狼男と悪魔祓師

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露台から見える城下は赤い炎に覆われ、熱をはらんだ風が彼の癖のある長い髪を靡かせていた。光をただ反射する瞳には感情はなく、眼下を見ているだけだった。
守るべき民も、臣下、妻も子ももう誰もいない。

誰もいない。
何もない。
一人血濡れのまま佇んでいる自分だけだ。

背後の扉が乱暴に開かれ、兵士が二人なだれ込んできた。

「いたぞ!」
「      !!」

兵士の一人が彼の名を叫び剣を構える。
城下を眺めていた顔を、緩慢な動作で兵士に向けた。

「ば、化け物が……」

先に入ってきた兵士が恐怖に顔を歪めるのが見えた。
銀色の甲冑は炎と返り血、自分の血で赤く染まっている。
背には何本もの矢と槍が、腹と胸には剣が刺さっているが、平然と自分が流す血だまりの中に佇んでいれば、化け物と呼ばれるのも当然だろう。

化け物か……。

胸に刺さる剣を無造作に手をかけ、躊躇なく引き抜き投げ捨てれば、兵士達は露台に現れた時の勢いはなく、驚愕に目を見開き構えた剣先が震えだした。

「あぁ……、まだいたのか……」

かすれた声が漏れる。
兵士達に一歩踏み出す。
二歩目に転がる死体の頭を踏み潰す音に、兵士達は一人は腰を抜かし、もう一人は剣を放り投げ出てきた扉へ走り出した。
彼はまた一歩踏み出す。
歩きながら腹に刺さる剣を抜き、無造作に上げた剣を軽く振り下げれば、腰を抜かした兵は簡単に左肩から右脇へ二つに分かれた。

慈悲がないのなら、同じように返そう。
国も民もすべて壊し、終わりにしよう。
憎悪と復讐だけが心を占めているが、それでよかった。
食いしばる歯の間から、獣の唸り声が漏れた。
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