炎の国の王の花

明樹

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「うん、俺も大好きだよ。カナ、そろそろ中に入ろうよ。少し風が冷たくなってきた」
「本当だね。それに、もうそろそろアルが帰って来るかな?」

母さまが、立ち上がってマントを脱ぎ、脱いだマントを俺に差し出した。

「カエンありがとう。中に入るからもういいよ」
「部屋に着くまで着てていいよ」
「大丈夫。今日は調子がいいって言っただろ?」
「確かに元気そうだけど…。油断しちゃ駄目だよ」
「わかってる」

俺と母さまは、話しながら城の中に入った。
母さまを部屋まで送って、俺は自室へ戻る。
マントを棚の中に入れ、城の外に出る時に着る赤い上着も脱いで、シャツだけになる。
そして石の台から湧き出る水で、顔を洗った。

顔を拭き終わると、母さまの部屋に向かった。
ちゃんと休んでるだろうかと扉を叩いて母さまを呼ぶ。

「カナ!入るよ」
「どうぞ」

重厚な扉を押して中に入る。
母さまが、窓に手をかけてバルコニーに出ようとしていた。

「外に出るの?じゃあ何か羽織りなよ。俺のマント、着たままで良かったのに…っ」
「もうっ、大丈夫だって!カエン…、アルの心配症が移ったんじゃない?ここからさ、アルが帰って来る所を見ていたいんだ」
「心配するに決まってるだろ。カナが油断し過ぎなんだよ。父さまにも、いつもよく注意しろって言われてなかった?」
「…そうだけど。じゃあカエン、ベッドの上にある膝掛け用の毛布を取って」
「わかった」

ベッドの上に畳んで置いてある白いふわふわの毛布を手に取り、バルコニーに出る。
既に手摺りに腕を乗せて、空を見上げる母さまの肩に、毛布をかけた。

「ありがとう」
「父さま、もう少しかかるんじゃない?父さまも、ローラントおじさんと久しぶりに会うし、話し込んでるかもしれないよ?」
「そうかぁ…。早くアルに会いたいのになぁ…」
「ぷっ…」
「なに?」
「カナって、本当に父さまのことが好きだね。両親がいつも仲良くて、俺も幸せだよ」
「……うん、好き。こんなにも人を好きになれるんだって、愛せるんだって、アルに教えてもらった。それに、カエンにも」
「俺?」
「うん。俺はアルを一番愛してる。そしてカエンは、俺にとってたった一人の血の繋がった存在だから、俺の命よりも大事なんだ。アルに対する気持ちとは違うけど、愛してる」
「…ありがとう。俺も、父さまもカナも愛してるよ。カナが、いつも言葉に出して気持ちを言ってくれるから、俺の心はいつも満たされてる。父さまとカナが、俺の両親で良かった」
「カエン…」

母さまの白い頬に、透明な雫が流れ落ちる。
母さまは、よく泣くけど、その涙を見る度に「きれいだな」といつも思う。

「また泣いてる。ほら、上を見てみなよ。ヴァイスの姿が見えてきたよ」
「…ぐすっ、…え?」

母さまが、慌てて袖で目を擦って、顔を上げる。
全身を太陽の光に反射させて、白く輝きながら降りてくるヴァイスを、母さまは、それこそ輝くような笑顔で見ていた。



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