ふれたら消える

明樹

文字の大きさ
44 / 89

23

しおりを挟む
 俺は男の手を昊の腕から引き剥がすと、無言で男に背を向けて歩き出した。
 昊が後ろを気にする素振りを見せたけど、知るか。アイツとは関わりたくない。昊にも関わってほしくない。同じ学校だというなら、夏樹に聞いてみよう。昊を関わらせないよう、頼んでみよう。
 男が再び昊を引き留めるかと思ったけど、追ってはこない。ホッと安堵していると「昊、また連絡する」と声がした。
 俺はカチンときた。しつこい。まるで篠山の時みたいだ。どうしてこうも昊は、しつこいヤツに好かれるのか。昊を好きなのは、俺だけでいい。
 しかし文句を言おうと軽く舌打ちをして振り向いた時にはもう、男の姿はなかった。

「…どこ行った?」
「そこの角を曲がってったぞ」
「ふーん。昊、アイツだれ?友達って言ってたけど」
「友達じゃねぇ。ただの同級生。隣のクラスだし」
「でもアイツはそう思ってないみたいだったけど?篠山みたいに昊のこと好きなんじゃないの?」
「ちげーよ。だとしても、おまえには関係ねぇだろ。なに怒ってんだよ…意味わかんねぇ」
「別に…怒ってない」

 ポツリと呟いて、繋いだままの昊の手を引いて歩き出す。
 昊が「離せよ」と手を引いたけど、離してやらない。
 俺は、俺の物だというように、昊の手を強く握りしめた。そして二人とも何も話さず、家までの道のりを歩いた。


 祭りの日から一週間後、夏樹と会った。塾で忙しい中、俺が「相談がある」とメールを送ると時間を作ってくれた。夏樹こそ、兄のように優しくて頼れる存在だ。夏樹のような人なら、昊の友達として傍にいても不安にならない。
 逆に昊には頼られたい。兄だけど恋人になりたい。常にそう、願っている。
 夏樹とは駅前で待ち合わせた。近くのカフェに行き、話を聞いてもらうつもりだ。
 昊は昼から出かけていった。友達と会うと言って。「友達って誰?」と聞いたけど、「おまえの知らないヤツ」と名前を教えてはくれなかった。もしかしてこの前のアイツかと聞く前に、昊はサッサと出てしまった。でも昊はアイツのこと、友達じゃないと言ってた。だから違うと言い聞かせ、俺は時間になるまで課題をやった。

「青、遅くなった、悪い」
「大丈夫だよ。夏樹こそ、来てくれてありがとう」

 考えごとをしていると、夏樹が笑顔で現れた。
 その顔を見て、重い気持ちが少しだけ軽くなった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

BL短編

水無月
BL
兄弟や幼馴染物に偏りがちです。

処理中です...