炎の国の王の花

明樹

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はじめまして新世界

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ズキンズキンと規則正しく響く頭の痛みに、小さく唸って眉間にシワを寄せる。


「んぅ…」
「おっ、目を覚ましたか?」


すぐ近くから聞こえる低い声に答えるように、パチパチと何度か瞬きを繰り返して、俺はゆっくりと瞼を開けた。


すぐ間近で俺を覗き込む顔を認めて、思わずビクリと肩を揺らす。その覗き込む人の容姿を見て、ここがどこなのか、俺は何となく分かって苦笑した。


「はは…、やっぱり地獄に来ちゃったかぁ…。なあ、あんたは赤鬼?鬼って意外と綺麗な顔をしてるんだな…」


目の前の、肩よりも長く伸びた赤い髪を後ろに撫で付けた男に話しかける。
170cmの俺よりも頭一つ分以上はデカそうな体躯。そのデカい図体ととても整った容姿が、妙に鬼だと納得させる。


今から何の刑にかけられるのだろうかと溜息を吐いたその時、ズキンズキンとする痛みを頭に感じて、思わず声を上げて頭に手を触れた。


「いっ!…たぁ…」


触れた手に、髪の毛ではない感触を感じる。首を傾げてペタペタと頭を触っていると、赤い髪の男が俺の腕を掴んで大きな声を出した。


「おい、あんまり触るな。かなり良くなってるとはいえ、まだ完治していないのだぞ」
「え……」


鬼と会話が出来るとは思っていなかった俺は、ポカンと口を開けて目の前の男の顔を見つめた。


「し、しゃべった…。鬼がっ、しゃべった!」
「おい、待て。さっきから黙って聞いてると人のことを好き勝手言いやがって。俺は、鬼とかいうものではない。人だ。アルファムと言う名がある。しっかりと覚えておけ」
「アルファム…?」


再び首を傾げて、俺は目の前の赤い髪の男、アルファムをジッと見つめた。


ーーあれ?じゃあここは地獄じゃない?俺、生きてる?え?でも日本にこんな赤い髪の人はいないよ?染めてるようにも見えないし。それにここ、病院って感じじゃあない…。


俺は周りの様子を確認しようと、肘をついて身体を起こそうとした。するとすかさずアルファムが背中に手を差し入れて手伝ってくれる。
お礼を言おうと彼に顔を向けると、彼も俺を見ていたから、咄嗟に目を逸らせてしまった。


俺の頭の上から溜息が聞こえ、大きな手が優しく俺の髪の毛を梳く。


「おまえの髪は、とても綺麗な黒だ。この国では、黒は高貴な色とされる。おまえがどこから来たのか知らないが、俺が見つけた。だから俺のモノだ。俺の黒い宝石だ」
「はあ?俺は誰のモノでもないしっ…ん?この国?…えっと、ここって日本だよね…?」
「ニホン?なんだそれは。ここは炎の国、エンだ。ところでおまえ、名はなんと言う?」
「…ほのお…エン…?」
「名はなんだ?」
「えっ?あ、ああ…。俺は奏(かなで)という。…なぁ、俺って崖から落ちたと思うんだけど」
「カナデ…。良い名だ。カナデ…ふむ、俺はおまえのことをカナと呼ぶ。おまえも俺をアルと呼んでいいぞ?」


そう言って笑ったアルファ厶が、髪を撫でていた手を滑らせて、俺の頬をするりと撫でる。その手つきがいやらしく感じて、俺は思わずアルファ厶の手首を掴んだ。
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