銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 リアムに抱かれた肩が痛い。リアムの手に力が入り、肩に指がくい込んで痛い。
 僕はリアムの胸に手を触れて、紫の瞳を見上げて話し続ける。

「私は病弱で伏せってばかりでしたので、フィルと遊んだ記憶がありません。私の身代わりをしているせいで、危険な目や寂しい思いをしていたフィルに、ずっと申し訳なく思っていました。母上はフィルに冷たかったけど、私はフィルに幸せになって欲しかった…」
「フィー…なぜそのような言い方をする」
 
 リアムが悲しそうな顔で僕を見る。
 リアムの紫の瞳に映る僕は、どんな顔をしているだろうか。愛しい目で見つめてはいないだろうか。リアムに触れていると、そこから熱が拡がって身体が熱くなって困る。
 だから僕はリアムに触れていた左手を離そうとした。
 しかしその手をリアムに握られてしまう。

「はなして…ください」
「嫌だ」
「私は、フィルではありません」
「ではフィーはどこにいる」
「…死んだのは、私ではなくフィーです。あの子は…死にました」
「はっ!」

 リアムが僕の腕を強く引いたために、僕はリアムの胸へと倒れた。

「隣国の王子っ、すぐに女王から離れてくっ…」
「ラズールいいから。静かにしてて」
「……かしこまりました」

 ラズールがリアムの肩を掴もうと伸ばした手を止めた。
 臣下が王族に失礼なことをしては罰せられてしまう。特に他国の王族にそんなことをしては、争いの元になってしまう。
 それに僕は今、フェリのフリをしてるのに、こうやって触れられていることが嬉しいんだ。ダメだけどすごく嬉しいんだ。
 リアムが僕の髪に触れながら聞く。

「わかった。そこまで言うならこの茶番につき合ってやる。では女王様、フィーが死んだと言うなら、なぜ死んだのだ?理由を教えてくれないか」
「フィルは…病で死にかけていた私のために、自らの命を私にくれたのです」
「どうやって?」
「自分の心臓を剣で貫いて…血を私に飲ませたのです…」

 僕はリアムの反応を見るのが怖くて、顔を伏せたまま嘘をついた。
 頭の上で、リアムが大きな溜息をつく。
 ああ、とうとう愛想をつかしたのかな。僕を捜しに来てくれたのに、リアムを騙そうとしている僕のこと、もう面倒臭くなったのかな。悲しいけど、それでいい。リアムは僕のことは忘れて、国に戻って優しい人を選んで欲しい。周りから愛されて育った優しい人を。
 自分で考えたことに悲しくなって、泣きそうになる。
 その時、いきなりリアムが僕の左腕を持ち上げて袖をめくった。
 
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