銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「リアム、苦しいから離して」
「嫌だ」
「お願い」
「なぁ、俺の魔力を全て移せば、呪いは消えるか?」

 僕はリアムの腕の中で、小さく首を振る。

「呪いはね、かけた者が解くしかない。もしくはそれに近い者…」
「おまえに呪いをかけたのは誰だ」
「…たぶん僕のおばあ様。僕が生まれるずっと前に亡くなってる」
「近い者は」
「母上だけど、もういない」
「なんだよそれ。フィーが生まれる前に呪いをかけたって言うのか!」
「そうだね。この呪いはイヴァル帝国の害でしかないと、僕は思ってる。だからイヴァル帝国は、一から新しくやり直すんだ」

 リアムが腕を緩め、僕の目を見つめる。

「おまえは、誰に王位を譲った?」
「王家のもう一つの血筋の者に。その血筋は、代々呪われていないから、女王でなくてもいいんだ。新しい王は貧しい民の気持ちもよくわかってくれている。きっといい王になるよ」
「そうか。ならばもう、国のことは気にせず俺とずっと一緒にいられるのだな」
「うんそう。ずっとではないけど」
「ずっとだ!ウソでもいいから…そう言えよ」

 リアムの顔を見て、剣で刺されたかのように胸が痛くなった。
 リアムが泣いている。紫の瞳から次から次へと涙が溢れ、ポタポタと顎を伝って落ちている。
 リアムの泣き顔を初めて見た。僕も辛いことなのに、美しい人は泣き顔も美しいんだな、と見とれてしまった。
「おまえはっ」とリアムが袖で顔を拭い鼻声で言う。

「おまえの方が辛いのに、なんで泣き喚かないんだよっ」

 僕は驚き、両手でリアムの頬を包み、そして笑った。

「なに笑ってんだよ」
「リアムこそ、どうしてそんなに泣くの」
「この世で最も辛い話を聞いて、泣かないわけないだろっ」
「辛いの?」
「当たり前だ!」
「僕も辛いよ…。でもね、僕は呪われた子だと言われ続けてきたから、覚悟はできてる」
「じゃあ、なんで今泣いてるんだよ」
「リアムが悲しんでるから…」
「バカめ。死ぬことが怖いって泣けよ」
「怖くないよ。リアムの腕の中で死ねるから」
「俺は、おまえの腕の中で死ねないじゃねーか!」
「ふふっ」
「なんだよ」
「リアム、口調が悪くなってる」
「知るか。構ってられるかっ」
「リアム」
「なんだよ」
「好き、大好き…心から愛してるよ」
「…俺もフィーを愛してる。おまえを一人にはさせない」

 バカなことを言わないでという言葉は、リアムの口の中に消えた。
 リアムが僕をベッドに押し倒し、強く唇を塞いだ。

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