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THREEPARTS 3/2
18話
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「悠生、ファイル直せ。簡単な事件じゃない。現場を可能な限りそのまま維持するんだ」
丹波が鋼に指示し、現場にバリアを張らせる。
「悠生、出るぞ」
悠生は返事をしない。
「おい!行くぞ!」
悠生は返事をしない。
丹波が悠生の耳元まで行き、思いっきり叫ぶ。
「悠生!」
悠生がはっと我に返る。
「...ごめん。ちょっと周り見えてなかった」
「この現場は捜査のプロに任せるやつだ。さっさと出るぞ」
「...ああ」
悠生は肩を落とし、部屋を出る二人についてそのまま家を出た。
外に出ると、警察が到着していた。
「こんにちは。中の状態は可能な限り維持されてます。俺ら以外はたぶん誰もいません。このバカ(悠生)が本棚のファイル一個開いてみてましたが、損傷などは起こしてないので大丈夫かと思います」
「お疲れ様です」
警官が敬礼する。
真美から何か聞いているのだろうか。
「俺たちのすることって何かありますか」
「いえ、あとはこちらで処理します」
「わかりました。一応俺らの名前と連絡先の控えを」
「ありがとうございます」
警官は三人の連絡先を描いたメモを受け取る。
「よし、帰るぞ」
丹波が歩き出した。
めんどくさそうな鋼と、地面を見つめる悠生を連れて。
「ただいま」
三人が交番に帰る。
「悠生、元気ないな」
「うん...」
「死体は苦手か?」
「いや...」
真美は悠生のほうに向き、歩み寄る。
「なんか嫌なもんでも見たか?」
「...母さんは死んでたの?」
「...見たのか」
「雲仙さんはどう関わってるの」
「...被害者の名前、覚えてるか?」
「司馬」
よこから丹波が口をはさむ。
「司馬司か...私の警官時代の後輩だ」
「どんな人だったの」
「よくも悪くも正義感に染まったやつだった」
司馬は五年前に警察を辞めた。
警察組織の腐敗を受けてのことだった。
ある事件で事件の隠ぺいを目の当たりにし、幼少より憧れの的として目指してきた警察の腐りっぷりに失望した。
その事件ではある警官が事件を起こし、その警官が組織内部で重要な立ち位置であったことから外部に漏れることのないよう隠された。
「その警官って...」
悠生が尋ねる。
「雲仙だろうな。奴がいないと当時はこの町の治安なんぞ守るどころか組織の存続も怪しかった」
真美は続きを話し始める。
その事実を知る司馬は警察を辞め、警察内部の事情を知るものとして雑誌のコラムを書いて何とか生計を立てる傍らで気になった事件などを独自に調査するジャーナリストとして活動していた。
「...でも雲仙さんは死んだでしょ?なんで今更その事件を知ってるだけの司馬さんが...」
「あいつの家にあるファイルは”爆弾”なんだ」
「”爆弾”...?」
「あいつの家のファイルの山を見たんだろ。あそこにあるファイルはその9割が警察が世に流されたくない冤罪・もみ消しだ。世に出る前にアイツ自身を殺そうとするやつはいくらでもいる。これ以上知られたくないことがあるやつもいるんだろう」
「そんな...」
「悠生」
真美が悠生の名前を呼ぶ。
「世の中っていうのはお前が思ってるほどきれいにできてないんだ。自分の及ばない範囲のことってのはあきらめて生きるのも一つの賢さだ」
「そんな...」
悠生が震える。
「そんならしくないこと言わないでよ...」
悠生が視線を背ける。
「私だってどうしようもない状況は...何とか変えようともがいたこともあったさ。ただどうにもならない、抗っちゃいけない状況ってのはいくつも出てくる」
「真美ちゃんの口からそんなの聞きたくないよ」
いつもの悠生からは想像できない弱った顔だ。
「聞け」
真美はまっすぐ悠生を見る。
「やだ...」
悠生が震えた声でそう言いながらしゃがみ込む。
「お前がどうやっても抗えない壁にぶちあたったら、どうしても自分の力で抗いきれなかったら」
真美がしゃがみ込み、悠生に語り掛ける。
「そんな時は仲間がいるだろうさ」
真美が悠生をその腕に抱き、ほほ笑んだ。
「母親が死んでた気持ちは、理解してやりたいが私が思ってるよりつらいよな」
こくり、と悠生がうなずく。
「ただお前を置いてこの世を去る母親の無念は痛いほどわかる。たった数か月だけで母親面するのもおかしいが、それなりに愛着があるんだ。助けが必要なら、私がいるから。大丈夫。大丈夫」
「うう...ああ...」
嗚咽を漏らす悠生。
「よしよし。5年間辛かっただろ。私に甘えていいんだ。私の前ではすっきりするまで泣いていいんだ」
真美は丹波と鋼に目を合わせ、アイコンタクトで外に出るよう指示する。
「ほら、しゃがんだまんまじゃ足が疲れるだろ。奥の座敷あがんな」
悠生を立たせ、座敷まで連れていく。
そのまま座敷に座らせる。
しばらく座敷に二人きりの時間が流れた。
丹波がこっそりと交番を覗く。
すると、そこには真美の膝枕の上でない疲れてすやすやと眠る悠生と背筋を伸ばしたまま眠る真美の姿があった。
