溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 エイルリスが家族を失ったあの夜、悪魔は最初から怒っていた。怒り狂って侵入してきた。両親の攻撃を容易くかわし、真っ赤な槍で両親の胸を貫いた。怒り狂った悪魔は、兄とエイルリスにも攻撃してきた。兄は怪我を負いながら、エイルリスを抱えて逃げたが、逃げる途中で息絶えた。
 何度思い返しても胸が痛くなる出来事だ。この痛みが薄れることはない。両親と兄の仇をとるまでは。
 あの時、兄に担がれながら、エイルリスは白く光って消えていく両親を見ていた。
 父親が最後の力を振り絞って呪詛の言葉を吐いていた。

「あの子達が、必ずおまえを殺す。おまえの忌まわしい子供は、悪魔の本性を出し始めたから殺した」

 そして震える指で暖炉の上を指した。そこにはガラスのトレイが置かれ、悪魔と同じ黒髪の小さな束が乗っていた。
 そういえば、あの黒髪は、いつからあそこに置いてあった?ずっと前からではない。いつの間にか置かれていた。父は、いつ置いたんだ?それに、父が最期に悪魔に放った言葉…。

「おまえの子供の髪だ。おまえのせいで妹は死に、おまえが悪魔であるが故に子は死んだ。恨むなら自分を恨め…!」

 そう罵っていた。
 その言葉を聞いた悪魔は、更に怒り狂っていた。
 消えゆく両親を蹴散らし、暖炉の上に置かれた髪を掴むと、漆黒の翼を広げて、夜空へと消えていったのだ。
 あの黒髪は悪魔の子供の物だと父は言った。でもなぜ、そんなものを父が持ってたのか?まさか…妹を殺された恨みで、悪魔の子供を殺した?いや、父はそんなことをしない。優秀な天使だったんだ。たとえ憎い悪魔の子供でも、手をかけたりはしない。なら、父が言うように、悪魔自身のせいで子供も死んだのだろう。それを父のせいだと勘違いして、殺しに来たのか。そんなの、ただの八つ当たりじゃないか!そんなことのせいで、俺の家族は死んだのか?くそが。ただ殺すだけでは飽きたらない。悪魔が知る地獄よりも、更に地獄を見せてやる!

「…リス?ルリスっ」
「なんだ…大きな声を出すな。聞こえている」

 アレンの声で我に返る。
 アレンがエイルリスの両肩を掴み、顔を覗き込んでいる。とても不安気な顔をして。

「悪魔の話をたくさんしたから、嫌な気持ちになった?気分悪い?」
「そうだな。気分が悪い。おまえの話が衝撃すぎて」
「うん、ごめんね。でも事実だよ。呆れないで聞いてくれてありがとう」

 エイルリスは腹が立って最悪の気分になっている。
 でも、悪魔の情報を手に入れられた。自分では知ることの出来なかった情報だ。後は、悪魔をどうやって捜すかだ。

「アレン、そのフォラスとかいう悪魔を捜さないのか?」
「捜したいけど、どうやって捜せばいいのか…」
「ふむ」

 エイルリスは考えて、あることを思いつく。
 学園内にも悪魔がいる。そいつらに聞けば何かわからないだろうか?でも、悪魔とわかった理由を聞かれたら面倒だな。どうする?









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