神の加護が支配する世界で、俺だけが理から外れていた ~将来を誓った君を思い出したのは、遅すぎた~

ゆきみかん

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第1章

第4話 知らない世界

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 知らない世界。
 そう言葉にした途端、目の前の景色が嘘じゃなくなる。

「なんだよ……この植物……」

 思わず、樹齢何百年はいってそうな木の幹に触れた。

 そして、あらためて周りを見ても、見なれない花や何かの果物のような物も見えた。

 だが、一つだけ近くに人工物らしき家屋が視界に入った。
 この滝つぼから遠くなく、まるで滝を管理する家であるかのように、ポツンと立っていた。

「人は――いなさそうだな……」

 あまりにも傷んでいるのが、この距離からでわかる。
 それに家というには小さく、物置小屋の方が正しいかもしれない。

「望みは低そうだけど、調べてみるしかないか……」

 歩く。
 木々の匂い、滝の音を体に受けながら、そして考えてしまう。

 自分は実は死んでしまったのではないのかと――

「そんな、訳はないか……生きてるもんな」

 自分の鼓動、感覚、全てが、俺は生きてると体に訴えている。

「まだ、神隠しの方が理解できるよ」

 異世界転移って……。
 思わず、咲雪が読む本を思い出してしまう。

「はぁ」

 まだ、そうと決まったわけじゃない。
 だが他に説明もできない。
 混乱と不安、とにかく落ち着いて考えたかった。

「これから――っ!」

 パキッ。
 俺の足音じゃない。

 近づく気配に、とっさに刀の柄に手を伸ばした。

 だが、刀も抜けず固まってしまう。
 なにせ、体長2メートルくらいに届く――

「イノ……シシ?」

 緊張と同時に疑問を呟いてしまった。
 なぜなら、普通では見たことのないほどの発達した牙。
 そして、逞しい四肢。

 サーベルタイガー?
 図鑑で見た記憶が呼び起こされるほど、異様に発達した牙だった。

 イノシシもどきが、こちらに気付いたようだ。
 イノシシは雑食のはずだが、あの様子では肉食がメインだろう。

 こちらを捕食対象として見ているであろう、あの眼。
 それに負けずと、刀の柄に手をかけたまま睨み返す。
 不思議と恐怖は感じなかった。
 なぜなら――

 その程度、あの人と比べたらどうってことない!

 格下に威嚇されたと感じたのか、イノシシもどきが突進してくる。
 あの分厚い皮膚、正面から刃を立てても通りそうにない。
 側面の薄いところを狙うのと同時に、突進を回避するべく横に跳ぶ。

「なっ――!」

 跳びすぎたのだ。
 確かに力を込めて跳躍したのだが、軽く3メートルは超えていた。

 目測を誤り、木にぶつかってしまったのだ。
 イノシシもどきが突然視界から消えた俺を探している。

「いっ」

 体の違和感。
 自分の体なのに長年の染みついた足の動き。
 まるで力の出し方を忘れてしまったかのようだ。

 こちらに、イノシシもどきが気付き突進して来ていた。

 崩していた姿勢を慌てて整えた。
 回避は間に合わない。
 迎え討つべく一か八かで刀を一閃、抜き放つ――

「――え?」

 手ごたえはあった。
 切った感触も手に残ってる。

「うそだろ……」

 体長2メートルもある巨体が横一線に、分かれていたのだから。
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