「鋼」
「ん?」
「今日はもう帰ろう」
「肝心なものは身近にあるのかもね」
「間違いねえ」
丹波が鋼に指示し、現場にバリアを張らせる。
「悠生、出るぞ」
悠生は返事をしない。
「おい!行くぞ!」
悠生は返事をしない。
丹波が悠生の耳元まで行き、思いっきり叫ぶ。
「悠生!」
悠生がはっと我に返る。
「...ごめん。ちょっと周り見えてなかった」
「この現場は捜査のプロに任せるやつだ。さっさと出るぞ」
「...ああ」
悠生は肩を落とし、部屋を出る二人についてそのまま家を出た。
外に出ると、警察が到着していた。
「こんにちは。中の状態は可能な限り維持されてます。俺ら以外はたぶん誰もいません。このバカ(悠生)が本棚のファイル一個開いてみてましたが、損傷などは起こしてないので大丈夫かと思います」
「お疲れ様です」
警官が敬礼する。
真美から何か聞いているのだろうか。
「俺たちのすることって何かありますか」
「いえ、あとはこちらで処理します」
「わかりました。一応俺らの名前と連絡先の控えを」
「ありがとうございます」
警官は三人の連絡先を描いたメモを受け取る。
「よし、帰るぞ」
丹波が歩き出した。
めんどくさそうな鋼と、地面を見つめる悠生を連れて。
「ただいま」
三人が交番に帰る。
「悠生、元気ないな」
「うん...」
「死体は苦手か?」
「いや...」
真美は悠生のほうに向き、歩み寄る。
「なんか嫌なもんでも見たか?」
「...母さんは死んでたの?」
「...見たのか」
「雲仙さんはどう関わってるの」
「...被害者の名前、覚えてるか?」
「司馬」
よこから丹波が口をはさむ。
「司馬司か...私の警官時代の後輩だ」
「どんな人だったの」
「よくも悪くも正義感に染まったやつだった」
司馬は五年前に警察を辞めた。
警察組織の腐敗を受けてのことだった。
ある事件で事件の隠ぺいを目の当たりにし、幼少より憧れの的として目指してきた警察の腐りっぷりに失望した。
その事件ではある警官が事件を起こし、その警官が組織内部で重要な立ち位置であったことから外部に漏れることのないよう隠された。
「その警官って...」
悠生が尋ねる。
「雲仙だろうな。奴がいないと当時はこの町の治安なんぞ守るどころか組織の存続も怪しかった」
真美は続きを話し始める。
その事実を知る司馬は警察を辞め、警察内部の事情を知るものとして雑誌のコラムを書いて何とか生計を立てる傍らで気になった事件などを独自に調査するジャーナリストとして活動していた。
「...でも雲仙さんは死んだでしょ?なんで今更その事件を知ってるだけの司馬さんが...」
「あいつの家にあるファイルは”爆弾”なんだ」
「”爆弾”...?」
「あいつの家のファイルの山を見たんだろ。あそこにあるファイルはその9割が警察が世に流されたくない冤罪・もみ消しだ。世に出る前にアイツ自身を殺そうとするやつはいくらでもいる。これ以上知られたくないことがあるやつもいるんだろう」
「そんな...」
「悠生」
真美が悠生の名前を呼ぶ。
「世の中っていうのはお前が思ってるほどきれいにできてないんだ。自分の及ばない範囲のことってのはあきらめて生きるのも一つの賢さだ」
「そんな...」
悠生が震える。
「そんならしくないこと言わないでよ...」
悠生が視線を背ける。
「私だってどうしようもない状況は...何とか変えようともがいたこともあったさ。ただどうにもならない、抗っちゃいけない状況ってのはいくつも出てくる」
「真美ちゃんの口からそんなの聞きたくないよ」
いつもの悠生からは想像できない弱った顔だ。
「聞け」
真美はまっすぐ悠生を見る。
「やだ...」
悠生が震えた声でそう言いながらしゃがみ込む。
「お前がどうやっても抗えない壁にぶちあたったら、どうしても自分の力で抗いきれなかったら」
真美がしゃがみ込み、悠生に語り掛ける。
「そんな時は仲間がいるだろうさ」
真美が悠生をその腕に抱き、ほほ笑んだ。
「母親が死んでた気持ちは、理解してやりたいが私が思ってるよりつらいよな」
こくり、と悠生がうなずく。
「ただお前を置いてこの世を去る母親の無念は痛いほどわかる。たった数か月だけで母親面するのもおかしいが、それなりに愛着があるんだ。助けが必要なら、私がいるから。大丈夫。大丈夫」
「うう...ああ...」
嗚咽を漏らす悠生。
「よしよし。5年間辛かっただろ。私に甘えていいんだ。私の前ではすっきりするまで泣いていいんだ」
真美は丹波と鋼に目を合わせ、アイコンタクトで外に出るよう指示する。
「ほら、しゃがんだまんまじゃ足が疲れるだろ。奥の座敷あがんな」
悠生を立たせ、座敷まで連れていく。
そのまま座敷に座らせる。
しばらく座敷に二人きりの時間が流れた。
丹波がこっそりと交番を覗く。
すると、そこには真美の膝枕の上でない疲れてすやすやと眠る悠生と背筋を伸ばしたまま眠る真美の姿があった。
「鋼」
「ん?」
「今日はもう帰ろう」
「肝心なものは身近にあるのかもね」
「間違いねえ」
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