138 / 451
15
しおりを挟む
夕餉を食べて風呂に入り、丈の長い軍服の上着を着る。
王都を守る兵が着る軍服は青色だが、王都以外の領地に所属する兵の軍服は全て黒色に統一されている。
青色の軍服を着る者は全てにおいて優れているとされ、羨望の的だ。そのせいか横柄な態度をとる勘違い野郎もいて、俺は好きではない。
上着に巻いたベルトに剣を差し、必要な物が入った袋を持って部屋を出た。石畳の廊下にブーツの底が当たる音が響く。
階段を降りると向こう側に大きな正面扉が見える。しかしその扉へは向かわずに、横へ逸れて小さな扉から外へ出た。そして厩舎へ行こうとして、向こう側から馬を引いた数人が近づいてくるのに気づいて足を止めた。
「ほほう、おまえは何を着ても似合うな」
「まあな。伯父上だってそうだろう」
「ははっ!俺はもう歳だから似合わん。リアム、くれぐれも気をつけてな」
「ああ。ゼノとジルと共に帰ってきたら、一度王城に戻るよ。父上と会うのは気が進まないけどさ」
「そうだな。それに最近は第一王妃の親族が何かにつけて口出しをしていると話に聞く。おまえがしばらく王城にいて、牽制した方がいい」
俺は愛馬の首を撫でながら、小さく息を吐く。
次期王は兄上と決まっているのに、兄上の後見者となる第一王妃の血縁の者達の動きが本当にうっとうしい。この際、父上に会った時に王位継承権を返上すると言ってしまおうか。しかしフィーの代わりとなる銀髪の女を見つけられなかった場合は、イヴァル帝国の女王としてのフィーに、結婚を申し込むかもしれない。そうなると王位継承権を持っていることが重要になるかもしれない。
「めんどくさいことだな」
俺は小さく呟くと、つややかな黒毛の愛馬にまたがった。
「では伯父上、行ってくる」
「ああ。急がなくていいから気をつけて行け。村について何事もなければそれでいい。だがもし危険だと感じたら、すぐに村を離れるんだぞ。ここに戻るのが難しければ、イヴァル帝国へ逃げろ」
「イヴァルへか。俺のことを嫌ってる男が一人いる。そいつが許可するかな」
「おまえ、王城には使者として来たイヴァル帝国の兵が数人残っていると話してただろう。その者らを人質に交渉すればいい」
「あまり卑怯なことはしたくないんだよな」
「いいから、いざという時はそうしてくれ。おまえに何かあれば俺は生きていけないぞ」
「わかったよ。俺の命を一番に考えるから」
「よし。おまえ達、リアムを頼んだぞ」
「かしこまりました」と兵が二人、右手を胸に当てて目を伏せる。
二人とも俺よりも少し年上くらいで、長身で鍛えられた身体つきだ。この城で一番二番に腕の立つ者をつけてくれたのだろう。
俺も彼らに「よろしく頼む」と声をかけると、「おまかせを」と力強く頷いた。
王都を守る兵が着る軍服は青色だが、王都以外の領地に所属する兵の軍服は全て黒色に統一されている。
青色の軍服を着る者は全てにおいて優れているとされ、羨望の的だ。そのせいか横柄な態度をとる勘違い野郎もいて、俺は好きではない。
上着に巻いたベルトに剣を差し、必要な物が入った袋を持って部屋を出た。石畳の廊下にブーツの底が当たる音が響く。
階段を降りると向こう側に大きな正面扉が見える。しかしその扉へは向かわずに、横へ逸れて小さな扉から外へ出た。そして厩舎へ行こうとして、向こう側から馬を引いた数人が近づいてくるのに気づいて足を止めた。
「ほほう、おまえは何を着ても似合うな」
「まあな。伯父上だってそうだろう」
「ははっ!俺はもう歳だから似合わん。リアム、くれぐれも気をつけてな」
「ああ。ゼノとジルと共に帰ってきたら、一度王城に戻るよ。父上と会うのは気が進まないけどさ」
「そうだな。それに最近は第一王妃の親族が何かにつけて口出しをしていると話に聞く。おまえがしばらく王城にいて、牽制した方がいい」
俺は愛馬の首を撫でながら、小さく息を吐く。
次期王は兄上と決まっているのに、兄上の後見者となる第一王妃の血縁の者達の動きが本当にうっとうしい。この際、父上に会った時に王位継承権を返上すると言ってしまおうか。しかしフィーの代わりとなる銀髪の女を見つけられなかった場合は、イヴァル帝国の女王としてのフィーに、結婚を申し込むかもしれない。そうなると王位継承権を持っていることが重要になるかもしれない。
「めんどくさいことだな」
俺は小さく呟くと、つややかな黒毛の愛馬にまたがった。
「では伯父上、行ってくる」
「ああ。急がなくていいから気をつけて行け。村について何事もなければそれでいい。だがもし危険だと感じたら、すぐに村を離れるんだぞ。ここに戻るのが難しければ、イヴァル帝国へ逃げろ」
「イヴァルへか。俺のことを嫌ってる男が一人いる。そいつが許可するかな」
「おまえ、王城には使者として来たイヴァル帝国の兵が数人残っていると話してただろう。その者らを人質に交渉すればいい」
「あまり卑怯なことはしたくないんだよな」
「いいから、いざという時はそうしてくれ。おまえに何かあれば俺は生きていけないぞ」
「わかったよ。俺の命を一番に考えるから」
「よし。おまえ達、リアムを頼んだぞ」
「かしこまりました」と兵が二人、右手を胸に当てて目を伏せる。
二人とも俺よりも少し年上くらいで、長身で鍛えられた身体つきだ。この城で一番二番に腕の立つ者をつけてくれたのだろう。
俺も彼らに「よろしく頼む」と声をかけると、「おまかせを」と力強く頷いた。
1
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【完結】あなたのいない、この異世界で。
Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」
最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。
そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。
亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。
「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」
ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。
彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。
悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。
※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。
ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる