炎の国の王の花

明樹

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父さまの気が変わらないうちにと、翌朝早々に城に向けて出発した。
今度は母さまを連れているから、なるべくゆっくりと進んで、三日半かけて城に着いた。
人目につかないようにして、父さまが、母さまを祭壇のある部屋に運ぶ。
そっと祭壇の上に寝かせると、父さまは、母さまの唇にキスをした。

「父さま、戻ると言ってくれてありがとう」
「いや…、俺も勝手なことをして悪かった。急ぎ準備を整えて、明日、民に公表しよう。各国にも知らせを出そう。カエン、後でローラントとホルガー、シアンと段取りを相談してくれないか」
「いいよ。やっておく。父さまは、カナの傍にいてあげて」
「すまないな」

俺は笑って、父さまを残して部屋を後にした。
とにかく、戻って来てくれて良かった。
後は、国民に辛いことを知らせなければならない。
母さまは人気があったから、国中が暗くなるだろうな。
各国の反応も心配だ。水の国の王と日の国の王は、とても悲しむだろうな。
それだけ母さまのことは、この世界の人々の心に、深く刻まれているのだ。



翌日、国中にカナデ死去が知らされた。
その直後から、城の前には弔問の人々が溢れかえった。
城の正面の広場に台が並べられ、次々と弔問に訪れた人々が、花を置いていく。
その様子を、俺はバルコニーの陰からこっそりと見ていた。
集まった人々の数や、皆が一様に悲しんでいる姿を見て、どれほど皆に愛されていたのだろうかと胸が苦しくなった。

母さまは、「黒髪は年を取るとだんだんと白くなっていくんだよ。俺の髪が白くなっても、アルは好きでいてくれるかな」と話していた。
そんなの、当たり前じゃないか。母さまが、どんな風に変わったって、父さまは母さまを愛してるよ。
でも母さまは、綺麗なままで逝ってしまった。
出来るなら、髪の毛が白くなるまで生きていて欲しかった。

「カエン様」

いきなり名前を呼ばれて、俺は慌ててシャツの袖で目をこすりながら振り返る。
リオが、涙を流して立っていた。

「なんでリオが泣いてるんだよ…」
「いえ…。民が悲しんでる姿を見て、俺も悲しくなったんです。カナデがいないのは、やはり辛い…」
「そうだな…。それで、何か用か?」
「ぐすっ…、あ、はい。ローラント様がお呼びです」
「おじさんが?わかった。すぐに行く」
「カエン様、俺…もう少しここにいてもいいですか…」
「リオは、ずっとカナと仲が良かったもんな。好きなだけいていいよ」
「ありがとうございます…」

頭を下げたリオの足下に、ポタポタと雫が落ちて、小さくシミをつけた。




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