狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 最上階の部屋に来た。捨て台詞を吐いて出たのに、すぐに戻って来てしまった。気まずくて困っていると、扉が開いてギデオンが顔を出した。

「何をしている。早く入れ」
「料理を持ってきたんだけど…」
「知ってる。俺がリオに持ってきてもらうよう、頼んだ」
「なんでっ?」

「うるさい」とギデオンがリオの腕を引く。
 リオが中に入ると、扉を閉めて鍵をかけた。

「なんで鍵かけんの?」
「おまえスりに会ったんだろう。用心しないとな」
「くぅ…、ぶり返さないでくれよ…。ところでなんで俺もここで食べることになってんの?」
「一人で食べても味気ないだろう」
「そう…かな」

 ギデオンがリオから箱を取り上げテーブルに置く。そして手際よく箱の中から料理を取り出して並べ「リオ」と名を呼んだ。

「ここに座れ」
「…うん」
「酒は飲めるか?」
「少しだけ」

 ボトルの酒をグラスに注ぎ、リオと自分の前に置く。

「ありがとう」
「ふむ、誰かに酒を注いだのは初めてだな」
「それは…恐れ入ります」
「ふ…よい」

 あ、また笑った。素の状態がすごく怖いから誤解してたけど、もしかしてよく笑う人なのかな。
 リオはギデオンの表情を観察しながらグラスを持つと、酒をひと口飲んだ。

「うっ…苦いぃ」
「なんだその顔は。かわいい顔が台無しだな」
「だって苦いんだも…ん」

 ん?今サラッとかわいいって言った?俺のことかわいいって?ギデオンは俺のことをよく思ってないと感じていたけど、そうではないのか?どちからというと好意を持ってる?でもそんなふうには微塵も感じないんだけどなぁ。
 リオはチラリとギデオンの様子をうかがう。グラスの中の酒を飲み干し、ナイフで肉を切りフォークに刺して食べている。一連の動きがすごく綺麗だ。さすが育ちがいいだけある。
 でもリオも、母親に厳しく躾られた。上品な動作を身につけ、出自に自信を持つように。異端の野蛮な一族だと蔑まれないように。
 音を立てないよう肉を切り口に運ぶ。少し噛むだけで肉がほぐれて美味しい。肉を食べ野菜を食べパンを食べる。黙々と食べていると視線を感じて顔を上げた。

「なに?」

 ギデオンが手を止めてこちらを見ている。

「きれいな食べ方だな。リオの両親は、優れた方達なのだな」
「うん…」

 冷たく怖く低い声なのに、優しく聞こえる。大好きな両親を、そう言ってもらえて嬉しい。
 リオは小さく頷き、溢れそうになる涙を誤魔化すために、俯いて小さくちぎったパンを口に押し込んだ。
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