42 / 432
風の国の男 4
しおりを挟む
「うわぁっ!なっ、なにっ?」
くるくると身体が回転しながら強い風に押し上げられて、大木から数メートル離れた場所まで飛ばされた。
かなりの高さまで飛ばされ、ヤバい!と俺の全身に緊張が走る。
しかし急に風が無くなり、俺の身体が下降を始めた。落ちていく先を見ると、キラキラとした金髪と澄んだ空のような青い瞳のバルテル王子が、両手を広げて立っていた。
「え?なんでっ!?」
大きな声を上げながら、俺はバルテル王子の腕の中に落ちた。
バルテル王子は、かなりの高さから落ちてきた俺を、少しもよろけることなくしっかりと受け止めた。
俺は大きく安堵の息を吐いて、バルテル王子を見た。
「あ…ありがとう…ございます」
「よい。俺がわざとおまえを飛ばしたのだ」
「…え?」
バルテル王子の腕の中に収まったまま、俺はバルテル王子が言った言葉の意味を考える。
「え…と、今、なんて?」
「だから、俺が風を起こしておまえの身体を巻き上げて運んだと言っている」
「な、なんで?」
風になびく金髪が、陽の光に当たってキラキラと煌めいている。
俺は悪い予感に背中を震わせて、バルテル王子の腕から逃れようと身体を捻った。
「こら、暴れるな。なるほど…、本当に美しい黒髪をしている。俺は、おまえを一目見て欲しくなったのだ。だからあそこにいるスイ国王の後をつけて、おまえを手に入れる機会を狙っていた」
バルテル王子が指さした先にいるレオナルトを見て、俺は息を飲んで叫んだ。
「…え?レオンっ!ナジャっ!どうしたのっ?」
大きな木の下で、二人が胸を押さえてうずくまり、身体を震わせていたのだ。
「ちょ…っ!あんたっ、離せよっ!あの二人に何をしたんだっ!」
「おまえ、小さいのに威勢がいいな。おまえを風で巻き上げると同時に、あの二人に無臭の毒を嗅がせた」
「な…、ど、く…?」
「そんなに怖い顔をするな。少しの間、息が苦しくなって身体が痺れるだけだ。スイ国の王は、中々に強いからな。出来ることならやり合いたくはない。さて、今のうちにおまえを連れて行くとしよう。おまえ名前は?」
「俺を離せ。俺は、あんたと一緒には行かない」
「ふ~ん、怒った顔もいいな。まあいい。名前は国に帰ってから吐かせるとしよう」
バルテル王子が、俺を抱いたままくるりと向きを変えて歩き出した。
俺は腕や足を無茶苦茶に振り回すけど、バルテル王子は全く動じない。
くそ!仕方ない!と大きく息を吸うと、俺は思いっきりバルテル王子に頭突きを食らわした。
ゴチン!と大きな音がして、目の前がチカチカと明滅する。
バルテル王子が片方の手で額を押さえたため腕の力が緩んだ。
その隙に、俺は王子の腕から逃れて素早く地面に飛び下り、レオナルトとナジャに向かって走り出した。
「あ、危ない!カナデっ!!」
こちらを見ていたレオナルトが、大きく目を見開き、悲痛な声を上げた。
「え?」
俺の両脇を風が吹き抜けた瞬間、両腕と両足に鋭い痛みが走った。
くるくると身体が回転しながら強い風に押し上げられて、大木から数メートル離れた場所まで飛ばされた。
かなりの高さまで飛ばされ、ヤバい!と俺の全身に緊張が走る。
しかし急に風が無くなり、俺の身体が下降を始めた。落ちていく先を見ると、キラキラとした金髪と澄んだ空のような青い瞳のバルテル王子が、両手を広げて立っていた。
「え?なんでっ!?」
大きな声を上げながら、俺はバルテル王子の腕の中に落ちた。
バルテル王子は、かなりの高さから落ちてきた俺を、少しもよろけることなくしっかりと受け止めた。
俺は大きく安堵の息を吐いて、バルテル王子を見た。
「あ…ありがとう…ございます」
「よい。俺がわざとおまえを飛ばしたのだ」
「…え?」
バルテル王子の腕の中に収まったまま、俺はバルテル王子が言った言葉の意味を考える。
「え…と、今、なんて?」
「だから、俺が風を起こしておまえの身体を巻き上げて運んだと言っている」
「な、なんで?」
風になびく金髪が、陽の光に当たってキラキラと煌めいている。
俺は悪い予感に背中を震わせて、バルテル王子の腕から逃れようと身体を捻った。
「こら、暴れるな。なるほど…、本当に美しい黒髪をしている。俺は、おまえを一目見て欲しくなったのだ。だからあそこにいるスイ国王の後をつけて、おまえを手に入れる機会を狙っていた」
バルテル王子が指さした先にいるレオナルトを見て、俺は息を飲んで叫んだ。
「…え?レオンっ!ナジャっ!どうしたのっ?」
大きな木の下で、二人が胸を押さえてうずくまり、身体を震わせていたのだ。
「ちょ…っ!あんたっ、離せよっ!あの二人に何をしたんだっ!」
「おまえ、小さいのに威勢がいいな。おまえを風で巻き上げると同時に、あの二人に無臭の毒を嗅がせた」
「な…、ど、く…?」
「そんなに怖い顔をするな。少しの間、息が苦しくなって身体が痺れるだけだ。スイ国の王は、中々に強いからな。出来ることならやり合いたくはない。さて、今のうちにおまえを連れて行くとしよう。おまえ名前は?」
「俺を離せ。俺は、あんたと一緒には行かない」
「ふ~ん、怒った顔もいいな。まあいい。名前は国に帰ってから吐かせるとしよう」
バルテル王子が、俺を抱いたままくるりと向きを変えて歩き出した。
俺は腕や足を無茶苦茶に振り回すけど、バルテル王子は全く動じない。
くそ!仕方ない!と大きく息を吸うと、俺は思いっきりバルテル王子に頭突きを食らわした。
ゴチン!と大きな音がして、目の前がチカチカと明滅する。
バルテル王子が片方の手で額を押さえたため腕の力が緩んだ。
その隙に、俺は王子の腕から逃れて素早く地面に飛び下り、レオナルトとナジャに向かって走り出した。
「あ、危ない!カナデっ!!」
こちらを見ていたレオナルトが、大きく目を見開き、悲痛な声を上げた。
「え?」
俺の両脇を風が吹き抜けた瞬間、両腕と両足に鋭い痛みが走った。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
校正も自力です(笑)
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる