THREE PARTS 3/2

滝永ひろ

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THREEPARTS 3/2

17話

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「真~~~美ちゃん、あそぼ」

木曜午後5時。

学校を終えた三人組が交番をのぞき込む。

「勤務中だバカタレ」

真美は書類を眺めている。

「じゃあ居ていい?」

「なんも面白いもんはねーぞ」

「ん」

三人は交番の中に入る。

「あの...道...わからなくて...」

おばあさんが交番をのぞきこんでいる。

「丹波、教えてやって」

「ういうい」

丹波がいつものことのように机の中から地図を出し、それを指し示して道を教える。

「ありがとうねえ、見た目は怖いけど、やさしい子だぁ」

「いえいえ、人殴ってばっかですよ」

「うんにゃ、あんたはいい子だよ」

おばあさんは去っていった。

「なんだあのばあさん...」

丹波がふりかえってつぶやく。

「爺さん婆さんなんてみんなそんなもんだよ。年を取れば人を見る目もつくんだろ。つーかお前ら座れ」

真美の座る椅子に並んだほかの3席に着いた。

「真美ちゃんって普段何の仕事してんの?」

悠生が聞く。

「ああ?誰が税金泥棒だって?」

「言ってねえよ。あんま仕事してるときに会わないなと思って」

「あぁ...何してるって、通報受けて喧嘩の仲裁とか不審者情報があったときには見回って警備強化とか...」

ここでいう喧嘩の仲裁とは和解ではなく喧嘩両成敗であり、見回りとはパトロールではなく追跡である。

真美のもとに何か通報があると必ず何かしら成果を上げてしまう。

運動・頭脳・戦闘にここまで長けていれば当然ともいえる。

「お前らもやってみる?一日警察官」

「やる!」

「やってもいいぞ」

「二人がやるならやる...」

「よし、お前らは三人で一人前だ。はぐれることのないように。いざとなったら私が遠隔で指示を...えっと...」

机の引き出しをガサゴソと漁り、やっとインカムのようなものを取り出す。

「このインカムから出す。一個しかないから誰につけようかな...」

「俺つける!」

悠生が手を挙げる。

「丹波、よろしく」

「ん」

丹波がインカムを受け取る。

「操作はここをこうで...」

「理解した」

「よし」

悠生が手を挙げたまま固まっている。

「じゃあ交番内の掃除をやってくれるひと~」

悠生が手を下げる。

「チッ」

そこに電話がかかってくる。

真美が受話器を取る。

「はい。ああ、はい。わかりました。うちのちびども向かわせるので。ああ、大丈夫です。私より頼りになりますから。え?いやあ、そんなことないですよ。はい。はい。はーい」

「おい、近くで殺人事件起きたから行ってこい。指示は出すから。はい、いってこい」

何よりそんな重大なことを任せてしまうことに驚くしかないが、殺人事件の連絡をあんな軽いテンションで返すことに驚きである。

「常識どうなってんだアンタ...」

丹波がつぶやく。

「やるっつったならやれよ~。私に楽させてくれるんだろ?」

「そんなこと一言も言ってない...」

「悠生?ちょっと組手でもする?ちょっと調子悪くて手加減できないけど」

「行ってきまーす」

「よろしい。鋼...」

「行く」

「言い争うのすら面倒か」

三人は交番を出た。

「よし、動くなよ」

悠生が構えると、目にもとまらぬスピードで動き出した。

鋼が丹波に聞く。

「これ...どうなってんの?」

「おそらく空間内の一点の座標から自分への距離を0にするのを繰り返して連続で疑似的な瞬間移動をしているんだろう。悠生と俺たちの距離を一定に保てば運搬できるってことだ。連発できるエナジーもだが、器用にカーブまでやってんのが恐ろしい」

「ふーん」

「ついたぞ」

会話が2ラリーしたところで通報があった民家についた。

「強盗だとさ。中に遺体がある。とりあえず付近の交通整備と現場の現状維持、やり方は指示する...っておい、聞いてるか?」

悠生が遠くを見つめている。

「鋼、交通整備頼んだ」

消えた。

またあの疑似瞬間移動でどこかに飛んで行ったのだろう。

「...鋼、俺は現場の維持に行く。お前はとりあえず近寄れないように道にこのテープ張って封鎖して」

「わかった」

「ただいま」

悠生が返ってきた。

左腕に男を抱え、右手に血の付いたナイフを持っている。

「ようぎしゃのおとおりだ~っと」

丹波が頭を抱える。

「真美さん、聞こえる?」

丹波がインカムの通話ボタンを押し、真美に話しかける。

『なんだ、問題でも起こったか?』

「...悠生が犯人と思しき男を捕まえてきた...アイツは...ったく」

『あ~、お疲れ。その感じだと現場維持はまだだろ?鋼のバリアで大きく覆っとけばいいから。本部の人が到着するまで待ってて。男は...まあ引き止めといてくれ』

「わかった。...っておい悠生!男のバッグあさんな...わかった手袋!手袋付けろ!」

悠生が男のバッグをごそごそと漁っている。

ずいっ、とバッグから何かを取り出した。

その手にはしっかり白い手袋がされている。

その手に握られていたのは財布と通帳。

悠生が財布を開く。

その中に免許証を見つける。

男のもののようだ。

証拠にはならない。

悠生は通帳が気になるようだ。

書かれている名前のうち、苗字を強盗の入った家の表札と照らし合わせる。

「おんなじだ」

この家から男が盗み出したものとみていいだろう。

「捕まえとくね。逃げてもいいけど、さっきみたいにすぐ捕まえるから」

「...はっ、はい」

完璧に服従した。

鋼のバリアで覆われ、バリアから外に出られない。

「家あがるぞ。死体...はお前ら驚かねえな。現場汚すわけにはいかねえから、靴のカバー。ほれ」

丹波が靴カバーを渡し、家のドアを開ける。

カバーを付け、家に上がる。

「玄関もふさいどけ。一応な」

家の奥へ進む。

「現場は前に見える扉の向こうにあるリビングだ。殺傷らしい」

丹波がすたすたと扉を開け、合掌してから部屋に入る。

中を見ると、男性の遺体が痛々しくも床に横たわっていた。

それよりも丹波の、それ以上に悠生の目を強く引いたのは壁付けの本棚いっぱいの事件捜査資料と壁に掛けられた警察服だった。

「警察関係者...?でも...」

現役の警察であれば強盗の侵入を許すどころか自室内で強盗に殺されるなんてそうそうありえた話ではないだろう。

悠生が思わずその一つを手に取る。

ファイルの背表紙には5年前の日付が書かれている。

「5年...」

悠生の母親が消えたのは、

「あれも5年前...」

日付も母親が消えた時期と被ることから、そのファイルだけが気になってしまう。

「悠生、事件現場のものにあまり触れるな」

丹波はファイルを開く。

「おい、現場の維持...」

ページをめくる手を止めない。

「おい、いい加減に...」

「あった」

悠生が一つの写真を見つめる。

雨の中の港にて、建物の陰に隠れて盗撮した写真のようだ。

遠くに移った3つの人影がだれか判別する術はない。

うち一つは地面に倒れている。

立っている残りの二人のうち、片方は傘をさしており、片方は傘をささずに何やら笑っているようだ。

倒れている人から注線を引いて名前が書かれている。

『穂高涼子』

悠生の母親の名だ。

傘をさした男の名前も書かれている。

『新田雲仙』

「母さん...雲仙さん...?」

同時に丹波が気づく。

「おかしい...本当に強盗殺人か?」
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