炎の国の王の花

明樹

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「あっ、おはよう!なんで昨夜は来なかったの?君が来ないから不安で寂しかったよぅ」
「おはよう…。それは悪かったな」

鉄格子の向こうで男が、不安な様子など一切見えない笑顔で、出された食事を食べながら俺に手を振る。
俺は、また疲れる会話をすることになるのか…と小さく息を吐いて、鉄格子に近づいた。

「これから尋問をするためにここから出すけど、昨日みたいに炎を出したり抵抗しないと約束するなら拘束はしない。どうする?」
「しないしない!昨日で君には敵わないってよーくわかったから。大人しくしてるから優しくしてよ」
「…おまえは罪人だ。優しくはできない。ところで、もういいか?」

男が、最後に口に入れた物を飲み込んだことを確認して、外に出るように言う。
男は素直に立ち上がると、鉄格子の扉をくぐって出てきた。

俺は男を観察して思う。
食事の後に、母さまがしていたような両手を合わせる挨拶を、男はしなかった。
ということは、やはり母さまと同じ世界から来たわけではないのか?服も全く違うみたいだし。男の服は、濃い灰色の生地に金糸で細かい刺繍が施されており、もしかすると高貴な身分なのかもしれない。言動は幼稚なところがあるけど、基本の身のこなし方に品がある。

俺が黙って男を見つめていたので、男が首を傾け、シアンが「カエン様?」と呼んだ。

俺はくるりと向きを変えると、「行くぞ」と言って先を歩いた。



地下牢の建物を出て城に入り、一番端にある日も当たらない小さな部屋で、机を挟んで男と向かい合って座った。
男は物珍しそうに部屋を見回していたけど、俺が咳払いをすると、こちらを見てニコリと笑った。

「この部屋暗いね。さっきの所よりマシだけど。ねぇ何が聞きたい?覚えてることなら何でも話すよ」
「…じゃあ名前は?」
「ごめん…。それは思い出せない。でも俺、君とは仲良くなりたいからおまえは嫌だな。カエン、何か名前決めてよっ」
「きさまっ…、呼び捨てにっ…!」

シアンが腰に帯びた剣を掴んで男を睨む。
俺は、男の後ろに立つシアンに手を上げて止めた。

「シアン、いいから。こういう奴なんだよ。馴れ馴れしいというか人懐っこいというか…」
「俺だって誰にでもこうじゃないよ。気に入った人にしかしない」
「へぇ。気に入ってくれたんだ?」
「うんっ。君は歳も同じだし強いし。仲良くなりたい!」
「おまえが悪い奴じゃなければ仲良くしてもいいよ」
「よしっ!じゃあよろしく!」

シアンが、剣を掴んだ手をプルプルと震わせながら、大きな溜息を吐いた。
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