狼男と悪魔祓師

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昼頃に、探している男性たちが一度戻り、女性たちが用意した昼食を取りまた森へ戻っていく。
参加する人数も増え、広範囲を探しているが、ベニーが拾ってきた靴以上のものは見つからないでいる。
時間だけが過ぎ、太陽は傾き影の色が濃くなり、森の中はいっそう暗くなっていく。
女性たちは不安そうに森を見上げている。
そろそろ探しに出ていた男性たちが戻ってくる時間になるのを、エヴァンとエルマーも彼女たちの後ろに立ち、同じように森を見上げた。

「今日の捜索は、時間的に終わりになってしまいますね……」

エルマーの小さなつぶやきに、エヴァンは何も言うことができなかった。
今の状況では、自分も探すのに参加しても役には立っていなかったろう。ヴィリに言った言葉は、心からのものだったが、空回りしている状態だ。
それから、少しして男たちが戻り始める。
目ぼしい手掛かりは、誰も見つけられなかった。それにオルガーとヤーコブが崩れ落ちるのを、数人が支えて先に村へと帰っていった。
残った男たちへ、女性たちはねぎらいながらホットワインを渡し、男たちはそれを飲み深く息を吐く。
日が落ち、男たちも全員戻ったが、ヴィリだけが戻ってきていない。
遠くで狼の遠吠えが聞こえる。
それからまた違う場所からも。

「……狼が集まってきている?」

何匹もの遠吠えがあちこちから聞こえるのを、残ってた人々は身を寄せ合い、ただ森を見つめることしかできなかった。


ヴィリは太陽が完全に沈んでも、帰ってこなかった。

「私が残りますので、皆さんはお疲れでしょうから、自宅でおやすみください」

エルマーには申し訳ないが、村人の世話を任せるような形であるが、彼は気遣わしそうにしたが、村人たちを連れ、村へと戻っていった。
彼らの背を見送り、今日もまたポーチに一人、椅子に座り彼を待つことにした。
村人がランタンを一つ、帰り道で使ってくれたものが、足元を淡く照らしてくれている。
狼の遠吠えはまだ聞こえる。
たまに吹く風に揺れる葉ずれの音と、遠吠え以外は静かだ。
揺らめくランタンの明かりを眺め、深く思考していく。

落ち葉を踏む音が、小屋のすぐ近くに聞こえ、エヴァンは驚き立ち上がった。
人間の足音ではなく、獣の立てる足音に今まで感じなかった恐怖が、背を駆け上がった。
人外のものなら対応方法は心得ているが、狼なら何もできずに終わってしまう。
何か武器は、逃げる方法はと視線を巡らすが、足音はもうそこまで近づいていた。
たんと音をたて、ランタンの明かりに照らされポーチに上がってきたのは、黒毛に白い毛が少し混ざった犬だった。

「ベニー!あぁ、驚かさないでくれ、もう私は……」

見知った犬に、力が抜けその場に膝を落とした。
ベニーが顔を寄せてくるのを、頭を撫でて気持ちを落ち着かせる。

「あなたの主人はいつ帰ってくるのでしょうね?もう夜も更けたというのに、大丈夫でしょうか……」

頭から、首、背、腹と撫でると、嬉しそうにしっぽを振っている。
その様子に目を細めていると、今までとは違う、近くで遠吠えが聞こえ、身体が強張る。ベニーがエヴァンを心配するように身体を横につけ、座り込んだ。
近くといってもまだ森の中だったが、今まではもっと森の奥からだったのに、どうして。
座っていたベニーが立ち上がり、外を気にし始めると、遠くから足音が聞こえた。
人間の足音に、張りつめていた気持ちが緩み、強張っていた身体からも力が抜けた。

「アディ司祭?まだいたのか」
「貴方が一人森に入っているのを放って帰ることなんてできません。何もありませんでしたか?近くで狼の遠吠えがしましたが」

ベニーがヴィリの足にまとわりつくのを、頭を撫でながらポーチに上がった。

「狼は問題ない。問題はまだ二人が見つからないことだ……」

ヴィリに椅子を進め、準備してあった食事を渡し、エヴァンは向かいの椅子に座る。
ベニーはヴィリの足元に座り、ちぎってもらった肉を食べている。


「食べ終わったら教会まで送ろう、今の時間は村まで一本道でも危ない」
「帰りません」

渡されたコーヒーのカップを受けとる表情は、少し眉根が寄っていた。

コーヒーを一口飲み、一度深く息を吐く。

「残ってどうする?もう寝るだけだ。あんたはここに何しに来たんだ?これは関係ない……、見過ごせないんだったな」

今度は溜息を吐かれた。

「……あー、ベッドは使ってくれ、俺は今日はここにいる」
「え?いえ、私ではなくあなたがベッドで寝てください」
「俺は慣れてるからいいけど、あんたは一晩椅子でなんて無理だろ」
「しかし!」
「問答は無用だ。ベッドで寝てくれ、俺が心配で寝れなくなる」

そう言われて固辞することができず、黙ることしかできなかった。
飲み終わったカップを丸太の上に置き、小屋の出入り口の扉を開け、中に入るように促されては、従うしかなかった。
小屋の中は一部屋しかなく、小さいキッチンに、小さいテーブルに椅子は一脚だけ。あとはベッドがあるだけだ。

「服を掛けるのはないから、それは椅子にでも掛けてくれ。じゃぁ、おやすみ」

音もなく扉は閉められ、エヴァンは一人残された部屋で迷ったが、ヴィリの言っている通りなのもわかっている。
カソックを脱ぎ、椅子の背に掛け、彼の匂いがするベッドへ潜りこんだ。
普段なら他人の使っているベッドで寝るのは無理なのだが、そんなことを思う間もなくすぐに眠りについていた。
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