ふれたら消える

明樹

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 昊が高校生になって学校で会えないのは残念だけど、家では会える。寝る前には話をして休みの日には共に出かけることもある。春休み中には家族旅行に行った。夏休みにも行く予定だ。そんな風に昊との思い出が増えるだけで、俺は十分幸せを感じていた。
 なのに、その幸せが壊れた。


 七月頭の土曜の午後に、突然篠山が家に来た。コンビニに行こうとしていた俺は、モニターを確認せずに扉を開けた。目の前に嫌いな先輩がいて驚くと同時にイラついた。昊に会いに来たと思ったからだ。
 俺は思いっきり嫌そうに「何か?」と聞いた。
 しかし篠山は、俺じゃなくリビングから出てきた昊を見ている。

「俺は昊に会いに来たんだ。森野に用はない」
「は?昊に何の用だよ」

 何コイツ。なんで昊って呼び捨てにしてんの?
 篠山が昊に向けて嫌な笑顔を見せる。

「あれ?聞いてない?俺と昊は、去年から付き合ってるんだぜ」
「はあっ?」

 なんだそれ!そんなの聞いてないっ。昊が?篠山と?昊はこんなヤツが好きなのか?
 俺はショックと怒りで頭の中が真っ白になる。
 いつかは昊に好きな人ができて俺から離れてしまうと思っていた。それは仕方がないことだとも思っていた。だけど…嫌だ。実際にの当たりにすると耐えられない。なんで?なんでだよ…昊。俺だって好きなのに。ずっとずっと好きなのに。
 ふと後ろで昊の声が聞こえた。
 
「……だ」

 俺は振り返り「なに?」と聞く。自分でも驚くほどの冷たい声だ。
 昊は、おびえたように俺を見た。そして伸ばした俺の手を避けると、玄関で靴をき篠山をともなって出ていった。
 その間俺は動けなかった。出ていく昊を止められなかった。篠山の言葉がショックだったから。それに昊も否定しなかった。篠山が勝手に言ってることなら、昊は即座に否定したはず。なのに否定せず、しかも一緒に出ていった。

「嘘だ……くそっ」

 俺はその場に座り込み、昊と篠山のことをグルグルと考えていた。しばらくしてポケットの中のスマホが震える。慌てて出して見ると、颯人から電話だった。重い腕を上げてスマホを耳に当てる。

「…はい」
「青?どうした?元気ねーな」
「なんか…どうでもいいっていうか」
「なんかあった?課題で解けない問題があったから聞こうと思ったんだけど、今から行ってもいい?それか俺ん家に来る?」
「動きたくない…から、来て」
「わかった。何でも聞くから話してくれよ」
「うん…」
「じゃあ後で」

 プツと電話が切れ、ゆっくりと腕を下ろす。
 ダメだ、ショックが大きすぎて頭が働かない。颯人に聞いてもらったら、少しは気持ちが楽になるだろうか。
 俺は昊が戻ってくるかもと玄関の扉を見つめ続けていたが、昊が戻ってくるよりも先に、颯人が来た。
 



 
 
 
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