狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 リオが目をらすと、松明たいまつあかりが届かない暗闇の中、矢をつがえている男がいる。敵兵だ。いつ、こちらに潜入したのか。しかも矢尻を向ける先にいるのは、ギデオンだ。
 リオは、咄嗟とっさに飛び出した。考えるよりも早く身体が動いた。
 ギデオンが危ない!夢で見た時のように、矢で射抜かれてしまう!絶対に阻止するんだ!
『待て!』と頭の中でアンの声がしたけど、リオの足は止まらない。地面に手のひらを向け目についた石を浮かせる。その石を、弓矢を持つ男の手に目掛けて飛ばそうとした。その瞬間、脇腹に激痛が走り、空中の石が落ちた。

「…え?なに…」

 目を下に向けると、脇腹からやじりが生えている。
「なにこれ…」と鏃に触れ、顔を上げる。目の前の男がリオに気づき、こちらを見ているが、両手に弓矢を持っている。では、この矢はどこから飛んできたのか?
 後方で「ぎゃっ!」と男の悲鳴が聞こえた。緩慢な動きで振り返ると、別の敵兵がいて、アンに腕を噛まれていた。

「もう一人…いたのか。アン…殺しちゃ…だめ…」

 ダメだ、立ってられない。脇腹が痛い。全身から力が抜ける。目もかすむ。でも、倒れるわけにはいかないんだ。ギデオンの傍へ行かなきゃ。ギデオンを守らなきゃ。
 リオは、両足に力を入れて踏ん張った。そして再び手のひらに力を込め、前と後ろの男達の額へ石を飛ばした。鈍い音の後に、前と後ろからドサッと重い物が倒れる音がする。ゆっくりと首を動かして見ると、二人の男が額から血を流して気絶している。

「怪我…治さない、と…」

 リオは前の男に近寄り、額の傷を治癒する。そしてアンの足下で伸びている男の傷の治癒を終えると、その場に座り込んだ。

『愚かな。己の治癒だけをすればいいものを』

 膝と両手を地面につき、荒い呼吸を繰り返しながら、リオは小さく笑って息を吐く。

「そんな、こと…言うなよ…。俺は、俺の…魔法で…誰も、傷つけたく…ない」
『世の中、綺麗事だけでは済まされぬ』
「わかってるよ…。アン、お願い…俺を、ギデオン…の所へ…」

 ついには喋ることも苦しくなってきた。脇腹に刺さった矢を抜いて治癒をしたいが、今は魔法を使えそうにない。
 リオは、両手をアンに伸ばした。実際には力が入らなくて、少し浮かすことしか出来なかったのだけど。
 でもアンは、器用にリオの身体を押して、背中に乗せてくれた。
 うつ伏せの状態でアンの背中に乗せられたリオは、頬に柔らかな毛の感触を感じながら、閉じそうになる瞼を必死に開けていた。
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