炎の国の王の花

明樹

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シアンが、手紙に視線を移して話し続ける。

「お二人は、とても満足して帰って来られました。カナデ様が一生懸命、俺やリオに旅行での話をして下さいました。その時に、確か…とても綺麗な森を見つけたんだと…」
「え…?その森って…」
「はい。その時の話に出てきた森が、イグニスの森かもしれませんね」

俺は、シアンの方に身を乗り出した。
その森の場所がわかれば…!

「シアン!カナは、どこにあるって言ってた?」

シアンは、申し訳なさそうに目を伏せる。

「すいません…。詳しくは聞いてないのです。ただ、北の方にあるとだけ…」
「そっか…」

俺は、少し浮かせていた腰を、ぽすんと椅子に落とす。

「ですが、これらの手紙の中に、詳しい場所が書かれているかもしれません。皆で手分けして調べてみましょう」
「…そうだな。ホルガー、休んでるリオには悪いが、呼んできてくれないか?」
「わかりました」

ホルガが頷いて、部屋を出て行く。
俺は、ホルガーの背中を見送ると、深く息を吐いた。

この国に、森はたくさんある。大きな森には名前がついて、地図にも載っている。
でも、そんな森のことではないと思う。
地図にも乗ってないような、地元の人も知っているかわからない小さな森のことだろう。

「シアン、北の方から来た兵士や使用人達に聞けば、もしかして知ってる者もいるかな?」

別の手紙を手に取って読んでいたシアンが、顔を上げる。

「そうですね。それは良い考えです。この森のことを知ってる者がいるかもしれない。早速、北の出身の者に聞いてみましょう」
「うん…頼む」
「カエン様、焦らずに捜しましょう。アルファム様は、カナデ様を傍に置いておきたいだけで、決して無茶はなさいませんよ…」
「うん…だといいな…」

シアンは、俺の肩に優しく手を置くと、静かに部屋を出て行った。
静寂に包まれた部屋で、俺は椅子に背中を預けて天井を見つめる。

父さま、カナと離れたくないならそう言えよ。本当はちゃんとカナを送ってあげた方がいいけど、父さまは王様なんだから、何とか出来ただろ…。なんでこんな無茶なことするんだよ。でも…こんな父さまを見ても、カナなら笑って許すんだろうな。『アル、なにやってんの?』って。二人の関係が、心から羨ましい。強く人を愛するって、どんな気持ちなんだろ…。

すうっ…と大きく息を吸い込むと同時に、鼻の奥が痛くなり、ゆっくりと息を吐き出すと同時に、目尻から涙が零れた。


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