265 / 451
13
しおりを挟む
ラズールがネロに気づいて険しい表情になる。
「おまえ、ここで何をしている」
「フィルと話してただけだけど?」
「フィル様は体調が悪いのだ。疲れさせるようなことをするな」
「はあ?心配して見に来ちゃいけないのかよ。なあフィル、俺、迷惑だった?」
「そんなことないよ。来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「なら良かった。早く元気になってくれよ?」
「うん」
ネロは僕に笑うと、一瞬ラズールを睨んだ後に顔を背けて出ていった。
しばらくラズールは、ネロが出ていった扉を睨んでいたが、僕が「どうなった?」と聞くと、すぐに僕の前に来た。
「フィル様、起きて大丈夫なのですか?」
「うん、もう大丈夫だよ。ラズールがここまで運んでくれたんだよね」
「はい。白い顔色をしてましたから心配しましたよ」
「思いもよらないことを聞いて驚いたから。大宰相達と話し合ってきたんだろ?どういう意見が出たの?」
ラズールが黙って手を伸ばして、僕の銀髪に触れた。ラズールはよく僕の髪を触るけど、僕を慰めたり元気づける時に触ることが多い気がする。
僕も手を上げると、ラズールの手の上に手を重ねた。
「…僕を、クルト王子の妃に差し出すことに決まった?」
ラズールの手がピクンと跳ねて「まさか!」と大きな声で言う。
「あなたを隣国の王子の妃になどさせません」
「じゃあどうして、そんな辛そうな顔をしてるの?」
「俺が…ですか?」
「してる。他の人が見てもわからないだろうけど、僕はラズールの些細な表情の違いがわかるんだよ」
「フィル様…」
ラズールが今度は泣きそうな顔をする。話し合いの結果、僕にとってよくない意見が出たんだろう。
僕はラズールの手を握りしめた。
「これから僕はどうするって?」
握りしめられた手を見つめて、ラズールがようやく話し出す。
「これから…フィル様は国境に行き、バイロン国のクルト王子と会っていただきます」
「うん、それで?」
「女王として、会っていただきます。直接王子と話して、向こうから断るように仕向けてください」
「そうか…難しいけど何とかやってみるよ」
「フィル様!」
「びっくりした…なに?」
突然大きな声で名前を呼ばれて驚いた。
ラズールが膝をつき、僕を見上げてくる。
「わかってますか?断り方によっては、その場で斬られるかもしれないのですよ!俺が傍にいて全力で守りますが、俺よりクルト王子の方が、あなたと近い位置で話をする。クルト王子が振り抜く剣を、俺は防げないかもしれないっ…」
「そうなったらそれは僕の運命だ。ラズール、怒りでクルト王子を斬らないでよ」
「約束できかねます…」
「そんな顔しないで。斬られないように、上手くやるから」
「はい…」
ラズールが掠れた声で返事をしながら、僕の両手を持ち上げ額にあてた。
「おまえ、ここで何をしている」
「フィルと話してただけだけど?」
「フィル様は体調が悪いのだ。疲れさせるようなことをするな」
「はあ?心配して見に来ちゃいけないのかよ。なあフィル、俺、迷惑だった?」
「そんなことないよ。来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「なら良かった。早く元気になってくれよ?」
「うん」
ネロは僕に笑うと、一瞬ラズールを睨んだ後に顔を背けて出ていった。
しばらくラズールは、ネロが出ていった扉を睨んでいたが、僕が「どうなった?」と聞くと、すぐに僕の前に来た。
「フィル様、起きて大丈夫なのですか?」
「うん、もう大丈夫だよ。ラズールがここまで運んでくれたんだよね」
「はい。白い顔色をしてましたから心配しましたよ」
「思いもよらないことを聞いて驚いたから。大宰相達と話し合ってきたんだろ?どういう意見が出たの?」
ラズールが黙って手を伸ばして、僕の銀髪に触れた。ラズールはよく僕の髪を触るけど、僕を慰めたり元気づける時に触ることが多い気がする。
僕も手を上げると、ラズールの手の上に手を重ねた。
「…僕を、クルト王子の妃に差し出すことに決まった?」
ラズールの手がピクンと跳ねて「まさか!」と大きな声で言う。
「あなたを隣国の王子の妃になどさせません」
「じゃあどうして、そんな辛そうな顔をしてるの?」
「俺が…ですか?」
「してる。他の人が見てもわからないだろうけど、僕はラズールの些細な表情の違いがわかるんだよ」
「フィル様…」
ラズールが今度は泣きそうな顔をする。話し合いの結果、僕にとってよくない意見が出たんだろう。
僕はラズールの手を握りしめた。
「これから僕はどうするって?」
握りしめられた手を見つめて、ラズールがようやく話し出す。
「これから…フィル様は国境に行き、バイロン国のクルト王子と会っていただきます」
「うん、それで?」
「女王として、会っていただきます。直接王子と話して、向こうから断るように仕向けてください」
「そうか…難しいけど何とかやってみるよ」
「フィル様!」
「びっくりした…なに?」
突然大きな声で名前を呼ばれて驚いた。
ラズールが膝をつき、僕を見上げてくる。
「わかってますか?断り方によっては、その場で斬られるかもしれないのですよ!俺が傍にいて全力で守りますが、俺よりクルト王子の方が、あなたと近い位置で話をする。クルト王子が振り抜く剣を、俺は防げないかもしれないっ…」
「そうなったらそれは僕の運命だ。ラズール、怒りでクルト王子を斬らないでよ」
「約束できかねます…」
「そんな顔しないで。斬られないように、上手くやるから」
「はい…」
ラズールが掠れた声で返事をしながら、僕の両手を持ち上げ額にあてた。
12
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【完結】あなたのいない、この異世界で。
Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」
最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。
そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。
亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。
「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」
ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。
彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。
悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。
※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。
ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる