狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「ピ」とロンの身体が揺れた。言葉はわからないけど、謝ってるんだとわかる。
 リオは手を伸ばしてロンの身体に抱きついた。

「もういいよ。ここまで来てしまったし。ロンのデックを助けたい気持ちは、よくわかった。俺もデックを助けたい。それにさ、ロンもデックと離れて寂しいんだろ?不安なんだろ?」
「ピイ…」
「だよな。ごめんな、俺のわがままで足止めして。でもデックを助け出すためには、俺の体調を万全にしておきたい。あと動きやすい格好の方がいい。アシュレイ王子を相手にするには、ほんの少しの油断も許されないと思うんだ」

 ロンが頭を縦にふる。ふった拍子にくちばしがリオの頭に当たり、「いてぇな」と額を手で押さえて笑った。
 リオがデックとの思い出話をして時間を過ごしいるうちに、太陽が高くなった。
 店が開いた頃を見計みはからって、リオが一人で街に向かった。街に向かうリオを、ロンは木のいただきから見ている。
 ロンから離れたとしても、もうリオは逃げるつもりはない。ここからギデオンの別宅まではかなりの距離があるし、馬を飛ばしたとしても、すぐにロンに追いつかれてしまう。
 リオは街に入って最初に目についた店で、黒いシャツとカーディガン、ズボンを買った。いつもは白いシャツばかり着ているが、なるべく目立たないようにするために、敢えて黒を選んだ。服屋に薬屋の場所を教えてもらい、早足で進む。服屋の三軒隣に薬屋があった。そこで痛み止めを買うと、手持ちの金はきれいに無くなった。とりあえず目的の物を買えて良かったと息を吐いて街を出た。
 急ぐあまり小走りになりながら、ロンが待っている場所へと戻る。リオが戻ると、ロンが木の上から降りてきた。

「すぐに着替えるな」

 リオはコートと寝衣、ブーツを脱いで、寒さに震えながら着替える。シャツのボタンを止めている時に、胸に何個か赤い点があることに気づいた。

「なにこれ?虫刺され?いや、今は冬だから虫はいないし…。ん?え?うそだろ…まさかギデオン…!」
「ピ?」

 ブツブツと呟いていると、ロンに顔をのぞき込まれた。
 リオは「何でもないっ」と急いでボタンを止めカーディガンを着てコートを羽織る。脱いだ寝衣を近くの低木の下に隠すと、痛み止めの丸薬がんやくを口に放り込んだ。

「にっが!まずっ!水も買えばよかった…。さあ行くぞロン!」
「ピイ!」

 ロンが姿勢を低くする。
 リオは手際よくロンの背中に乗る。そして
またもやアンのことを考える。
 こんな風にアンの背中にも乗りたいな。
 リオが考えていることを知ってか知らずか、ロンは大きな翼を広げると、ものすごい速さで空へと舞い上がった。
 振り落とされないようにロンの首にしがみつきながら、リオは火照ほてった顔をロンの毛に埋める。なんとも言えないむずがゆさが、胸の奥から湧き上がってきた。
 
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