ふれたら消える

明樹

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 待ち合わせの駅に着くと、すでに柊木がいた。長身に色素の薄い髪と瞳と肌。すごく目立っている。今声かけたら俺まで目立つんじゃね?と躊躇ちゅうちょしていると、柊木が気づいて走って来た。

「昊!早いねっ」
「早くはねぇよ。柊木が早すぎんだろ」

 ああ…人に見られて落ち着かない。やっぱりこいつのせいで目立ってるじゃん。
 俺は早くこの場から立ち去ろうと早足で改札に向かう。
 
「あっ、待って」

 柊木がすぐに追いついて、隣から顔をのぞき込んできた。
 俺は目を合わせずに肩にかけた鞄からスマホを出す。

「なに見てんだよ」
「だってさ、繋って呼んでって言ったのに柊木って…俺たち友達なのに」
「そのうちな。ほら、早くしねぇと電車来るぞ」
「え?まだ大丈夫だよ」
「この時間だと一本前のに乗れる。行くぞ」
「えー?そんなに急がなくても…」

 ブツブツと言いながらも、柊木がピッタリと俺の後をついてくる。
 悪いな柊木。俺は少しでも早く帰りたいんだ。青と祭りに行くって約束したからな。
 階段を降りている途中で電車が入ってきた。降りた場所の扉から乗り、奥の扉に移動して外を見る。
「どこも空いてないねぇ」と電車内を見て、柊木が身体が触れそうなほどの距離に立った。

「おい、暑いから離れろよ」
「冷房効いてるから大丈夫だよ。それにさ、結構混んでるから無理なんだよなぁ。汗臭いおっさんにくっつかれるより俺の方がマシでしょ?あ、きれいな女の人の隣がよかった?」
「……ちっ」

 聞こえるか聞こえないかくらいの舌打ちをして、俺はなるべく身体を小さくした。
 正直、人に触れられるのは嫌いだ。嫌悪感でいっぱいになる。夏樹や颯人には触れられても何とも思わない。青は…青には触れられたいし触れたいと、ずっと望んでいる。

「俺、水族館すごく久しぶりなんだよ。楽しみだなぁ。昊は?」
「…俺も小学生の時以来だな」
「そっか。イルカショーも見ようね」
「はあ?おまえと?」
「水族館に行ってイルカショー見ないで帰るってありえないじゃん?」
「…まあいいけど。あ、でも水族館見終わったらすぐに帰るからな」
「ええっ!ご飯食べようと思ってたのに…。なんで?」

 チラリと柊木を見上げると、まるで怒られた犬がしょげたような顔をしていて、思わず吹き出してしまう。

「ふっ!なんだその顔」
「すごーく残念っていう顔」
「イケメンが台無しだぞ。まあ飯はまた別の日に行けばいいじゃん。とにかく今日は早く帰る。邪魔すんならもう会わねぇ」
「…わかった。水族館見たらすぐに帰ろう。その代わり、また遊んでよ」
「また…な」

 俺はまだ何か言いたそうな柊木から顔をそむけて、窓の外を流れる景色に目を向けた。
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