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トラビスが入口へ行き、布を持ち上げる。
外にいたトラビスの家来が、指示を受けて落ちてこないよう布を止め、入口が全開になる。
外の人物に向かってトラビスが頭を下げたために金髪が見えた。
紛れもなくクルト王子だ。僕が捕虜としてバイロン国にいた時に会った顔だ。
「フィル様…あれが?」
「そう。クルト王子だ」
「へぇ…どことなく似ていますね」
ラズールの言葉にドキリとする。
はっきり誰とは言わなかったけど、リアム王子に似ていると言ったのだとわかった。
ラズールはリアム王子のことをよく知ってる口振りで話す。そして好ましく思っていないようだ。それは…やはり…僕が彼のことを…。
「フィル様?大丈夫ですか。入って来られますよ」
「…大丈夫」
大事な時に、ぼんやりと考えごとをしてしまった。今はリアム王子のことじゃなく、目の前のクルト王子のことを考えなくては。
トラビスに案内されてクルト王子が入ってくる。天幕の周りには、連れてきた大勢の兵が控えているのだろう。だけどこちらの要望通り、中にはクルト王子と二人の騎士だけが入ってきた。
クルト王子の後ろに従う一人の騎士を見て、僕は驚いた。彼は…確かゼノという名の、リアム王子に付き従う騎士ではなかったか。
ゼノが僕を見て、微かに頷いたように見えた。
もしかしてリアム王子が、僕のことを心配してゼノを送り込んだ?
どうしてもリアム王子のことを考えて浮かれてしまう気持ちを落ち着かせるために、僕は深呼吸をする。
それを見たラズールが、僕が緊張していると思ったのか、そっと背中を撫でた。
クルト王子が僕の前に来た。そして僕が席を立とうとするのを止めた。
「そのままで。初めてお目にかかる。バイロン国第一王子のクルトです。お会いできて光栄だ。本日は良き返事をいただけると信じている」
優雅な物腰で挨拶をするクルト王子に対して、僕も扇子を下ろして挨拶をする。
「イヴァル帝国の王、フェリと申します。こちらまで出向いていただき、感謝します」
言い終わるや否や、ラズールが僕の右手を持ち上げて扇子で顔を隠そうとする。
別に顔を見られたって、僕とフェリは同じ顔だったのだからとムッとしていると、クルト王子と目が合ったので、仕方なく微笑んだ。
「こちらへ」と僕が隣の椅子を示したけど、クルト王子は「このままで結構」と座らない。ならばと僕も席を立ち、クルト王子と向かい合う形で立った。
「あなたは座っていていいのに。本日は返事をもらったらすぐに帰る。今後については後日、ゆっくりと話し合おう」
「片方が座ったままだと話しづらい。それにすぐには終わりませんから。王子には見せたいものがあります」
「見せたいもの?」
「はい」
ラズールが僕の考えを察して動こうとしたのを、僕は「動くな」と叫んで止めた。
外にいたトラビスの家来が、指示を受けて落ちてこないよう布を止め、入口が全開になる。
外の人物に向かってトラビスが頭を下げたために金髪が見えた。
紛れもなくクルト王子だ。僕が捕虜としてバイロン国にいた時に会った顔だ。
「フィル様…あれが?」
「そう。クルト王子だ」
「へぇ…どことなく似ていますね」
ラズールの言葉にドキリとする。
はっきり誰とは言わなかったけど、リアム王子に似ていると言ったのだとわかった。
ラズールはリアム王子のことをよく知ってる口振りで話す。そして好ましく思っていないようだ。それは…やはり…僕が彼のことを…。
「フィル様?大丈夫ですか。入って来られますよ」
「…大丈夫」
大事な時に、ぼんやりと考えごとをしてしまった。今はリアム王子のことじゃなく、目の前のクルト王子のことを考えなくては。
トラビスに案内されてクルト王子が入ってくる。天幕の周りには、連れてきた大勢の兵が控えているのだろう。だけどこちらの要望通り、中にはクルト王子と二人の騎士だけが入ってきた。
クルト王子の後ろに従う一人の騎士を見て、僕は驚いた。彼は…確かゼノという名の、リアム王子に付き従う騎士ではなかったか。
ゼノが僕を見て、微かに頷いたように見えた。
もしかしてリアム王子が、僕のことを心配してゼノを送り込んだ?
どうしてもリアム王子のことを考えて浮かれてしまう気持ちを落ち着かせるために、僕は深呼吸をする。
それを見たラズールが、僕が緊張していると思ったのか、そっと背中を撫でた。
クルト王子が僕の前に来た。そして僕が席を立とうとするのを止めた。
「そのままで。初めてお目にかかる。バイロン国第一王子のクルトです。お会いできて光栄だ。本日は良き返事をいただけると信じている」
優雅な物腰で挨拶をするクルト王子に対して、僕も扇子を下ろして挨拶をする。
「イヴァル帝国の王、フェリと申します。こちらまで出向いていただき、感謝します」
言い終わるや否や、ラズールが僕の右手を持ち上げて扇子で顔を隠そうとする。
別に顔を見られたって、僕とフェリは同じ顔だったのだからとムッとしていると、クルト王子と目が合ったので、仕方なく微笑んだ。
「こちらへ」と僕が隣の椅子を示したけど、クルト王子は「このままで結構」と座らない。ならばと僕も席を立ち、クルト王子と向かい合う形で立った。
「あなたは座っていていいのに。本日は返事をもらったらすぐに帰る。今後については後日、ゆっくりと話し合おう」
「片方が座ったままだと話しづらい。それにすぐには終わりませんから。王子には見せたいものがあります」
「見せたいもの?」
「はい」
ラズールが僕の考えを察して動こうとしたのを、僕は「動くな」と叫んで止めた。
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