に探す彼の様子に、エステルは声を掛けては駄目だと判断し、じっと待つ。
息苦しい沈黙に、ぬるくなってしまったお茶を一口飲む。先ほどより苦みが増している。
やはり淹れ直そう。自分がこんなにも辛い気持ちになっているのも、アイザックが婚約を破棄したいと願っているのも、全部このお茶のせいだ。
だから美味しいお茶を淹れたら、これは全部無かったことになる。そうきっと……
何の根拠も無いけれど。ただのお茶に縋る自分があまりに滑稽だとしても。それでも、何かをせずにはいられなかった。
衝動的に未だ沈黙を続けるアイザックに断りを入れることなく、エステルは呼び鈴を鳴らそうとした。しかし、その時ーーアイザックが自分を見た。
答えを見付けたのだと、エステルは瞬時に悟った。
身構えた拍子に、ごくりと唾を飲む。細く震える息を落ち着かせる為に、胸に手を当ててゆっくりと深呼吸する。
視線はずっと絡み合ったまま。形の良い彼の唇はいつ動いてもおかしくはない。……なのに、彼はここですっと自分から目を逸らした。
答えは見つかったけれど、言葉にしたくない。そんな意思表示だった。
「答えてはいただけないのですね」
「すまない」
「わたくしが傷付くから、言えないのですか?」
「……」
「それとも、あなたが選んだ女性が傷付くから?」
「……どちらも違う。ただ」
「ただ?」
「……」
肝心なところで沈黙するアイザックに、エステルは強い口調で「お答えください」と訴える。
そうすれば観念したような、それでいて痛みを堪えるような顔でこう言った。
「ただ……自分の中で導き出した答えが答えになっていないから、言えないだけだ」
なんだそれ。
下町の女性のような言葉が思わず胸の中で零れる。声に出さなかったのは、長年の淑女教育の賜物だろう。
だが今は、そんな自分を褒めたくなんかない。
「……あなたは、狡い人ね」
「すまない」
「わたくし世間の笑いものになるのですね」
「そんなことは絶対にさせない。デナムの名に懸けて」
強く宣言するアイザックは、もう未来を見ている。困難を乗り越えて結ばれた恋人との幸せの未来を。
ーーわたくしは、あなたにとって厄介者なのね。
エステルは苦しくて、笑った。
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