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軍の待機場所に着き辺りを見回す。ラズールに同行する騎士が十数人ほど集まっていた。
結構な人数で行くのだなと驚いていると、身体の大きな騎士達から少し離れた場所に、一人の小柄な騎士がいた。
僕は彼に近づき声をかける。
「やあ。君もラズール……様に同行するの?」
「…え?」
彼の馬なのだろう。美しい栗毛の馬を撫でていた手を止めて、こちらを見た。
遠くからでも幼く見えたが、近くで顔を見るともっと幼い。それに都合よく茶色の髪をしている。
僕は彼に顔を寄せて、彼だけに聞こえる声で話す。
「君、視察とか初めて行くんじゃない?視察って楽に思えるけど、途中に通る森の中で魔物に出会うこともあるし危険だよ?大丈夫?」
「あ…、お、俺っ、本当は行く予定じゃなかったんです。ラズール様に同行する人はいつも決まってて…。その内の一人が訓練中に怪我をしてしまって、代わりに俺が行くことになったんです。でも俺…軍隊に入ったばかりで…。それに今、母さんが病で寝込んでるから王都を離れたくない…。あ、こんな情けないことを言ってしまってすいませんっ」
興奮したのか声が大きい。
僕は彼の口を慌てて塞いで、怖がらせないように目を細めて頷いた。
驚いて見開いた彼の目が青色だけど、大丈夫だろう。
「静かに。他の人に聞こえちゃう。大丈夫、情けなくないよ。家族を心配するのは当たり前だ。君はここに残っていいよ。代わりに僕が行くから」
「えっ、でも…」
「実はラズール……様と一緒に視察に行きたいんだ。だからお願い。代わってください」
僕は小さく頭を下げた。
彼が慌てて僕の肩を掴み「いいの?」と覗き込んでくる。いいも何も、こちらは嘘をついて代わろうとしているのだ。素直な彼の反応に、少し心が痛む。
「代わってくれるの?ありがとう。ところで君、何歳なの?」
「俺は十八です。あなたは?」
「へぇ、同じ歳だね。嬉しいな。これからもよろしくね」
「あ、そうなのですね。どちらの隊にいるのですか?」
「……トラビス隊」
「えっ?超エリートじゃないですか!」
「……」
そうだったんだ。まあそうか。トラビスといえば軍隊長だもんな。トラビスの名前しか思いつかなかったから咄嗟に言っちゃったけど、まあいいか。
なんだか目をキラキラとさせてこちらを見つめる彼に、もう一つ頼んでみる。
「君は急にお腹が痛くなったと言っておくから。あとこの馬も貸してくれないかな?大事に乗ると約束する」
「わかりました。いいですよ。この馬は優しいので扱いやすいと思います」
「ありがとう。ところで君の名はなんというの?」
「ネロと言います。あなたは?」
「僕は…」
言いかけたその時、集合の合図がかかった。
僕は栗毛の馬の手綱を持つと、ネロの背中を押した。
「早く中に入って。また帰ってきたら教えるね」
「あ、はい。お気をつけて」
僕が小さく手を振るのを見て、ネロは建物の中へと消えた。
結構な人数で行くのだなと驚いていると、身体の大きな騎士達から少し離れた場所に、一人の小柄な騎士がいた。
僕は彼に近づき声をかける。
「やあ。君もラズール……様に同行するの?」
「…え?」
彼の馬なのだろう。美しい栗毛の馬を撫でていた手を止めて、こちらを見た。
遠くからでも幼く見えたが、近くで顔を見るともっと幼い。それに都合よく茶色の髪をしている。
僕は彼に顔を寄せて、彼だけに聞こえる声で話す。
「君、視察とか初めて行くんじゃない?視察って楽に思えるけど、途中に通る森の中で魔物に出会うこともあるし危険だよ?大丈夫?」
「あ…、お、俺っ、本当は行く予定じゃなかったんです。ラズール様に同行する人はいつも決まってて…。その内の一人が訓練中に怪我をしてしまって、代わりに俺が行くことになったんです。でも俺…軍隊に入ったばかりで…。それに今、母さんが病で寝込んでるから王都を離れたくない…。あ、こんな情けないことを言ってしまってすいませんっ」
興奮したのか声が大きい。
僕は彼の口を慌てて塞いで、怖がらせないように目を細めて頷いた。
驚いて見開いた彼の目が青色だけど、大丈夫だろう。
「静かに。他の人に聞こえちゃう。大丈夫、情けなくないよ。家族を心配するのは当たり前だ。君はここに残っていいよ。代わりに僕が行くから」
「えっ、でも…」
「実はラズール……様と一緒に視察に行きたいんだ。だからお願い。代わってください」
僕は小さく頭を下げた。
彼が慌てて僕の肩を掴み「いいの?」と覗き込んでくる。いいも何も、こちらは嘘をついて代わろうとしているのだ。素直な彼の反応に、少し心が痛む。
「代わってくれるの?ありがとう。ところで君、何歳なの?」
「俺は十八です。あなたは?」
「へぇ、同じ歳だね。嬉しいな。これからもよろしくね」
「あ、そうなのですね。どちらの隊にいるのですか?」
「……トラビス隊」
「えっ?超エリートじゃないですか!」
「……」
そうだったんだ。まあそうか。トラビスといえば軍隊長だもんな。トラビスの名前しか思いつかなかったから咄嗟に言っちゃったけど、まあいいか。
なんだか目をキラキラとさせてこちらを見つめる彼に、もう一つ頼んでみる。
「君は急にお腹が痛くなったと言っておくから。あとこの馬も貸してくれないかな?大事に乗ると約束する」
「わかりました。いいですよ。この馬は優しいので扱いやすいと思います」
「ありがとう。ところで君の名はなんというの?」
「ネロと言います。あなたは?」
「僕は…」
言いかけたその時、集合の合図がかかった。
僕は栗毛の馬の手綱を持つと、ネロの背中を押した。
「早く中に入って。また帰ってきたら教えるね」
「あ、はい。お気をつけて」
僕が小さく手を振るのを見て、ネロは建物の中へと消えた。
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