行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜

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「……っ!?……あははっ、そっか……そうなのね……ふふっ」

 こちらを向いてくれたと思ったけれど、そうじゃなかった。

 アイザックは天真爛漫に花壇を歩く想い人の後を追っただけだった。でも、それだけで彼がどれだけ彼女を大切に思っているか痛いほど伝わってくる。

 全てを包み込むような優しい微笑み。熱を帯びた眼差し。いつでも彼女を守ろうとする意志が伝わる右腕。

 アイザックは彼女に触れてはいない。しかしいつ彼女が転んでも抱き寄せられるように、その腕は華奢な背の後ろに添えられていた。

 彼のこんな表情、初めて見た。
 彼のこんな仕草、初めて見た。

 離れてみて、改めて知った。元々アイザックは自分が思っているほど、自分のことを大切に思っていなかったのだと。

 そうして、あの日の答えを見つけてしまった。

【君は、彼女ではないから】 
 
 きっとそう言いたかったのだ。

 確かにそれは答えになっているようで、答えになっていない。問うた側を納得させられる理由にはならない。

 でも、それ以上ないほど正しい答えだ。だって自分も同じだったのだから。

 アイザックより優しい男性が現れても、アイザックより整った顔立ちの男性が現れても、アイザックより財のある男性が現れても、アイザックより一途に自分を想ってくれる男性が現れても、心が揺らぐことは決してなかった。

「……あなたも恋をしてしまったのね、アイザック」

 好きな人が自分ではない他の人を好きになってしまった。ただそれだけのことだった。 

 ただ自分の恋は実ることが無く、アイザックの恋は実っただけのこと。とても単純で、どこにでもある話だった。

「そっか……わたくし失恋してしまったのね……」
 
 当たり前の事実をようやく実感したエステルは、伸ばしていた手を己の胸に当てる。

 ドレスが皺になるのなんて構わずに、ぎゅっと胸元を握りしめる。

 ああ、痛い。息ができない程に苦しい。失恋した女性が泣く理由がよく分かる。どうにもならないなら、泣くしかないじゃないか。

 ポタリ、ポタリと熱い雫が落ちる。頬に伝う涙を手の甲で拭っても、いくらでも溢れてくる。

 アイザックと彼女はいつの間にか姿を消していた。もう、追う気力も意味もない。ただただ一人になれて良かったと思う。



 花壇の茂みに隠れて声を殺して泣く惨めな自分なんて、誰にも見られたくなかったから。 
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