炎の国の王の花

明樹

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番外編 芽吹き 5

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俺は、アルファムがそんなにまで俺のことを考えてくれることに、また感動して目を潤ませる。
「カナ」と優しい声がして顔を上げると、「カナもわかったか?」とアルファムが俺の頬を撫でた。

「うん。ありがとう、アル。でもそこまで厳重にしなくても、俺は大丈夫だよ?」
「大丈夫ではない。子が腹にいる間は、カナは普通の身体ではないのだぞ。頭痛、吐き気、倦怠感に加え、もし腹の子に何かあれば、カナの命も危なくなる。だから、ひたすら部屋の中で大人しく休んでいてもらわねば困る。それが出来ないと言うなら…この話は無しだ」
「えっ!嫌だっ!俺、ちゃんと大人しくしてるっ。部屋から出ないからっ。だから、アルの赤ちゃんが欲しい…っ」

俺は、アルファムのシャツを掴んで必死に訴える。
今回のことに関して、アルファムはとても厳しい。
それはきっと、それだけ俺の身体が危険に晒されるからなんだろう。
アルファムがどれだけ俺を大事に想ってくれているか、よくわかってる。
だから俺も無茶なことはしない。
無事に産むことだけを考えて、気をつけて過ごす。だから…っ。

「ごめんねアル…。俺、真剣に受け止める。簡単に大丈夫とか言わない。気をつけるから…、だから俺にアルの赤ちゃん、産ませて…」
「…わかった。意地悪な言いようをして悪かった。だが、それだけ大変で危険だということをわかって欲しい。それとカナ、子が腹にいる間は、泣くのも我慢だぞ?それすらも身体に悪い」
「…じゃあ、アルがずっと俺を笑顔にしてよ」
「もちろんいいぞ。でもおまえは嬉しくても泣くからな。困ったものだ」
「嬉しい涙なら大丈夫じゃない?」

話してるうちにアルファムの膝の上に乗ってイチャイチャとし始めた俺の背後から、「あの…」と遠慮がちな声が聞こえた。

ーーあっ、しまった!アルと二人きりじゃなかったっ!

慌てて振り返ると、ホルガーとリオが気まづそうに、シアンが涼し気な顔でこちらを見ていた。

「あ…、えっと、皆、協力をお願いします」
「もちろんですとも!無事にお子が産まれるまで全力でお支えします。何なりとお申し付けください」
「俺も!何でも命令してっ。カナのこと、絶対に守ってやるからな!」

ホルガーとリオに、「ありがとう」と頭を下げる。

「子胞薬は明日にも届くでしょう。なので本日より毎日、お二人は泉の水で身体を清めて下さいね」
「泉の水?」

シアンの言葉に、俺は首を傾ける。
「そうだ」とアルファムが笑って、俺の頭にキスをする。

「ちょっとした儀式みたいな物だ。結婚式の前にもしただろう?あの時は別々に入ったが、今回は一緒に入るぞ」
「そうなんだ。わかった。今から入る?」
「ふっ、せっかちだな。今入ると明るいからカナの裸体を隅々まで見ることが出来るな」
「え?前みたいに服着ないの?」
「着ない。決まりだからな」
「えー?じゃあ夜にする…」
「なんだ、残念」

くくっと笑うアルファムの顔を、そっと見上げる。
悪戯っぽく笑うアルファムもかっこいいなぁと見とれていると、後ろから「素直な方だ…」と笑いを含んだシアンの呟きが聞こえた。

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