銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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俺はうつむかせていた顔を上げ、ジルに問う。

「バイロンの騎士であるあなたが、なぜデネス大国にいるのか」
「祖父母の様子を見に来てたんだ。俺の母親はデネスの出身だ。祖母の体調がよくないと聞いて、会いに来ている」
「なるほど。それでゼノ殿。ジル殿をここに呼んだ理由は?」

 ゼノがニコニコとして俺とジルを交互に見ている。ゼノは裏表のない快活かいかつな人物だと思う。このような明るい人が傍にいたなら、フィル様の苦悩はもっと和らいでいたのだろうか。

「ジルが今、デネスにいることを知っていたからな。デネスに入ってすぐに手紙を送っておいた」
「そうか」
「ジルは、子供の頃からよく祖父母の所へ遊びに行っていたらしい。しかも祖父母が所有する広大な土地の近くに、目的の鉱山がある。ジルは鉱山の地理をよく知っているんだ」
「そうだ。だから俺が案内する。それとこれを。ゼノの手紙をもらってからすぐに、領主に面会して入山の許可証をもらっておいた」

 そう言ってジルが、机の上にひものついた三個の青い石を置く。
 俺は一つを掴むと、目の高さに持ち上げた。

「これが許可証なのか?」
「ああ。鉱山の周りには結界が張られている。これを身につけている者のみ、入れる」
「なるほど。見張りの者を置かなくてもいいのか…よく考えられているな」

 ジルも同じように石を持ち上げて話を続ける。

「ただこの許可証の魔法は、デネスの特許だ。どのような魔法なのかわからない。国が違えば魔法も違うからな。バイロンも石の採掘場に使用したいのだが、まだ作れていない」
「イヴァルでも使いたいな」
「そうだろう。持って帰っていいと言いたい所だが、帰りに返さなくてはならぬ」
「まあそうだろうな。残念だ」

 俺は窓に向けて石をかざしてみた。日光に反射して光る石は、どうみてもただの石だ。デネスには高度な魔法があるのだなと感心する。

「ところで、俺はゼノから鉱石を採取したいとしか聞いてないのだが、鉱石で何をするんだ?」

 ジルが石を元に戻して聞いてきた。
 俺は無言でゼノを見る。
 鉱石のことは医師に聞くまで俺も知らなかった。とても貴重なものらしいから、世に広く知れ渡ってはいないのだろう。
 俺の代わりにゼノが答えてくれる。

「目的の鉱石は、険しい場所にあるらしい。だがその鉱石は、弱った身体によく効くらしいのだ。だからラズール殿は、鉱石を入手して薬に精製し、フィル様に飲ませたいと思っている」
「鉱石にそんな効き目があるのか…わかった。早く探しに行こう」

 



 
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