炎の国の王の花

明樹

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番外編 芽吹き 62

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俺は、思わず素っ頓狂な声を上げた。
医師が、首を傾げて不思議そうな顔をする。

「そうですよ。赤ちゃんに乳を吸わせないと。足りなければミルクがありますが、出来るだけカナデ様の乳を与えた方が良い。まだ出にくいとは思いますが、赤ちゃんがお腹が空いて泣く度に、吸わせてみてください。すぐに出るようになりますよ」
「はあ……」

ーーちち…乳…おっぱい…。俺、男だけど出るの…?あ…でも、男だけど赤ちゃん産んだし、出る…んだろうな。え?でも、ちびアル吸えるかな。女の人みたいに吸いやすい形じゃないと思うんだけど…。

「どうした、カナ」とアルファムが俺の頬を撫でる。
どう説明したものかとアルファムを見上げると、アルファムが何かに気づいたらしく意地悪く笑った。

「ああ、大丈夫じゃないか?おまえの乳首は、とても吸いやすいぞ。俺がそういう形にしてやったからな」
「なっ…!何言ってんの!アルのばかっ!」
「なにっ…」

俺は顔を熱くして怒鳴ると、アルファムに背を向けてちびアルをそっと抱きしめた。

ーー先生の前で、なんて恥ずかしいこと言うんだよっ!いつも吸ってましたって言ってるようなもんじゃないかっ!アルのばかっ!

ぷるぷると震える俺の肩に、そっと手が置かれる。

「…カナデ様、大丈夫ですよ。カナデ様がアルファム様に愛されている証なのですから、何も恥ずかしいことではありませんよ。それに、赤ちゃんの為には良かったではありませんか。吸いやすければきっと、たくさん乳を飲んでくれます」
「そ、そうかな…」

ちらりと肩越しに医師を見る。
医師は、すごく真剣な表情をしてるけど、え?待って。
先生も今かなり恥ずかしいことを言ったよね?
先生の隣のアルファムも、なぜ俺が怒ったのかわからないという顔をしているし。
何だか、恥ずかしがる俺がおかしいのかもと思えてきた。

俺は、渋々身体を仰向けに戻した。

「それでは、診させて頂きますよ。まだ裂けた傷が治ってないと思うので、薬も入れておきましょう」
「はい…」

医師にされるがままに、膝を立てられ服をめくられ後ろの穴を診てもらう。
冷たい器具が当たる度に、ピリリと少し痛い。
医師が、穴に固形物を押し込むと、おむつのような布を当てて服の裾を元に戻した。

「かなり治ってます。今入れた薬でほぼ完治すると思います。でも、しばらくはここを使っては駄目ですよ。特にアルファム様。我慢してくださいよ」
「わかっておる。カナの身体が大事だ」
「ならよろしいでしょう。カナデ様、赤ちゃんのお世話は大変です。疲れたら人に頼んでくださいね」
「…?はい」

よくわからないままに返事をする。
医師は、満足そうに頷くと、部屋から出て行った。
俺は、アルファムを見上げて首を傾げる。

「ん?今のどういうこと?」
「この部屋には、俺とカナとちびカナしかいないだろ?カナは以前、『位の高い人って親が直接子供の面倒を見ないんだろ?俺は絶対に嫌だからな。ちびアルは、俺が全部面倒を見る!』って言ってただろ?だから、産まれてから、ちびカナを誰にも触らせてはおらぬ」
「え?じゃあミルクやおむつ替え…アルがやってたの?」
「そうだ。さすがにミルクは作って持ってきてもらってたが。中々に大変だった…。だが、カナと二人でやるのは楽しそうだ。俺は乳をやれないが、その他のことは出来る限りやる。だから、頼るなら俺にだぞ」
「アル……」

ーーなんだよアル!めっちゃイクメンじゃん!

俺は嬉しくて、アルファムに抱きつこうと腕を伸ばした。

「あっ!いたた…っ」
「カナっ、頼むから安静にしててくれ」

腕を伸ばした拍子に、後ろの穴の傷に響いた。
呻く俺に呆れながら、アルファムが上半身を屈めて俺を抱きしめてくれた。
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