63 / 112
3
しおりを挟む
アレンの手が気持ちよくて、されるがままに撫でられていたが、そんな場合じゃなかったと、エイルリスは慌ててアレンの手を掴んで歩き出そうとした。しかし、アレンが動かないから、エイルリスも前に進めない。
エイルリスは、振り返ってアレンを睨む。
「おいっ、動けよ。それとも動けないのか?背負うか?」
「ルリスが背負ってくれるの?ふふっ、じゃあそうしてもらおうかな。ところで、どこに行くの?」
「医務室だよ。いや、部屋の方がいいか?とにかく早く傷を塞がないとっ」
「ああ、嬉しいな」
「何がだよ!」
「ルリスが俺を心配してくれているから」
アレンが笑って、翼をしまい、牙と爪も引っ込めて、いつもの姿に戻る。
エイルリスは、腹に穴が空いたことにより、アレンの力が弱って人間の姿に戻ったんだと焦った。
死にそうになってるのに笑ってるし。血が足りないのか?
エイルリスは、必死にアレンに訴える。
「アレン!俺の血を飲め!そうすれば腹の穴が塞がるだろ?」
「ルリス…ありがとう。魅力的な提案だけど、俺はルリスを傷つけたくないから飲まないよ」
「でもっ」
「ルリス、落ち着いて。もう傷は塞がってるから」
「え?」
アレンがズボンからシャツを引き抜き、たくし上げた。
向こうの景色が見えそうなほどに空いてた穴が、塞がっている。
エイルリスは、手を伸ばして、そっと穴が空いていた箇所を触る。硬い。軽く押してみる。筋肉で硬い。見事に穴が塞がっている。
「いつの間に…」
「ルリスのおかげだよ。ありがとう」
アレンが、腹に触れていたルリスの手を握りしめて、愛おしそうに笑った。
ルリスは小さく首を傾けた。
俺は何もしていない。天使の力も使っていない。どういう意味だ?
アレンが、エイルリスの白く細い指に口づけて言う。
「悪魔は、人の血肉を口にすれば傷が回復する。でも俺は、特異体質でさ、その辺にいる人の血肉じゃ回復しないんだ。だから、今も死んじゃうかなぁって諦めてた」
「はあ?」
「でさ、最後に愛するルリスに触れたくて、キスをしたんだよ。抵抗されたら諦めようと思ってたけど、受け入れてくれて、嬉しかった。心底嬉しくて、涙が出た」
「はあ?」
よく見れば、確かにアレンの頬に涙の跡がある。エイルリスは、初めてのキスに動揺して、気づいてなかった。
「ルリスとキスしているうちに、体に力がみなぎってきて、傷が瞬時に塞がったんだ。たぶん俺は、愛する人の体液を摂取すれば、回復する体質なんだと思う」
「うそだろ…」
エイルリスは驚いた。面倒だという顔をした。でも、心の中では、喜んでいる自分がいた。
エイルリスは、振り返ってアレンを睨む。
「おいっ、動けよ。それとも動けないのか?背負うか?」
「ルリスが背負ってくれるの?ふふっ、じゃあそうしてもらおうかな。ところで、どこに行くの?」
「医務室だよ。いや、部屋の方がいいか?とにかく早く傷を塞がないとっ」
「ああ、嬉しいな」
「何がだよ!」
「ルリスが俺を心配してくれているから」
アレンが笑って、翼をしまい、牙と爪も引っ込めて、いつもの姿に戻る。
エイルリスは、腹に穴が空いたことにより、アレンの力が弱って人間の姿に戻ったんだと焦った。
死にそうになってるのに笑ってるし。血が足りないのか?
エイルリスは、必死にアレンに訴える。
「アレン!俺の血を飲め!そうすれば腹の穴が塞がるだろ?」
「ルリス…ありがとう。魅力的な提案だけど、俺はルリスを傷つけたくないから飲まないよ」
「でもっ」
「ルリス、落ち着いて。もう傷は塞がってるから」
「え?」
アレンがズボンからシャツを引き抜き、たくし上げた。
向こうの景色が見えそうなほどに空いてた穴が、塞がっている。
エイルリスは、手を伸ばして、そっと穴が空いていた箇所を触る。硬い。軽く押してみる。筋肉で硬い。見事に穴が塞がっている。
「いつの間に…」
「ルリスのおかげだよ。ありがとう」
アレンが、腹に触れていたルリスの手を握りしめて、愛おしそうに笑った。
ルリスは小さく首を傾けた。
俺は何もしていない。天使の力も使っていない。どういう意味だ?
アレンが、エイルリスの白く細い指に口づけて言う。
「悪魔は、人の血肉を口にすれば傷が回復する。でも俺は、特異体質でさ、その辺にいる人の血肉じゃ回復しないんだ。だから、今も死んじゃうかなぁって諦めてた」
「はあ?」
「でさ、最後に愛するルリスに触れたくて、キスをしたんだよ。抵抗されたら諦めようと思ってたけど、受け入れてくれて、嬉しかった。心底嬉しくて、涙が出た」
「はあ?」
よく見れば、確かにアレンの頬に涙の跡がある。エイルリスは、初めてのキスに動揺して、気づいてなかった。
「ルリスとキスしているうちに、体に力がみなぎってきて、傷が瞬時に塞がったんだ。たぶん俺は、愛する人の体液を摂取すれば、回復する体質なんだと思う」
「うそだろ…」
エイルリスは驚いた。面倒だという顔をした。でも、心の中では、喜んでいる自分がいた。
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
光と瘴気の境界で
天気
BL
黒髪黒眼の少年・はるは、ある日下校途中にトラックに轢かれると、瘴気に侵された森で倒れていた。
彼を救ったのは、第二騎士団長であるアルバート。
目を覚ましたはるは、魔法や魔物も瘴気も知らず…
アルバートの身に危険が迫ったその瞬間、
彼の中で眠っていた“異質な力”が覚醒する。
古来より黒目黒髪は“救世主の色”であり、膨大な力を持っているとされている。
魔物と瘴気で侵されているエクリシア王国の国王ははるの存在を知るとその力を彼の体が壊れようとも思うがままに使おうとする。
ーー動き始めた運命は、やがて大いなる伝承の核心へと迫って行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる