銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ラズールが肩にかけてくれたシャツに袖を通して、急いでボタンを止める。ドレスを足元まで脱がせてもらい、ズボンを履き、上着を着てようやく落ち着いた。
 でも僕の些細な変化にラズールは気づく。

「フィル様、どうかされましたか?」

 僕はゆっくりと振り返る。
 ラズールがドレスを丁寧に畳みながら、小さく首を傾けて僕を見つめている。

「…少し疲れただけ。休みたい。レナード、空いてる天幕ある?」
「ありますが一般兵が使う天幕なので粗末ですよ。どうぞこちらで休んでください」
「でも僕が使ったらレナードはどこで休むの?」
「トラビスの所に行きます。そちらでクルト王子を拘束しているのでしょう?俺も見張ります。ゼノ殿は空いてる天幕に案内しますよ」
「あ…」

 そうだった。後で僕が結界を張りに行こうと思っていたのだった。
  早速出て行こうとするレナードを、僕は慌てて引き止める。

「待って!やっぱりレナードはゼノとここにいて。僕がトラビスの所へ戻るよ。やることがあったんだ」
「よろしいのですか?」

 レナードが心配そうに僕に聞く。
 僕は頷いて、マントを貸してくれるように頼んだ。レナードのマントをはおりフードを被って銀髪を隠す。

「レナード、ゼノのことを頼んだよ。ゼノ、この先どうするかを決めて、また後で来るよ。それまで休んでて」
「承知致しました。どうぞ、クルト王子には油断されませんよう…」
「うん、気をつける」

 頭を下げたゼノに軽く笑って、ラズールを連れて天幕を出た。
 トラビスの天幕へと向かいながら、僕を守るようにして歩くラズールが疑問を口にする。

「なぜトラビスの天幕に?レナードの所で休まれたら良かったのではありませんか?かなり疲れているでしょう?顔色が優れませんよ」
「うん疲れた。ドレスは首と肩が痛くなるから」
「そんなにクルト王子のことが気になりますか?」
「うん…彼は王族だよ?きっと魔力も強いだろうし。だから僕が直接、天幕の周りに結界を張りたいんだ」
「代わりに俺がしますよ」

 僕はラズールを見上げる。
 心配の色を浮かべる目を見つめて、小さく首を振る。

「いいよ、僕がやる。僕は王らしいことをまだ何もできていない。少しでも役に立つことをやりたいんだ」
「わかりました。フィル様に任せます。ただレナードも言ってたように、クルト王子には注意してください」
「わかってる。でもおまえがいるから大丈夫だろ?」
「フィル様…」

 僕がラズールの腕を掴んでそう言うと、珍しくラズールが照れた顔をした。
 
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