銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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「あの…赤い痣が背中にも広がったら死ぬかもしれないって…話はしたよね?」
「ああ、聞いた」
「実は…赤い痣が出てき始めた頃から、身体が痛い」
「…どんなふうに?」
「黒い蔦から無数のトゲが生えて、それで全身を刺されるような痛み…」
「ずっとか?」
「ううん、波がある。でも痛みの間隔が、だんだんと狭くなってきてる」 
「どれくらいの間隔だ?」
「一刻はもたないかも…。今はラズールがね、頻繁に痛みを和らげる治癒魔法をかけてくれているの」
「ああそれで。おまえ達二人が、何かコソコソ話してるなぁと思っていたんだ」
「気づいてたの?黙っててごめんね…」
「いいさ。俺に心配かけさせまいと思ったんだろ?」
「うん…」

 リアムが大きな手で僕の背中を何度もさする。そして僕の頬にキスをして、「フィー」と優しく呼んだ。

「なに?」
「次からは俺も治癒魔法をかけよう。ラズール一人では負担が大きいだろう」
「いいの?ありがとう。僕が自分でかけられればいいのだけど、治癒魔法…苦手なんだ」
「自分の身体を治癒するのに自分でかけていたら、とんでもなく体力を消耗するじゃないか。おまえはもう、無理はしないでくれ。俺が守るから…甘えて頼ってくれ」
「リアム…。じゃあ後で治癒魔法をかけてくれる?ラシェットさんに会う前にラズールがかけてくれたんだけど…夕餉まではもたない」
「その痛みを完治させることはできないのか?」
「痣が消えない限りは無理だと思う。だからね、僕にはもう…時間がないんだよ」

 リアムが、今にも泣き出しそうな顔になる。息が苦しくなるくらい、僕を強く抱きしめて、掠れた声で何かを言ってる。
 聞き取りづらい言葉の意味を理解して、僕は胸が潰れそうになった。

「いやだ…そんなこと言うな…俺を置いて行くなよ…おまえがいないと、俺は生きていけない」

 そう何度も繰り返している。まるで呪文のように。
 僕は逆の立場を考えた。リアムがこの世からいなくなる想像をした。それはとても耐えがたいことだ。きっとすぐにリアムの後を追い、僕は自ら命を絶つ。リアムがいない世界で、僕も生きていけない。
 だけどねリアム、僕はあなたには生きていてほしい。僕がリアムの立場だったらできないことを、リアムにしてほしいと望むなんてひどいと思うけど、生き続けてほしいんだ。
 ラズールだってそうだ。生まれた時から傍にいる僕がいなくなることは耐えられないに違いない。だけど国のために生きて働いてほしい。
 僕ってひどい人間だなぁ…なんて思ったら、ふいに笑いが込み上げてきた。
 だけど僕の肩に顔を埋めて嗚咽を漏らすリアムに、笑ってるなんてバレたら軽蔑されてしまうかも。
 だから僕は、リアムの金髪を抱きしめて、形の良い耳に唇を寄せると「大丈夫だよ」と囁いた。
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