狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「ギデオン!アン!助けてっ」
「リオーっ!リオを離せっ」
『愚かな!神獣とは思えぬ行為だ。決して許さぬ!』
「え?しんじゅう?ってなに…」

 頭の中に聞こえてきたアンの言葉に、リオは首を傾ける。でもすぐにそんな場合じゃないと思い直して、ギデオンとアンの名を叫んだ。

「ギデオン!アン!くそっ、離せよロン!」
「ピイ!」
「ピイじゃわかんねーよ!なんでこんなことするんだよ!後で助けに行くって言ったじゃん!ギデオンが約束してくれたじゃん!」
「ピー!」
「だからわっかんねーって!ああ!ギデオンがあんなに小さく…。離れるの嫌だよ」

 ロンが来て、一度は一人でもデックを助けに行こうと思ったけど、やっぱりギデオンとは離れたくないと思い直したのに。もしこのまま、俺がアシュレイ王子に殺されたら嫌だよ。それにギデオンもアンも必ず俺を助けに来る。その時にギデオンが傷つけられたら嫌だよ。アンが怪我したら嫌だよ。
 リオの目から涙があふれた。幾つもの雫が、黒い地上へと落ちていく。心が痛い。それに肩も痛い。ロンはなるべく力が入らないように掴んでいるようだ。それでも剣の切っ先よりも鋭い爪は、コートと寝衣ねまきを突き破り肌に刺さっている。
「ピ…」とリオを気遣うような、優しい声をロンが出した。
 リオは、もうギデオンもアンも見えなくなってしまった地上を見つめて口を開く。

「ロン…今ここで離せって言って離されたら困るから言わないけど、せめて背中に乗せてくれない?爪がくい込んで痛いし目が回って気持ち悪い…。こんな状態だとデックを助けられないよ」

 ロンが「ピイ」と鳴いた。しばらくは上空を滑空かっくうしていたが、徐々に高度を下げ、地面から高い位置にある太い枝の上にリオを下ろした。リオが自力では到底降りることの出来ない高さだ。
 地面に降ろされたなら逃げようかなと思ったのに、ここでは逃げられない。中々に賢い。だってしんじゅうだもんな。アンもロンも。しんじゅうが何かわからないけど。

「痛っ」

 ロンに掴まれていた両肩に触れると、痛みが走り手のひらに血がついた。ちょっとくい込んだだけだろうと思っていたリオは、両手を見て叫んだ。

「ええっ!血が出てる!こわっ!手加減しろよっ」

 リオが喚くものだから、ロンも悪いと感じたのか、リオの肩を舐め始めた。それがどういう行為か、リオは知っている。傷を治しているのだ。
 しばらく舐めてロンが離れた。
 リオが「ありがとう」とロンのくちばしに触れると、ロンがバツが悪そうに横を向く。
 リオが不思議に思いながら肩に触れると、また手のひらに血がついた。
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