銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「フィー、どうした?」
「…目にゴミが入ったみたい。でももう大丈夫だよ」
「そうか?」
「うん。早く先に進もう」

 僕は泣いてることに気づかれないように、ロロの横腹を蹴って前に進んだ。
 リアムが横に並ぶ前に素早く涙を拭いて顔を上げる。
 リアムはしばらく心配そうに僕の隣に馬を並べていたけど、遠くに森が見えると手綱を握り直して背筋を伸ばした。

「あの森を抜けないとトルーキル国へと繋がる道に行けない。だがあそこには魔物が出る。フィー、俺の傍を離れるなよ。無茶はするな」
「わかった」

 僕が頷くとリアムも頷き返した。そして凛とした表情で僕の前に出た。
 僕はリアムの後に続きながら、右掌に白い光の玉を作る。
 うん、大丈夫。ちゃんと魔法を使える。ここしばらく使ってなかったから心配だったけど、自分の身くらいは守れる。
 僕は右手を固く握ると、少し離れてしまったリアムの後を追いかけた。


 高い木々に覆われた森は昼間でも暗かった。確かイヴァル帝国にもこんな森があるということを話に聞いてはいたけど。本当にいつ魔物が出てきてもおかしくないくらいに怖いと思う。普通の人なら。でも何も持っていない僕は、怖いとは思わない。命を狙われ過ぎて怖いという感情はとっくの昔に消えている。
 なのにリアムが、辺りを警戒しながら何度も僕に大丈夫だと言う。俺が守るから怖がらなくてもいいと。あまりにも心配してくれるから僕はつい「怖くないよ」と言ってしまった。
 その瞬間、リアムが勢いよく振り向いた。

「フィー、俺を安心させようとしてるんだな。いいんだぞ、怖い時は怖いと言って。魔物が出たら必ず俺を呼ぶんだぞ」
「…僕は剣も魔法も使える。魔物とは戦ったことがないけど多少は大丈夫だと思う」
「フィー!頼むから危険に身を晒すな。俺に守られてくれ!」
「うん…」

 リアムがとても真剣な顔で言うから、渋々小さく頷く。
 でもねリアム、命懸けで僕を守ろうとしても危険はすり抜けて僕に届くんだよ。ラズールはいつも命懸けで僕を守ってくれた。それでも僕は数度、命を落としかけた。運命に抗って、思いがけずリアムに助けられてここまで生きてきたけど、本来なら生まれた直後に消える命だったんだよ。そんな僕を守ると言ってくれたリアムこそ生きて欲しい。だからね、僕が命懸けでリアムを守るよ。僕の運命はきっと変えられない。でもリアムはこの先も広い世界を見て輝いて欲しい。
 僕はリアムと出会えたことに感謝する。リアムは僕の初めての友達だよ。もし離れることになっても僕のことを覚えていて欲しい。
 リアムの広い背中を見つめながら願う。
 あと少しだけリアムと旅がしたいという欲を持ってしまっていたけど叶わない。今度こそ僕はこの森で死ぬだろう。
 今まで感じたことのない胸の痛みに気づいて、そっと息を吐いた。その時、どこからか恐ろしい咆哮が聞こえてきた。
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