銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 話をいったん止めて、グラスに残っていた酒を飲み干す。
 伯父上もグラスを傾けながら、黙って話の続きを待っている。
 俺は唇についた雫を拭って口を開いた。

「顔を見た途端に、全身が震えた。なんとしてもこの人を手に入れたいって思った」
「ほほう、惚れたのか」
「うん…そう。一目惚れだ。その人の名はフィルと言う。とても美しくて可愛いんだよ。それに…輝くような銀色の髪をしている」
「なに?灰色に近い銀髪の者は市中にもたまにいる。しかし輝くような銀髪となると…王族の血縁者か?」
「まあ先を急ぐなよ。ちゃんと話すから。俺はフィーを手に入れたくて、その場で妻にすると決めたし言った」

 伯父上の眉間にシワが寄る。
 俺がイタズラや何かをしでかした時によく浮かべていた表情だ。
 俺は拗ねたように伯父上を睨む。

「…なんだよ、その顔は」
「だっておまえ…その人…フィルさんか。フィルさんにいきなり妻にするって言ったのか」
「言った。フィーは兵に殺されるつもりだった。ということは生きる気力を無くしてたってことだ。それなら俺が傍にいて、フィーに楽しいことや幸せな思いをさせてやりたいと思ったんだ」
「なるほど…。おまえのその前向きな思考は、父親譲りだな」
「やめろよ。父上に似てると言われても嬉しくない」
「後ろ向きな思考になるよりは良いことだぞ。特に人の上に立つ者としては大事なことだ」
「そうかな」

 伯父上に褒められて、俺は照れ笑いをする。
 伯父上のような人が、血縁にいてよかった。
 俺はいずれ、王位第二継承権を辞退して、伯父上の跡を継ぎたいと思っていた。母上が育ったこの土地を、俺の手で守りたいと思っていた。ここでフィーと暮らせたらどんなに幸せだろう。フィーが隣にいてほしい。フィーと共にこの土地で暮らしたい。できるなら領地の端に小さな家を建てて二人で暮らしたい。
 小さな家の前で笑顔で手を振るフィーを想像して、思わず俺の顔が緩んでしまう。
 伯父上に「それでどうした?」と促されて、慌てて咳払いをする。

「その日から、俺とフィーは二人で旅をすることになった」
「フィルさんは納得してついて来てくれたのか?」
「いや、逃げ出しそうだったから、ずっと離さず傍にいた」
「待て…フィルさんは今どうしてるのだ。おまえの話を聞いていたら心配になってきた」
「だから話の先を急ぐなって。大丈夫だから。最初は嫌が……戸惑ってたフィーも、今じゃ俺のことを愛してくれている」
「待て!それはそれで大変な話ではないかっ!早くフィルさんをここへ連れてきなさいっ」
「今はムリだ。フィーはイヴァル帝国に戻っている」
「戻った?大丈夫なのか?フィルさんはイヴァルの兵に襲われていたのだろう?」
「今は大丈夫だ。だから王が代わったと言っただろう」
「そうか…そうだったな。そのことだが、なぜ交代したのだ?イヴァルの女王は、アリスと歳が近くてまだまだこれからの方だと思っていたのだが…病に臥されているのか?」
「伯父上、今からの内容は内密に頼む」
「わかった」

 伯父上が深く頷く。
 俺は少しだけ伯父上に身体を寄せた。
 

 
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