ふれたら消える

明樹

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 なんでここに青と夏樹の二人がいんの?二人は仲が良いけど、俺抜きで出かけることなんてなかったよな?
 椅子にもたれた夏樹が俺に気づいた。こちらに視線を向けたまま、青に何か話している。俺がいると教えたのか。青が勢いよく振り向いた。

「昊っ」
「やあ弟くん、こんにちは。偶然だねぇ」
「ちっ…」

 俺が口を開くよりも早く、柊木が反応した。それが気に入らなかったのか、青が怒った顔にいる。
 俺は焦った。柊木と二人でいる所を、青には知られたくなかった。
 どう青に声をかければ…と考えていると、夏樹が柊木の前まで来た。穏やかに笑っているけど、目が笑っていない。夏樹も怒っているようだ。
 
「どうも、昊と同クラの宮下です。昊とは小学校からの友達」
「あ、知ってる!クラスの女子が君のこと話してたから。へぇ、宮下くんは昊の家族とも仲良いんだ?」
「そうだね。青は弟みたいなもん」
「ふーん」

 柊木が青を見ている。
 しかし青は俺を見ていた。
 俺は青の視線に耐えられず、目を逸らした。今、青は何を思ってる?柊木のこと、篠山みたいに俺に付きまとってるしつこいヤツと思ってそうだな。嫌悪感が剥き出しで、それが俺にも向けられているようで、嫌だ。

「せっかくだから、こっちに座れよ。ほら、昊は青の隣」
「うん…」

 夏樹が柊木を自身の隣に強引に座らせた。
 俺は一瞬だけ青を見て、青の隣に座る。家では毎日隣に座っているのに、なぜか緊張する。

「なに頼む?」
「えーと、俺はアイスコーヒー。昊は?」
「俺…」
「昊はアイスミルクティーだよ」
「…ああ、うん」

 夏樹がメニューを柊木に渡して聞く。
 俺の注文は、青が即座に決めた。
 青は俺の好みをよく知っている。当然だ。生まれた時からずっと一緒の兄弟なんだから。俺のことを誰よりも知ってくれていることが嬉しい。でも逆に悲しくもある。兄弟という関係は、永遠に変えることができない。
 隣からピリピリとした空気を感じて見ると、青が怖い顔で柊木を見ていた。
 しかし柊木は全く気にもしていない。「へぇ、そうなんだ」と頷き、「覚えておくよ。他には何が好き?」と聞いてきた。
 隣の青が、明らかにイライラとしている。
 俺はあまり柊木と喋らないようにしようと決めて、青と夏樹を交互に見た。

 
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