10 / 272
10
しおりを挟む
最上階の部屋に来た。捨て台詞を吐いて出たのに、すぐに戻って来てしまった。気まずくて困っていると、扉が開いてギデオンが顔を出した。
「何をしている。早く入れ」
「料理を持ってきたんだけど…」
「知ってる。俺がリオに持ってきてもらうよう、頼んだ」
「なんでっ?」
「うるさい」とギデオンがリオの腕を引く。
リオが中に入ると、扉を閉めて鍵をかけた。
「なんで鍵かけんの?」
「おまえスりに会ったんだろう。用心しないとな」
「くぅ…、ぶり返さないでくれよ…。ところでなんで俺もここで食べることになってんの?」
「一人で食べても味気ないだろう」
「そう…かな」
ギデオンがリオから箱を取り上げテーブルに置く。そして手際よく箱の中から料理を取り出して並べ「リオ」と名を呼んだ。
「ここに座れ」
「…うん」
「酒は飲めるか?」
「少しだけ」
ボトルの酒をグラスに注ぎ、リオと自分の前に置く。
「ありがとう」
「ふむ、誰かに酒を注いだのは初めてだな」
「それは…恐れ入ります」
「ふ…よい」
あ、また笑った。素の状態がすごく怖いから誤解してたけど、もしかしてよく笑う人なのかな。
リオはギデオンの表情を観察しながらグラスを持つと、酒をひと口飲んだ。
「うっ…苦いぃ」
「なんだその顔は。かわいい顔が台無しだな」
「だって苦いんだも…ん」
ん?今サラッとかわいいって言った?俺のことかわいいって?ギデオンは俺のことをよく思ってないと感じていたけど、そうではないのか?どちからというと好意を持ってる?でもそんなふうには微塵も感じないんだけどなぁ。
リオはチラリとギデオンの様子をうかがう。グラスの中の酒を飲み干し、ナイフで肉を切りフォークに刺して食べている。一連の動きがすごく綺麗だ。さすが育ちがいいだけある。
でもリオも、母親に厳しく躾られた。上品な動作を身につけ、出自に自信を持つように。異端の野蛮な一族だと蔑まれないように。
音を立てないよう肉を切り口に運ぶ。少し噛むだけで肉がほぐれて美味しい。肉を食べ野菜を食べパンを食べる。黙々と食べていると視線を感じて顔を上げた。
「なに?」
ギデオンが手を止めてこちらを見ている。
「きれいな食べ方だな。リオの両親は、優れた方達なのだな」
「うん…」
冷たく怖く低い声なのに、優しく聞こえる。大好きな両親を、そう言ってもらえて嬉しい。
リオは小さく頷き、溢れそうになる涙を誤魔化すために、俯いて小さくちぎったパンを口に押し込んだ。
「何をしている。早く入れ」
「料理を持ってきたんだけど…」
「知ってる。俺がリオに持ってきてもらうよう、頼んだ」
「なんでっ?」
「うるさい」とギデオンがリオの腕を引く。
リオが中に入ると、扉を閉めて鍵をかけた。
「なんで鍵かけんの?」
「おまえスりに会ったんだろう。用心しないとな」
「くぅ…、ぶり返さないでくれよ…。ところでなんで俺もここで食べることになってんの?」
「一人で食べても味気ないだろう」
「そう…かな」
ギデオンがリオから箱を取り上げテーブルに置く。そして手際よく箱の中から料理を取り出して並べ「リオ」と名を呼んだ。
「ここに座れ」
「…うん」
「酒は飲めるか?」
「少しだけ」
ボトルの酒をグラスに注ぎ、リオと自分の前に置く。
「ありがとう」
「ふむ、誰かに酒を注いだのは初めてだな」
「それは…恐れ入ります」
「ふ…よい」
あ、また笑った。素の状態がすごく怖いから誤解してたけど、もしかしてよく笑う人なのかな。
リオはギデオンの表情を観察しながらグラスを持つと、酒をひと口飲んだ。
「うっ…苦いぃ」
「なんだその顔は。かわいい顔が台無しだな」
「だって苦いんだも…ん」
ん?今サラッとかわいいって言った?俺のことかわいいって?ギデオンは俺のことをよく思ってないと感じていたけど、そうではないのか?どちからというと好意を持ってる?でもそんなふうには微塵も感じないんだけどなぁ。
リオはチラリとギデオンの様子をうかがう。グラスの中の酒を飲み干し、ナイフで肉を切りフォークに刺して食べている。一連の動きがすごく綺麗だ。さすが育ちがいいだけある。
でもリオも、母親に厳しく躾られた。上品な動作を身につけ、出自に自信を持つように。異端の野蛮な一族だと蔑まれないように。
音を立てないよう肉を切り口に運ぶ。少し噛むだけで肉がほぐれて美味しい。肉を食べ野菜を食べパンを食べる。黙々と食べていると視線を感じて顔を上げた。
「なに?」
ギデオンが手を止めてこちらを見ている。
「きれいな食べ方だな。リオの両親は、優れた方達なのだな」
「うん…」
冷たく怖く低い声なのに、優しく聞こえる。大好きな両親を、そう言ってもらえて嬉しい。
リオは小さく頷き、溢れそうになる涙を誤魔化すために、俯いて小さくちぎったパンを口に押し込んだ。
59
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる