炎の国の王の花

明樹

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王の花 9

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部屋の扉が閉まるなり、俺はアルファムの胸に飛びついた。
眠っている時にアルファムにいたずらをされたおかげで、宴の間中、ずっと乳首も腰の奥も疼いて落ち着かなかった。
だから、宴が終わるとすぐにアルファムの手を引いて、急いで部屋に戻って来たのだ。そして、部屋に入るや否や、続きをして欲しくてアルファムに飛びついた。


「ふっ、なんだ?カナ、激しいな」
「だって…、アルのせいだろ」
「俺の?」
「アルが、宴の前にいろいろと触るから…っ」
「ああ…、あれは、俺の前で無防備に寝ているおまえが悪い」
「はあっ?」


俺は大きな声を出して、アルファムの胸を押して離れようとした。
だけど咄嗟にアルファムが俺を抱き上げて、ベッドへと連れて行く。


「くくっ、すまない、カナ。おまえのコロコロと変わる表情が可愛くて、つい意地悪を言った。許せ」
「…アルのバカ…」


ベッドに降ろされるなり唇を尖らせて、ツンと横を向く俺の上にアルファムが被さり、右手の人差し指で俺の唇に触れる。そのままむにゅりと押して、声を上げて笑った。


「…なんだよ…」
「悪い。たぶん俺は、とても楽しいのだ。カナが帰って来て、皆も喜んで、美味い料理を食って酒を飲んで、楽しくて幸せなのだ。おまえが傍にいるだけで、こんなにも楽しい。もしも次におまえと離れてしまったら、俺は生きてはいられないだろう」
「アル…」


俺は腕を伸ばして、アルファムの頭を抱き寄せる。引き寄せたアルファムの唇にキスをして、強く抱きしめた。


「俺も楽しかった。アルが傍にいて、皆がおかえり!って喜んでくれて、すごく幸せだよ。もう二度とアルから離れない。アルが嫌だって言っても離れない」
「そんなこと言うわけないだろう。カナ、約束だ。一生、俺の隣にいてくれ。俺の玉座の隣に座るのは、おまえしかいない」
「玉座…」
「そうだ。中央の城に戻ったら、早速俺の隣に座って、各国の王族に会うぞ」
「え?また即位記念か何かあるの?」


アルファムが、顔を離して綺麗な緑色の瞳に俺を映す。俺の背中に手を差し入れて身体を起こすと、俺を膝の上に乗せてしっかりと抱き寄せた。


「カナ、おまえのお披露目だ。中央の城に戻って準備が整い次第、婚儀を挙げる」
「…婚、儀?誰の…」
「炎の国の王である俺と、俺の大切なカナの婚儀だ」
「アルと…俺の?」


アルファムの口からゆっくりと告げられた言葉。
その内容に、俺の全身が粟立つ。ドキドキと心臓が高鳴り、小刻みに震える手でアルファムの胸に触れて、ゆっくりと顔を上げる。
俺を見下ろすアルファムの顔が、涙でぼやけてよく見えなかった。


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